第壱五話
それから僕がするべきことは一つだった。
僕を必要としてくれる人を探すこと。
そのために僕は独りでいないといけないと知った。
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「ここは……どこっさ、龍輝君?」
そういってきょろきょろとあたりを見渡している。無理もないだろう……ここはまるで坑道のような場所で薄汚く、内部の空気を循環するためのダクトや決して綺麗とはいえない水がすごい音をたてながら流れている地下の場所だ。よく躾の為だろうけど悪いことをするとここに放り込まれていた気がするな。
「ここはですね、僕や真帆の龍鎮め一族があがめているまぁ、一般的に言って神様がいる場所ですよ」
「それは……龍っさか?」
首をかしげている緋奈さんに歩きながら話しますといってさて、どうやって話そうかと考える。
「……以前、この先にある部屋のような場所へと向かったんです。普段は絶対に入れないように厳重に警備がされていて……赤外線とか張り巡らされているんですよ」
「赤外線?当たったらレーザーが当たるやつっさ?」
「まぁ、そんなものです……あの時は無我夢中で進んでいたんで見事によけれたんでしょうかね?それから十個の鍵一分以内に解除して中に進入しました」
「……え?スパイっさか?龍輝君ってスパイっさ?」
「いえ、普通の龍鎮めです……それでその、部屋の中には一匹の白い龍がいました」
あのときの光景は今でも忘れない……神々しくも荒ぶれており、普通であり異常。形容しがたい光景を形容しようにもまだそれだけ長くは生きていないという実感を持たせるに等しい存在だった。
そして今、僕たちの前にその扉はあり、あの時一人であけた扉を今度は二人で開けることができる。
「この扉、重いんですよね……」
「じゃあ、俺っちに任せるっさ」
「いえ、僕がこちらを引きますのでそちらをよろしくお願いします」
「わかったっさ」
せぇの!という掛け声をかけ、その重たい扉を開ける……その先に待ち受ける一匹の龍を見るために。
「あのぅ、龍輝君、どこにその龍がいるっさ?」
「あれ?」
そこには何もなく、六畳ほどの部屋がありテレビやタンス、そのほか日常生活に必要なものがおかれていた。
「あ、ちゃぶ台の上に何か置かれてるっさ」
メモのようなものを取り上げて、そのまま読み始める。
「……これを読んでいるという事はついにあいつが俺を始末しに来たに違いない……いわれのない非難だ、これは!きっと俺をあいつの元に連れてくる使者がやってくる……死神だ、きっとそいつらは俺にとっての死神に違いない!こうなったら逃げてやる。龍鎮めの長にはきちんと話が通っているはずだし、少しの間なら大丈夫のはず……そのうちにどうにかして対策を立て直すために……だからこれを読んでいる者に一つ提案したい。協力し、俺をどうにか救ってくれるというのなら……以下に書かれている場所へ来て欲しい……とかかれているっさ。それで龍輝君、どうするっさ?」
首を傾けてこちらのほうを見てきている。え?それってどういう意味だろうか?
「もちろん、決まっているっさ。さっきの女の人の言うことを聞くのか、それともこの手紙の主の人に協力するのか……二つに一つっさ」
「え、ぼ、僕は………」
どうするべきなんだろうか?あの龍に会いたいという気持ちもあるのだし、しかし、話はあの女性のほうの話を聞いてきているわけだから人としてここにいた人を連れて行かなくてはいけない。それに、嘘をついたらあの女性恐そうだったし……とりあえず、一度戻って話をしたほうがよさそうだ。
どうやって戻ろうかと考えたところで携帯が急に鳴り出す。
「真帆からか……」
この場所が圏外になっていなかったことに驚いたがとりあえず通話ボタンを押す。
「もしもし?」
『あ、たっちゃんか……まずいことになった』
「え?」
ここであ、おいやめろという声とともに相手が代わる。
『龍輝、落ち着いて聞いて欲しいがあの祠は完全に壊れ、中から一匹の龍が出て行った。お前、中で何かあったのか?緋奈も消えたままだし……』
「緋奈さんはこっちにいます。しかし、龍が飛び出したって……」
そしてまた携帯の奪い合いをしているような音が聞こえ、声が聞こえてくる。真帆のようだ。
『まず、間違いなく何かを探しているような感じだった。しかも、仕事用の携帯のほうに当主様の番号が出てる。きっと緊急招集だ。あぁっ、こら、やめろ……』
『龍輝……現状がよくわからないから私はお前と一緒にいたほうがよさそうだ……だから今から一時間後にお前の家で落ち合おう』
「え、雪子さん……もう今日の電車は通りませんよ……」
あの二人が祠の前にいるのはわかったが、急いで帰って来ようにも明日にならない限り電車が通るはずがない。タクシーなんておそろしいぐらい料金がかさむはずだしどうやって帰ってくるつもりだろうか?
結局、その後のことはわからず携帯を争って何かが壊れるような音が聞こえた。
「……それで、俺っちたちはどうするっさ?俺っちが思うところあの女性はここにいた人物を探すために出たと見て間違いないとおもうっさよ?」
「……とりあえず、雪子さんの言ったとおり僕の家に集まることにしよう……僕は一度一族の会議に行くから先に行っててって言ってもここからは三時間ぐらいかかるし……」
困った事だなぁと考えていると緋奈さんが意外と豊満なバストをたたいていった。
「任せるっさ、空は器用に飛べないけど俺っち、面白いことができるっさ!」
「へぇ、それってどんなことですか?」
――――――――
「緋奈さん、僕は今後絶対にあなたと一緒に空を飛ばないことを約束します」
「ええっ!?何故っさ!?」
地獄は死んだ後に見ればいい。そういうわけで僕は九死に一生を終えて家に帰宅したのだった。あれからまだ一時間程度しかたっていない……どんな方法で戻ってきたのか、想像してもらいたい。
作者の切なる願い……どなたか評価お願いします。




