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2話

「お~い!ジーク!」


黒髪の少年が慌てて他の少年達のところへ駆け寄っていく。


「悪い!悪い!」


「お前なぁ~、何、寝坊してるんだよ!」


「だってさぁ~、エーテル・ナイトが来るんだぞ!気になって気になって昨日の夜は眠れなくてさ、いつの間にか朝になって、気が付いたら寝ちゃってたよ。ははは・・・」


「アホか・・・」


ジークと呼ばれていた少年以外の全員が呆れていた。


「まぁ、お前の親父さんは騎士だって言っていたよな。でも残念だったよな・・・」


「仕方ないさ、親父は10年前に病で死んでしまったしな。6歳の俺じゃ何も出来ないさ。そんな俺を村長さんが引き取ってくれたし、本当に感謝しているよ。」


「でもさ、騎士だったのだろう?何か受け継いだモノって本当に無いのか?」


「何度も言っているけど本当だよ。」

そう言って首に掛けられていたペンダントを手に取る。

「親父から受け継いだモノって、このペンダントだけなんだよな。村長さんに見てもらっても普通のペンダントだったし・・・」


「だけど、騎士ってとんでもないくらい強いんだろう?目にも止まらないくらい早く動けたり、魔法を使う事も出来るって言われているよな。」


「だから、俺は何も受け継いでいないって!ザーマ村の1農民のジークだよ・・・、親父が立派だった分、大人達から期待されているけど無理だよ。」


「だけど、エーテル・ナイトには興味津々だよな。やっぱり騎士の息子の血が騒ぐのか?」


「いいや、単純の男のロマンだな。男に生まれたらやっぱり騎士に憧れるだろう?そして騎士になっても数百人に1人しか搭乗の資格を得られないエーテル・ナイトは憧れだろうが!それを今日、見られるかもしれないんだぞ!」


「ははは!間違いないや!」


「騎士様達は村長さんの家にいるって言っていたな。」






村長宅


「これは騎士様方、ようこそいらしてくれました。村を代表して感謝を述べさせていただきます。」


年配の村長と呼ばれている男の前に煌びやかな銀色の鎧を着込んだ女性が立っていた。

髪は腰まで真っ直ぐ伸びた金髪で歳は22~23歳くらいに見えるだろう、青色の瞳で少し鋭い目付きだがとても整っていた。10人いれば全員が振り向くであろう美貌を湛えている。


「こちらこそ済まない。前触れもなくいきなり押しかけて来たからな。ファリス王国第3王女リーゼロッテの名にて謝罪する。謝意を受け取ってくれ。」


深々と女性が頭を下げると、村長はそれ以上に頭を下げてペコペコしている。


「そ、そんな・・・、王族の方に頭を下げられると逆に私の方の首が飛んでしまいますよ。」


「それは誠に申し訳ない。私は騎士の修行しかしてこなかったから、社交辞令に疎くてな・・・」


「王女殿下、そろそろ・・・」


王女の後ろに控えていた男の1人が王女の隣に立ち、何か書類を渡した。

その書類を一目見てから村長に手渡す。


「今回の訪問及び調査に対しての協力要請とその報酬の目録だ。」


「調査ですと?」


「そうだ、この国に伝わる伝承を色々と調べた結果、この村の奥にある森に古代遺跡が眠っている可能性があるとな。しかもその古代遺跡は5千年前のモノと推測されている。」


「そ、そんな貴重な遺跡が・・・」


「私もにわかには信じられないが、もし、その遺跡が見つかればエーテル・ナイトが見つかるかもしれん。エーテル・ナイトは遺跡からでしか見つからないからな。補修、メンテナンスは出来てもその心臓部であるマナ・エンジンは誰も触れない。発掘しないと手に入れられないというのはとても歯痒いが、それは仕方ないだろう。」


「それにしても騎士様が来られるのは10数年振りですな。」

長老が懐かしむような視線を天井に向けたが、その言葉を聞いた騎士達の視線が一気に鋭くなった。

王女も同様に鋭くなり村長を睨んでいる。


「ひっ!」


騎士達のあまりの圧力に、村長は思わず悲鳴を上げてしまった。

その悲鳴を聞いて王女が『しまった!』といった表情になってしまう。


「済まない、悪気はなかった。ここに騎士が来ていたとは初めて聞いたものだからな。差しつかえなければどのような騎士だったか教えて欲しい。」


王女が深々と頭を下げたものだから村長の方は恐縮してしまっているが、何とか表情を元に戻した。


「はい、その騎士の方はジン・レオパルドと名乗っていました。」


その名前を聞いた騎士達がザワザワし始める。

「ジン・レオパルドだと?この名前を再び聞くとは・・・」


王女が村長に詰め寄った。

「そ、そのお方は!今はどこに!」


王女に詰め寄られているので村長は冷や汗をかきながらタジタジになっている。


「す、済まない、取り乱してしまった・・・」


再び王女が頭を下げると、村長もホッとした表情になり話を始めた。

「その騎士様はこの村に来られた時から病を患っていまして、2年ほど滞在されて亡くなられました。」


「そ、そんな・・・、我が王国の英雄であったジン様が亡くなられていたなんて・・・、ある日、王宮から忽然と姿を消されてから一切消息がつかめなかったのに、まさかこの村で骨を埋められていたとは・・・」


「村長殿、ジン様にはご子息がおられたのでは?」


「はい、ジークの事ですね。元気に暮らしていますよ。今は私の養子として引き取りました。住まいは別々ですが村の一員として頑張っています。」


「そうか・・・、一度は会ってみたいものだ・・・」




「おいおい、押すなよ!」


少年達が外から村長宅の窓へ近づき中の様子を探っている。


「うわ!すっげぇキレイな人もいるぞ!まるで物語に出てくるお姫様みたいだよ!」



「「「どれどれ・・・」」」



「こらぁあああ!」


全員が中を覗こうとしたら、後ろからいきなり誰かに怒鳴られてしまった。


「「うわぁあああああああ!」」


少年達が驚いて飛び上がってしまった。

長老の家の中にいた騎士達が慌てて外に飛び出し、窓の傍にいた少年達を取り囲んだ。


「お前達、一体何をしていた?」


少年達を怒鳴った男がズイッと前に出て睨みつけている。

全身が筋肉の塊と呼べるほどのムキムキな感じで、顔は小さな子供が見たら泣くのでは?と思う程に厳つい顔だった。

アワアワとビビりまくっていた少年達は縮こまってブルブルと震えていたが、1人だけ平然と立っている。


「ほぅ、肝が据わっているな。貴様、名前は?」

男がニヤッと笑っていると少年もニヤッと笑った。


「ジークだ。」


「ジークだと!」


女性の声が響くと男達の視線が一斉に注がれた。


凛とした姿の女性が立っていた。

銀色の鎧が太陽の光に反射してキラキラ輝いている。腰まで届く真っ直ぐに伸びた金髪が風になびき、本当に物語から出て来たのかと錯覚するほどに、少年達の目を奪い硬直させていた。


ジークも見惚れて硬直している。


「デイビッド、あなたは見た目から怖いから、あまりビックリさせたらダメじゃないか。」


「姫様、申し訳ありません。」

デイビッドと呼ばれた強面の男は片膝を地面に着け王女に頭を下げていた。


「あなたがジーク?」

王女がジークに視線を向けた。


いきなりジークに話が振られたのでジークは慌てていたが、何とか平静を取り繕って敢えてぶっきら棒に話をする。

「そうだけど、何か用で?」


「おい!姫様の御前だぞ!無礼な態度は慎め!」

デイビッドがジークへ怒鳴った。


「デイビッド、構わない。私達はここへお願いに来たのだから、ぞんざいな態度は許さない。分かったか?」


「はっ!申し訳ありません!」

再び片膝を地面に着け頭を下げた。


「改めて確認する。あなたがジークか?」


「そうです。姫様、先ほどは無礼な態度を取り申し訳ありません。」

そう話すと深々とお辞儀をした。


クスッと王女が笑う。

「ふふふ、ここまで畏まらなくても良いぞ。それにしてもジン様に似ているな。でも不思議だ、肖像画で見るジン様と奥方はお互いに私と同じ金髪に青い瞳なのに、なぜか黒髪に黒い瞳なのだな。」


「親父とお袋の事を知っているのですか?私の髪と瞳の色に関しては私も良く分かってないのです。父からは先祖返りだと言われた覚えがあります。」


「そうか、珍しい事もあるものだ。そう言えばまだ私の事を話していなかったな。」


「姫様と呼ばれていますから王女様ですよね?」


「そうだ、だが王女は何人もいるからな。私は第3王女のリーゼロッテだ。騎士団の分隊長をしている。それしか取り柄が無い女だけどな。そして、私はジン様が乗っていたエーテル・ナイトを受け継いだのだ。その直後に彼は王都から姿を消した・・・」


「親父がエーテル・ナイト乗りだったなんて・・・、何で俺に黙って・・・」

ジークがわなわなと震えている。


「私達も何も分かっていないのだよ。ジン様が失踪した理由が・・・、奥方はあなたを産んですぐに亡くなられたと聞いているだけ、奥方もどこの出身なのかも分かっていない。彼は失踪する前までは古代遺跡の研究をしていたとまでしか分かっていないのだ。残された資料を調べて、長年の調査の末、この村の近くに古代遺跡があると突き止めた次第だよ。」


「親父が古代遺跡の研究だと?まさか、アレか?」


その言葉で王女の眉がピクッと動いた。

「何か知っているのか?」


「はい、この奥の森の斜面でかつて崩落がありました。そこから洞窟が発見され、その奥に謎の扉がありました。当時の私は父に連れられ一緒に行ったのを覚えています。もう10年も前ですが・・・」


「扉だと?」


「はい、洞窟の奥はとても広い空間になっていまして、その扉も途方もないくらいの大きかった記憶があります。まるで巨人が出入りするのでは思われるくらいに大きかったです。」


「そんなに大きな扉か・・・」


王女が腕を組んで思案していると1人の男が王女の隣まで移動し口を開く。

「姫様、この話は当りかもしれません。そんなに大きな扉だとすると、もしかして未発見のエーテル・ナイトが見つかるかも?」


「うむ、私もそう思っていたが、その扉がどれだけの大きさなのか気になるな。」


そして王女がジークへと向き直った。

「ジークとやら、空洞も扉も大きいと言っていたな?随分古い記憶だが信用しても良いのか?」


「はい、父が亡くなる前なので10年程前のお話になりますが、余りにもかけ離れた光景でしたので鮮明に今でも覚えています。」


「そうか・・・」

王女が頷くと腰に差してある剣を鞘から抜いた。

刀身が真っ赤に輝き、普通の剣と違う雰囲気を出している。

「ジークよ、お前の言っていた大きさとはこの位か?」


剣を頭上に掲げた。

「来い!ドラグーン!」


王女の上空に光の輪が出現した。

その輪の中から真っ赤な騎士鎧姿のものが足下から地上へゆっくりと降りてくる。そのまま王女の後ろに降り立つ。


「「「す、すげぇ~~~」」」


少年達が腰を抜かして座り込んでしまった。


「これがエーテル・ナイト・・・」


目の前に見える巨大な鎧は15メートルを超える大きさだった。

ジークはその姿を見てガクガクと震えていた。


「これがお前の父親が乗っていたエーテル・ナイトだ。今は私が受け継いでいるがな。」


王女がニヤッと笑っている。


「どうした?何を呆けている?」


「はっ!」

ジークが我に返ると王女が再び質問をした。


「どうだ?洞窟の空洞や扉はこれよりも大きかったか?」


「は、はい!間違い無いです!これよりも天井が高く扉も大きかったです!」

ジークがエーテル・ナイトを見つめながら叫んでいた。


「どうやら遺跡に間違い無いな。しかもエーテル・ナイトが出入り出来る扉とは期待出来るぞ。しかしジークよ、これが気になるか?」


「はい!これを父が乗っていたと思うと・・・、私も乗ってみたくなりました。」


「ふっ、だが残念だな。エーテル・ナイトは誰でも勝手に乗る事は出来ん。機体に認められて初めて動かせるようになる。何百人もの騎士が血の滲むような努力をしても認められるようになるのはたった数人なのだ。」


「は、はぁ・・・」


「ジークとやら、エーテル・ナイト乗りになりたければ騎士になれ。そして、その中から選ばれるように頑張るのだな。お前の父はかつて我が国の英雄と呼ばれた男だ、お前もその名に恥じぬよう研鑽するのだな。私の隣で戦えるまでになるのを待っているぞ。」


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