第弐話
この程度ではお話にならない。
そんな嘲笑は聞き飽きた。
だから僕は相手を見下すためにがんばった。
――――――
実家を出てさっさと歩き出す。そしてケータイを取り出してとある番号に電話する。
「あ、もしもし?問題が起こったってどういうことですか?」
『まぁ、ともかく以前連絡しておいたファミレスに集合するっさ』
相手はそれだけ言って電話を切る。やれやれ、困ったことに今からそこに行こうとすると三時間程度かかるのだが?三時間も待っていてくれるのだろうか……伝えようにももう相手の電話には一切つながらなかった。
「おい、待て」
「やべっ!」
さっき僕に絡んできたやつの気配と声を感じてさっさと逃げる。
もちろん、相手がものすごく強いことは前々から知っている。ここで相手をしていたら三時間かかる道のりにその分厄介な時間が追加されるということだ。先ほど電話した相手は非常に時間などの規則に厳しい方なのでどちらが優先であるかは決まっている。殴られてうれしいなんて感じる性格というか、嗜好は持ち合わせていないので遠慮しておこう。
「待てったら!」
「待たないよ!」
逃げ出した僕の隣に並んだ相手が手を伸ばしたりしてくる。だが、まだ足の速さでは僕にかなわないはずだ。しかも、すでにゴールである駅はすぐそこで券売機の前には長蛇の列が!大丈夫大丈夫、僕はきちんと切符を持っているから。
「ちっ!」
顔に出やすい性格のために切符を持っていないということがよぉく、わかった。僕はさっさと切符を駅長に渡してちょうどきた汽車に乗って退散。
「ほっ、さすがにここまでは追ってこられないでしょ」
漫画みたいな展開、そうだねぇ、思い切り走って追いつき窓から侵入とかそういったものは一切なかった……ともかく、切符を先に買っておいてよかったとほっと胸をなでおろす、だが世の中そんなに甘くなかった!
PLLLLLLL・・・・・
「げっ!?」
最近のケータイの普及率はすさまじいもので都市部へと近づくごとに徐々に低年齢の子達までがケータイを持っている。着信音が汽車内に響いてそれが自分のであるとようやく気がついた。どうやら相手は先ほど追いかけてきたやつのようでどうしても用があるらしい。もちろん、電話に出ずに電源を消すことにする。
「これで安心だな」
ため息をついてそのまま目を瞑る。今日は五時起きだったために少し疲れてしまった。
先ほど別れたやつが永遠と僕を追いかけてくる夢を見たのは内緒だ。
―――――――
危うく乗り過ごすところだったが何とか降りることができた。ついでに言うのなら乗ろうとしていた人が数人入りきれずに乗れなかった。かわいそうに、あれをやられると勝ち組と負け組みがはっきりしちゃうからな。
まぁ、他人の世話を焼いている暇なんて忙しい僕にはないのである。フォークでご飯を食べるときはフォークの背中に乗せなくてはいけないというのを他人に指摘するのが面倒なのと同じだ、というかいちいちそんなこという連中はいないだろうが。
時間を確認するが、うん、まだ大丈夫。汽車がトラブルなんかで止まることなく二時間五十分で到着、ここから歩いて目的の場所は七分程度。場所はファミレスでの待ち合わせ……別にデートに行くわけではないが気分は普段より少しだけ上。普段だったら絶対男とかおばさんが依頼主だが今回の相手は若い。
もちろんこれは仕事だからお金を貰うことができる。リスク分散型とか言いながらリスクが何なのかわかりづらくなった上に破滅を迎えてしまったどっかの会社の重役みたいに多額の金を貰うわけではないのだがそこそこ自分的には満足なお金が出る………はずだ。
切符をさっさと車掌さんに渡してから僕は寂れた駅へと降り立った。まるで天使のように……
―――――――
ウェイターにすでに待ち合わせている人がいると告げてきょろきょろとしていると特徴的な髪型(長い鉢巻でくくったパイナップルみたいな頭)へと歩いていく。
「こほん、お待たせしました。浜龍輝です」
「あ〜私は緋奈っさ」
鋭い瞳……そうだな、猫が目を細める途中だな、それでバランスの取れた目鼻に柳眉、引き締まったあごラインにゆったり目の服なので胸がでかいか小さいかはわからない。まぁ、かわいい子だな……じゃなかった、こんな若い子がなぜ僕に依頼をしてくるんだろうか?
「それで、緋奈さんはなぜ僕に依頼をしてきたんですか?」
「お、早速仕事の話っさ?仕事熱心っさね」
語尾がちょっとあれなのは置いておくとしてまともそうな感じだ……彼女は優雅そうに湯気の立つコーヒーをちびりと飲んで目をひん剥いた。
「あつっぅう!?こ、これ、あつぅ!」
口を開閉するたびに赤い何か、オレンジ色の何かがちらちらと見え隠れしていた……僕はこれが何か知っている。
炎。
もしかして、この人……




