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第壱二話

そんなに暑くない夏……如何にお過ごしでしょうか?きっとクーラーとかあまり売れていないんだろうなぁ……まぁ、暑いところは暑いままなんでしょうけど。最近へたれてきた自分にしょげつつも、更新しました。感想または評価をしてくれる人がいましたらよろしくお願いします。作者の元気の源です。

 あれから負い目を感じたのか?


 あの子はさりげなく僕を助けてくれた。


 だが、僕は助けられることを拒みたかった。



―――――――――



「龍輝、ボーっとしてないでしっかり周りを見ろ」

 震えるような声が聞こえてきて目を開ける。するとそこには祠なんてなくて祠があった場所には、というより山自体が消滅しており背後には巨大な滝があるだけだった。滝からは清流が流れており僕らの目の前にある家へと清流が向かっている。

「きっと、俺っちたち引き込まれたっさ」

 頭をガシガシ掻きながらため息をつく緋奈さん。引き込まれ……そう、龍は自分の世界のようなものを作ることができ、そこに迷い込んだ人間は神隠しなんていわれたりする。そんな馬鹿な話なんてあるかよって思っていたが実際に自分が体験してみるとこれはこれですごいことだ。

 目の前の家の引き戸を引くと、そこには意外な人物が立っていた。

「真帆!?」

「たっちゃんか……」

 鉢巻にジャージ姿のどこからどう見てもリレー途中の姿で真帆が立っており、その手にバトンが握られていれば完璧だなぁと無駄に考える。

「どうしてここに?」

「わたしは一族から連絡があって白河始祖龍を鎮めた場所全てで不穏なことが起こっているといわれたから一つの祠に来たんだが気がついたらここにいた。そっちは?」

「俺っちたちは龍鎮めというか、龍の被害の話を聞いて現地にむかったっさ。そうしたらこうなったっさ」

 僕の代わりに緋奈さんが答えてくれている間、僕はぐるっと見える範囲でこの家を見る。

 この家は浸水でもしているのか床上一センチ程度水が張られており歩くたびにぴちゃぴちゃという音がしている。泥棒なんかが侵入したら一発でわかりそうなものだ。壁に触れると水のように波紋が広がり木造のようだが木に触れているような感覚はなくまるで見ず風船に触っているかのような錯覚を覚える。

 引き戸はすでに閉まっておりあけることができずまた、壊すこともできなかった。

「たっちゃん、この家はどうやら右回廊と左回廊に別れてるようだ」

 雪原邸のことも思い出す。ちょうど人数は四人だ。

「んじゃまぁ、ここで二手に別れますか?」

「たっちゃん、それは得策じゃない気がするぞ」

 確かにそうだがどれだけ広がっている家なのか気になる。まとまって行動していて罠の一つで全滅という自体だけは避けたかった。

「ともかく、これからじゃんけんして勝ったチームは右、負けたチームは左からってことで」

「わかったっさ」

「いいだろう」

「……」



――――――――



「いいのか、たっちゃん」

「何が?」

「わたしなんかと一緒で」

「別に」

 じゃんけんの結果として僕と真帆、緋奈さんと雪子さんとなった。まぁ、僕は誰と組んでも相手のほうが実力は上なのだから守られる側となってしまうのだが……。

 ぴちゃぴちゃという音が響いているが時折窓から外の光景が見ることができた。そこはすでに水の中にありこのガラスが割れてしまえば僕らはおぼれてしまうこと間違いなしだ。廊下の広さは三人分ぐらいあり、縦は二メートルぐらい。右側にはふすまがあるのだが何をしたって開かない。鮮やかな花の絵が永遠とかかれているがそれは古ぼけている。

「……なぁ、たっちゃん。わたしが死ぬ前に聞きたいことがある」

「おいおい、死ぬ前ってこれからお前は死ぬのかよ?」

「……わたしたちの仕事はいつ死ぬかわからないから」

 ふんと鼻で笑い飛ばして真帆は続ける。

「……あの時、わたしがしたことを何で当主に言わなかったんだ?」

「ああ、あれか……」

 高校二年のことだっただろうか……

「そりゃま、言ったらどうなるか知っているからな。一族に逆らうようなことをしたやつは全員行方不明だ。それに、僕が報告してもメリットなんてないだろ」

「……たっちゃんは相変わらず愚かだ。わたしはこれから先もう一度だけ大騒動を起こすぞ」

 その目が嘘をついていないのを横目でちらりと確認する。ぴちゃぴちゃという音だけが廊下に響いており、他には何も聞こえてこない。

「そのときわたしは……絶対に手をぬかない」

「………」

 僕はそれに対して答える言葉などもちろん見つけられなかったし、見つける必要もないなと感じた。後手後手に回っていたとしても未然に防げるほどその相手はやわな相手じゃない。

「……しかし、この廊下はどこまで続いているんだろうな?」

「多分、ずっと、永遠にね。一度戻ってみよう」

「そうだな」

 振り向き、歩き始めるその後姿はプライドの高い精神が見え隠れしているような歩き方だった。


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