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第壱六話

 僕に一人の友人ができた。


 いや、二人。


 人じゃないけど、いい人たちだ。


――――――――



 比較的落ち着く和室。『知』と書かれた文字が誤字であると同時にこれを書いたのは緋奈さんだ。僕のケータイを覗き込んでいる。

「……龍輝、緋奈に近づきすぎだ」

「え?別にそんなに近づいてない気がするんだけど…」

「いや、駄目だ。近づきすぎだ」

 雪子さんに引っ張られてケータイは緋奈さんが一人で見ていた。送られきたメールは父さんからのものでその内容は『全龍鎮めに連絡、今日以降近くの白河始祖龍の封印を確認せよ』そんなものだった。

 引っ張られた僕はつんのめってそのまま雪子さんの腹辺りに激突。

「お、おいっ!何してるんだ!」

 もちろん、雪子さんは怒っておりいいにおいがしたが急いで顔を離す。

「誤解です、何もしてません」

「お前、わざとやったんじゃ……」

「違います!好き好んで誰も雪子さんに引っ付こうと思うやつなんていません!まるで鬼ですから」

 そういうとものすごくショックを受けた顔をし始める雪子さん。

「な、い、言うに事欠いてそんなことを……龍輝、お前いつも私のことをそんな風に見てたのか!?」

 そして涙を流し始める。

「え、ええっ!?いや、別にそんな泣かなくてもいいじゃないですか……すいませんって、謝りますから」

「うぐっ……龍輝の馬鹿野郎っ!!!」

 馬鹿ヤロー馬鹿ヤロー馬鹿ヤロー……そんな響きを残しながら雪子さんは出て行ってしまった。

「……龍輝君、俺っちたちもそろそろ行くっさ」

「行くって……どこに?」

「このばかげた騒動をとめるためっさ」

 確かにまぁ、ばかげた騒動ではあるのだが相手が相手だ。人間が束になってもかなわない、しいて言うなら龍鎮めが束になってもかなわないような相手なのだ。

「けど、どうやってとめるつもりですか?」

 そういった僕の目の前にくしゃくしゃの紙が一つ提示される。

「それ、持ってきていたんですか?」

 あの部屋に放置されていたメモである。

「そうっさ、ここに行けば全てが終わるはずっさ」

「……まぁ、もうそれしかないだろうけど雪子さんはどうするんですか?」

 出て行ったままだ。いつごろ帰ってくるのか見当もつかない。

「帰ってくる前に決着を着けるっさ。多少強引であっても俺っちが考えてる方法がきっと最善だといえるっさ……龍輝君、ついてきてくれるっさ?」

 差し出された右手を取るべきか、とらざるべきか悩んでいたが緋奈さんが信じていることを僕も信じてみるべきことだろう。少ない間だが一緒に生活を送っていたのだから、彼女の信頼に値する人間だと自負してもいいはずだ。

 彼女の手をしっかりと握り、僕はうなずいた。

「ええ、行きましょう」

 指定されている場所は一時間程度でいける川辺で、そこには大きな橋が架かっている場所……そこに僕たちは向かうこととなった。


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