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第壱一話

さて、つける題名があるのならつけたほうがいいのでしょうがあえて言うなら前回からの話『始祖龍編』とでも言いましょうか?この物語に出てくるとある家系を築き上げてきたものの末路と残したものの結果として今この話があるというなんとも歴史を感じる話です。今あなたがくしゃみをすることで百年後の世界が変わっているかもしれませんよ?

 あの事件が誰のせいなのか僕は知っていた。


 当主になりたかった一人の少女のわがまま。


 報告することもないだろう、僕は黙っておいた。



―――――――



「あ!龍輝君、山!大きな山っさ!」

「緋奈、田んぼが永遠続いてるぞ!ほら、龍輝も見てみろ」

「………あの、二人とももっと静かにしてほしいんですが?」

 何だろう?この二人はまるで子どものように車窓から見える景色に嬉々として叫んでいる。周りの人の生暖かい視線が痛いし、何より僕の隣に座っている雪子さんが僕の太ももに乗っているのがおかしいことだと思う。痛いし、恥ずかしいし……

 もう一度注意しようとして二人の目がものすごくきらきらしていてそれを取り上げるのはやめたほうがよさそうな気がした。周りの人たちは理解力があったのか、注意してくる人はいなかった……相変わらず生暖かい視線が続いていたのだが。


―――――――


「いやぁ、田舎っさね!」

「空気がうまいな!」

 二人して伸びをしている。くそぅ、またここでも僕はじゃんけんに負けてしまったために一人で三人分の荷物を背負っている。

 駅から続く道の隣には田んぼがずっと続いており等間隔程度に趣のある民家が太陽を受けて存在している。

「ほら、二人ともとりあえずええと、上田さんだっけ?その人の家にいこう」

「わかったっさ」

「わかった」

 僕の家に来ていたのは上田さんの使いの人だったらしい。上田さんは多忙の人のためにこちらに来る都合が一切つかないがどうやら僕の一族と何らかの関係があり、うわさによると全ての龍鎮めに何らかの連絡手段を持っているそうだ。

 上田さんの家はそこらの小さな民家とは比べ物にならないほど大きな屋敷で、通された部屋も取り替えられたのか知らないが畳のいいにおいが漂っており上田さんがやってくるまで緋奈さんと雪子さんがごろごろと転がっていた。

「初めまして、上田猛といいます」

 上田さんが来たときも尚、いまだ鼻をくんくんと緋奈さんは動かしていた。それほどたたみのにおいが気に入ったのだろうか?

「初めまして、浜龍輝です。早速ですがここらで龍が出ると?」

「ええ、そうなんですよ。ここからもう少し山に登ったところに祠がありまして、この前山へと向かったときに壊されていることに気がついたのです。それがちょうど一ヶ月前、龍による被害だと思われるものが今日までに三件です」

 上田さんがいった起こった被害が三件、一つ目が中規模の川にこれまで見たことも無い渦が発生し、犬が飲み込まれた。二つ目が水道管も局地的な豪雨も起こっていないのにマンホールがはじけ跳んだ位の水の反流。最後が川とダムの水位の異常な上昇でこれが非常に危険だ……次に豪雨なんかがきたらあっさりとダムなんかが決壊する。

 話を聞いて祠へと向かう途中、雪子さんがしばしの間沈黙していた。騒がしい人なのにどうしたのだろうかと首をかしげていると手を引かれた。ひんやりとしていてとてもすべすべしている。

「おい、龍輝……この話ものすごく危ない気がしないか?」

「危ない?何で?」

「なんだろうな?なんだかものすごくいやな予感がするんだよ……清流は青龍に通ずる……って言葉をどこかで聞いてな、ここは水がものすごく綺麗な場所だ。ここで氷を作ったら最高のものができるって私は思う」

「はあ、それで?」

「ともかく、気をつけるだけ気をつけろ。危ないと思ったら無理せず私と緋奈に任せてお前は逃げろ」

 逃げろ何て言葉が雪子さんから出てくるとは思わなかった……少しだけ感動して笑ってみせる。

「大丈夫ですよ、何とかなるはずです。緋奈さんと雪子さんがいてくれますから」

「……まぁ、そうだな」

 緋奈さんはずんずん一人で前に進んでいき、山の中腹辺りにある祠の前へとたどり着くことができた。

「ありゃりゃ、本当にぼろぼろっさ」

「誰だろうな?罰当たりなことをしたのは……きっと龍は仕返しを考えてるんだろうな」

 壊したやつをこの田舎ごと水没しようと考えているのかもしれんな。てっきり祠に納められているものを狙ったのかともおもったのだが中に納められていた札のようなものと短刀が無事に鎮座されている。

 緋奈さんと雪子さんはあたりをきょろきょろと探し回っているが何も見つからないようだ。

「ふむぅ?うぅん……」

 しばしの間、実際にここに龍がいたのか気配を探るために集中してみる。変身した龍を見分けることはできないが、龍の気配が残っていれば、少しでも一応はわかる。

 だが、その集中は別のものを生み出していた。


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