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7話

俺の目の前に黒髪でメイド服を着た可愛い女の子が立っている。

王女様級の可愛さだけど瞳が赤い。


(こんな赤い瞳の人は初めて見たよ。)


俺をジッと見ているけど・・・、どうしてだ?


「マスター、今の見た目は余りにも酷いですね。どんな戦いをしてきたのですか?返り血で真っ赤になっていますよ。」


(はっ!そうだった!)


「そうだった!すまないが、えっと・・・、名前が思い出せない・・・」


「アイリスです!忘れないで下さいね。」

彼女がニコッと微笑む。


「す、すみません・・・」


思わず謝ってしまったけど、いきなり裸で現われるし、訳の分からない言葉を色々と言われて、さすがに混乱するよ。そんな状況で名前を覚えるなんて無理だ。


(いかん!今はそれどころではない!)


「ア、アイリスさん、今はちょっと急を要する事態が起きていまして・・・」


俺がそう話すと視線を例のベッドへと移した。

「へぇ~、あの人の事ですね?」

すぐに王女様のところへ移動し、ジッと見つめている。

「これはかなり危ない状態です。生命力がレッドゾーン状態で余命2時間あるかどうか・・・」


彼女にそう宣言されてしまった。俺の目の前が真っ暗になってしまう。

全身の力が急に抜け、がっくりと膝を着いてしまう。


(そ、そんな・・・、俺は絶対に助けると約束したのに・・・)


「安心して下さい。ここには設備が揃っています。それでは移動させますね。」


そう言って彼女は王女様を抱きかかえ、さっきまでいた筒の方へと移動した。見た目は普通の女の子なのに、軽々と王女様を抱きかかえている。成人女性を抱きかかえるのは大人の男性でもかなりの力が必要だ。俺も例の翼が出現してから力が異常になったのは分かっている。


(この子も絶対に普通の女の子ではない・・・)


「ここのメディカルポッドなら完全に回復させられます。傷一つ無いキレイな体に戻せますよ。」


ニコニコしながら俺に話してくれたが、その言葉を聞いて安堵したのか涙が出てくる。


「よ、良かった・・・、ありがとう、アイリスさん・・・」


「どういたしまして。マスターのサポートは私の仕事ですから、遠慮しないで色々と申しつけて下さい。そして、私の事は『さん』付けで呼ばないで下さい。敬語も必要ありません。分かりました?従者である私に気を遣う必要はありませんからね。」


「い、いや・・・、それは・・・、初めて会ったばかりだし・・・」


「分・か・り・ま・し・た・か・?」


彼女からとんでもない圧が俺へと発せられた。この迫力に逆らう事は絶対に出来ない。


「分かったよ。アイリス、それで良いんだな?」


「よろしいです。さすがマスターですね。物分かりが良くて助かります。」

ニッコリと彼女が微笑んでくれたけど、初めて会った俺に何でここまで世話をしてくれるのだ?しかも、自分の事は俺の従者って言っているし、どれだけ考えても俺は単なる村人だぞ。


アイリスが入っていたものとは別の筒が横になった。

その筒の上部が上に開く。


「う~ん、このままでは治療に差し支えますね。」


王女様をその筒の中へ横にしたが、王女様の胸の上辺りに手を添えた。

俺の右手の光と同じ緑の光が王女様を包む。


「!!!」


包んでいた光が消えると思わず見とれてしまった。

王女様の鎧や下着が消滅し、裸で横になっている。

まだ全身は血だらけだったが、あまりの美しさに目を奪われてしまった。

鍛えられ引き締まった体に、胸はアイリスよりは大きくないけど、体とのバランスが絶妙で・・・


(いかん!これ以上は見てはダメだ!確実に不敬罪が成立してしまう!)


思いっ切り王女様から視線を逸らした。

王女様のスタイルは間違い無くアイリスよりも格段に良い!視線がアイリス以上に釘付けになってしまった。王女様の裸姿が俺の頭の中に焼き付いてしまったよ。


「ぐぬぬぅぅぅ・・・」


何だ?アイリスが王女様を見て唸っているぞ。


「完璧なプロポーション・・・、人間はここまで美しくなれるのか・・・、負けたわ・・・」


何だろう?アイリスから敗北感というものを感じるが気のせいか?


(気にしないでおこう・・・)


開いていた部分が閉じ、王女様が筒の中に入ってしまい、そのまま中に液体が充填されていく。


「アイリス、ああやって水みたいなものが入ってくるけど、中で溺れる事は無いのか?」


「大丈夫ですよ。あの中でも呼吸は出来るようになっていますからね。液体に見えますが、実は全てがナノマシンの集合体です。体の内外から治療を行いますのですぐに全快しますから安心して下さいね。」


「そして、私もですよ。」


そう言って俺に向かってニッコリと微笑んだ。


(どういう事だ?)


「私はナノマシン技術の粋を集めて作られた不老不死の存在です。」


「作られた?人間を創造するなんて神の領域ではないか!しかも不老不死とは・・・」


「まぁ、私は人間そっくりに作られているだけですよ。生物の証である子孫を残す生殖能力はありません。どちらかと言えば、人間の形をしたエーテル・ナイトみたいなものですかね。」


彼女が俺に近づきジッと見てくる。

「マスター、色々と説明するよりも先にこの格好を何とかしないといけませんね。全身血だらけですし、どこのスプラッタなの?って言われそうですからね。」


「確かに・・・、スプラッタって言葉は知らないけど、今の俺の見た目はとんでもないのは良く分かっているよ。」


「それでは右手を出して下さい。気になる事もありますからね。」


そう言われたので恐る恐る右手をアイリスへ向けた。

手の甲がまた緑色に輝いている。

だけど、アイリスの表情がちょっと変な感じになった。


「やっぱりコアがリセットされていましたか・・・、道理で私の声が殆どマスターに届かなかった訳ですね。」


俺の右手をアイリスが両手でギュッと握った。俺の手が今までとは比べものにならない程に激しく緑色に輝き、握られた隙間から光が溢れる。


(温かい・・・)


ドクン!


何だ!俺の頭の中に何かが入ってくる!


「そうか・・・、俺は・・・」


「どうやら思い出したようですね。5000年前の英雄、ジークハルト様・・・」


アイリスが俺を見て涙を流している。


「天使戦争を終わりにし人類を勝利に導いた方・・・」


確かに色々とかつての記憶が流れ込んできたが、全ての記憶が戻った訳ではなかった。

殆どの記憶が戻っていないと思う。

さっきの輝く天使のような存在も思い出せない・・・

だけど、とても大切な人だと思う・・・


思い出せたのは俺のこの体に宿っている力の使い方・・・


そして・・・


俺の専用機である・・・



「マスター、大丈夫ですか?」


アイリスが心配そうに俺の顔を覗き込んでいた。


「アイリスよ・・・」


「どうしました?」


「どうやら、俺の生まれ変わりは失敗したかもしれない。」


「そ、そんな・・・」

アイリスがワナワナと震えている。


「DNAレベルで寸分の狂いもない俺のクローンを作成したまでは良かったが、俺の記憶の移植が上手くいかなかったみたいだ。当時の俺の力の使い方もかなり抜け落ちているし、何より、俺の体の中にいる大切な人の事も殆ど思い出せない。とても大切な人だと思うのだが、どんな人なのかも思い出せない・・・」


しかし、いくつかの事は思い出した。


「だけど、心配するな。これは思い出したよ。」

右手の甲に意識を集中すると、ポゥと輝く。そして全身が輝いた。


「そ、そのお姿は!」


今まで着ていた服は原子まで分解し、新たに服を作り直した。

真新しい服を着た俺が立っている。

左右の腕には黄金の小手を装着し、同じく黄金の胸当て、靴と一体化したグリープを装着していた。


「これは!この姿は正しくジークハルト様!再びこのお姿を見られるとは・・・」


ポロポロとアイリスが涙を流している。

感極まったのか、そのまま俺の胸へ飛び込んで俺の胸の中で泣いていた。




「落ち着いたか?」


「は、はい!」


アイリスがまだ赤い顔で俺を見ているよ。彼女は人造人間だけど、本物の人間のように感情を持っている。俺は彼女の事は人間だと思っているけどな。


「ここはどのラボになる?まぁ、お前がいるから想像はつくが・・・」


「ここは第7ラボになります。エーテル・ナイトの開発部署ですね。」


「やっぱり・・・、それは都合が良いな。お前と俺の機体はセットだし、今後の移動もかなり楽になるよ。最初に俺がここに来たのは運が良いよ。それか、ここに来るように運命付けられていたか・・・」


「マスター、やはり第1ラボへ・・・」


「そうだな、俺の欠けた記憶はそこに行けば見つかるかもしれない。そして、俺がこの時代になぜ生まれ変わったのかもな・・・」



「そうだ!」


大変な事を忘れていたよ。


「マスター、どうしました?」


「俺がここに来る原因になった事だ。上層でこの国の人間が入り込んでいる。まぁ、それは目覚める前の俺が原因だけどな・・・」


「分かりました。すぐに確認します。」


壁に設置されているモニターに色々な画像が映った。

記憶が甦ったから、この施設の設備も使い方が分かる。ホント、さっきまでは初めて見るような感じだったから、今思い出すととても恥ずかしいよ。


「人数が増えているな。どうやら増援が近くにいたのか?」


「マスター、画面を切り替えます。サテライトから外の映像を転送します。」


森の中にポーンタイプのエーテル・ナイトが数機、ホールに入って来た洞窟の前で待機している。

どうやら、この遺跡は確実に当りだと思われていたみたいだ。そして、王女様の暗殺も同時に行い、例の第1王子がこの国を掌握するつもりだったのだろう。


量産機のポーンタイプのエーテル・ナイトでも、この時代の軍事水準なら数十機あれば国を落とす事も可能だろう。それ以外にカスタム機であるナイトタイプもどれだけ保有しているか?


(第1王子か・・・、かなりの野心家で切れ者かもしれない。)


「アイリス、当時のマップでも構わない。第1ラボはどこにある?」


「はい、表示します。」


別のモニターに地図が映った。


「これは・・・、王都ではないか。王都の地下には広大な迷宮があると言われていたけど、その迷宮は第1ラボに間違い無い。あのラボは当時では最大の拠点だったから大きかったしな。それに、今の俺が生れたのも王都だ。やはり第1ラボに何かあったのか?」


「申し訳ありません。現時点ではラボ同士の通信手段は残っていません。さすがに5000年も経過していますので、設備が生きているかも分かりません。この第7ラボのような保存状態は奇跡と呼べる程ですね。それにしても、あの戦争で文明レベルがここまで下がってしまったのですね。私は戦争終了直後に眠りに入ってしまいましたが・・・」


確かにあの戦争は凄かったと簡単には言い表せない程に悲惨だった。いくつもの都市が消滅し、人類は滅亡寸前とまで言われたくらいだった。その時に開発された『マナ・システム』のおかげで生き延びた感じだろう。『大破壊』で文明レベルは下がってしまったけど、人類が魔法を使えるようになり、こうして『エーテル・ナイト』という兵器も開発出来た。




『まさか君が僕の適合者になるなんてね。僕が君を守ってあげるよ。ずっとね・・・』




(うっ!何だこの記憶は?)



「どうしました?」


アイリスが心配そうに俺を見つめている。


「大丈夫だ。ずっと昔に誰かと約束した気がする・・・、そう思っただけだよ。」


「そうですか・・・、どうやらマスターはまだ本調子ではなさそうですし、気を付けて下さいね。」


「ありがとう。ここには王女様もいるんだ。ずっとここで生活という訳にもいかないだろうし、彼女は城に返さないといけない。そう遠くないうちに王都の第1ラボへ行かないといけないな。」


「マスター、私もお供します。」


ペコリとアイリスが頭を下げた。


「もちろん、一緒に行くに決まっているだろう。お前がいないとカイザーも動かせないんだからな。」


「嬉しいです!」

とても嬉しそうに俺に抱き着いてくる。

まぁ、悪い気はしない。

頭を撫でると俺の胸の頬をスリスリしてくる。可愛いやつだよ。



ピー!


「あっ!マスター!メディカルポッドの治療が終わったみたいです!」


アイリスが慌てて王女様が入っているカプセルへと走っていく。


(良かった・・・、王女様も無事に回復して・・・)


「まっ!王女様は裸だし、俺が近くに行く訳にいかないよな。」



椅子に座ってしばらくすると・・・


「ジークゥウウウウウウ!」


俺の背中の方から王女様の声は聞こえる。さっきまでと違いとても元気そうな声だ。どうやら大怪我から回復したようだな。


(本当に良かった・・・)


ガシッ!


「えっ!」


いきなり背中から抱かれた。


「ジーク!ありがとう!死を覚悟した私だったが、あの傷が嘘のように消えて、しかも、あれだけ力が入らずだるかった体も、今では力が溢れているぞ!」


(ちょっと待った!)


俺の背中の感触が何か違う。とても柔らかいものが押しつけられている気がするのだが・・・


(まさか!)


王女様が俺から離れ前に回り込んでくる。

俺の手を握ってウルウルした目で俺を見つめている。

こんな王女様の表情は今後見る事は出来ないと思うけど、それ以上に王女様の首から下へ視線が移ってしまう。

悲しい男の性だ!


俺の目には王女様の見事な裸身が映っている。さっきみたいな血だらけの状態でなく、汚れ一つ無いキレイな裸身だ!特に胸の2つの大きな膨らみから目が離せない!


「お、お、王女様・・・、その格好はマズいのでは・・・?」



「・・・」





「・・・」




王女様が固まってしまった。俺も動けない。


どれだけの時間が経ったか分からない。一瞬だろうか?それともとても長い時間なのだろうか?


そんな静寂を王女様の悲鳴が切り裂いた。



「きゃぁあああああああああああああああああああああああああ!」



パァアアアアアアアアアアアアアン!


思いっ切り王女様にビンタをされてしまった。


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