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第壱零話

記念すべき第十話?ですね。ここからまた新たな話が始まる予定です。

 一つ大きな事件が起こった。


 そこで怪我一つ負わなかったのは僕だけ。


 それが当主への更なる近道となってしまった。


――――――



「はぁ、なるほどなるほど」

 高校生では非常に大変だった仕事の話(県外へと赴くことが殆どできなかった)だが大学生となってしまった今、金はないが時間はあるのできちんと聞くことができ、向かうことができる。以前は慌てて聞いてしまっていたために横浜と福島を間違ったりして酷い目にあった。

「じゃあその龍は人目にわからないように悪事を働いていることっさね?」

「ええ、そうなります」

 よくわからないのが緋奈さんが首を突っ込んでいることと……

「じゃあ私たちがこれから様子を見てくる。場合によっては沈めてしまうこともあるから念頭においていただきたい」

「わかりました、お願いします」

 雪子さんがいることだな。



―――――――



「あの、何で二人がついてきてるんでしょうか?」

「それはもちろん住む場所と食事を提供してもらっているからっさ」

 なるほど、緋奈さんはわかった。

「じゃあ何故雪子さんが?」

「何だ?そんな要らない心配はしなくていいぞ。自分の身ぐらいは守れるからな」

 そらそうだろうなぁ、あんたはまったく人の話聞かないうえに話がかみ合ってねぇことに気づいてすらいねぇ。

 一族の基本的なルールとしては協力で仕事をしたらまったく同じ料金でやらなければならないのだ。つまり、どれだけ能力が高い連中が低い連中と仕事をしても同じ値段。ボーっとしているだけでお金は稼げるのである、後者の場合は。だが、ボーっとしていたらあっさりと龍に葬られてしまう可能性が高い。

 とにもかくにも、屈指の実力を誇っているこの二人がついて着てくれることは非常にありがたい。

 現地へと赴く費用はなんだかんだでもめたのだがじゃんけんによって僕が支払うことになり、じゃんけんを持ちかけたのが僕だったために文句を垂れることもできずしょんぼりと切符を三人分片道で買うことになった。片道なのは……一族のおきてで下手したら死人が出る、だから片道だけ買うのが決まりだそうだ。

「龍輝君、駅弁かってっさ」

「ええっ!?ちゃんとお弁当は作ってきましたよ。緋奈さんの好きな梅干の入ったおにぎりもたくさんあります」

 すそをひかれながらもそうやって緋奈さんをなだめる。

「お、そうなのか?それなら昼は楽しみだな」

 なんだかなぁ……やっぱり龍と人の感覚のずれって存在するんだろうな。これからどんな相手かもわかんないやつともしかしたら戦うことになるかもしれないのにお気楽なことだ。

 ふと、自販機を見つけそういえばのどが渇いていたことを思い出す。

「あ、すみません、僕オレンジジュース買ってきます」

 その後、買ってきたオレンジジュースを二人に取られてしまった…まだ一口しか飲んでないのに!


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