第九話
物凄く申し訳ないのですが以前のタイトルはあくまで仮称のものでした。結果として教えてもらいスーパーはハイパーの下であることが判明しましたのでここに明記しておきます。ご迷惑をおかけしてしまい、誠に申し訳ありません。
助けを求められれば手を差し伸べた。
困ったことがあっても助けなんていらなかった。
そんな僕に干渉してくる一族はそうそう居なかった。
――――――
夕食がおえてゆっくりとしていた時間、風呂場のほうから声が聞こえてきた。
「龍輝君、シャンプーが切れてるっさ」
「あ〜はいはい、近くにおいておくから」
詰め替え用のシャンプーを手に持って風呂場へと向かう。覗き……そんな行動をとったらどうなるか想像もつかない。朝目の前に僕の顔があるだけで鳩尾に冗談抜きで一撃食らわせるような人物なのだ……よって、そんな無粋な、というか恐ろしいことはしない。
すりガラスの向こうでは緋奈さんが立ち上がるところが見えた。どうやら僕が来たのがわかったようだ……さっさと非難した方がいいなと思っていたら予想だにしないことがおきた。
ガチャリ
「ありがとうっさ」
「……」
バタン
い、今のは?今のは……なんだったんだろうか?事故か?わざとか?天然か!?しばしの間ぼけーっとしていると向こうで音楽を聴いていたはずの雪子さんの声がしてきた。
「あ!龍輝何してるんだ!デバガメかこの変態め!!」
「ち、ちがうんですぅぅ!!」
―――――――
「じゃあお休み龍輝君。また明日の朝俺っちを起こしてっさ」
「ええ、わかりました」
ピンクのパジャマ姿である緋奈さんが眠たそうに目をこすりながら自室へと引っ込んでいく。僕は雪子さんによって形状が変化するまでぼこぼこにされた顔に氷(雪子さんが作ってくれたもの)をのっけていた。……南極の氷と北極の氷ってどっちが冷たいのかな?
「じゃあ、私ももう寝るから明日起こしてくれ」
「ええ、わかりました雪子さん……なんていうとでも思いましたか?」
すごく自然な形で僕の部屋へと入り込もうとしていた雪子さんの前へ立つ。間違ってもこの人の肩をつかんじゃいけないのは前に氷柱を掴んだときに実感した。触れたら低音やけどする人なのだ、この人は。
「なんだ、私は忙しいんだ。眠い。美容は肌の対敵だとしらんのか?」
「ちょっとまってください。いいですか、あなたの家はここじゃないでしょう?」
どうせ肌の手入れとかしてないくせに……あんた、今朝着たときから顔にめやにがついてますよ……とかいえない。恐いもん。
「そうだな、そりゃまぁ、そうだわ。ここは龍輝の家だからな」
よしよし、それなら話は早い。
「帰ってください、今すぐに!」
「おいおい、今何時だって思ってるんだ?二十三時過ぎてるんだぞ?こんな時間に麗しい乙女が夜道を歩いたら襲われるだろう?」
「大丈夫です、見た目は麗しい乙女かもしれませんが中身は阿修羅か羅刹ですから。連中、次からは雪子さんのことを恐怖の大魔王って呼びますよ、きっと」
へらへら笑った後に気がつきゃ羅刹が氷の槍をのどに引っ付けてぺたぺたとする。神速の動きに何もできずに手を上げる。
「……と、ともかく!なんでここに居るんですかっ?」
「おいおい、緋奈は居ていいのに私は駄目なのか?お前、緋奈と一緒に住んでやましいことしようって魂胆だろ?」
そうはさせるかという瞳をちらちらとこちらに見せている。一向に氷の槍は僕から離されていない為にここは慎重に話さねば命が危ない。説得力のある会話を心がけねば!
「いやいや、そんな気持ちはこれっぽっちもありませんよ」
「本当か?」
「本当です」
「そうか、それならいいんだ」
そういって結局僕の部屋へと入っていく。結局、命は助かったが
「……僕も寝るか」
しょうがないので雪子さんが消えた僕の部屋と向かったのだが………
「待て、何でお前がここにいるんだ?お前はあっちで寝ろ」
「はぁ?何言ってるんですか?」
「彼氏でもなんでもない男と一緒に寝れるか」
「それならこっちも同じです!雪子さんがあっちで寝てくださいよ」
「客には部屋を提供するものだろう?」
「知りませんよ」
「ともかく、あっちで寝ろ。寝ないと永眠させるぞ」
「………」
理不尽だ。ものすご〜く、理不尽だ。力が上だからって暴力で解決する人は大嫌いだ。
「……天罰でもあたっちゃえ」
「何か言ったか?」
「いえ、何も」
どうせ羅刹が寝ている部屋では危険なことが起こるに違いない。寝相で人死に出たら笑うに笑えないし、それが自分だったら目も当てられない。だが、まぁ……そんな横暴する人にこのまま屈するのもなんだか人として間違っている気がする。王様倒すために人は革命を起こすのだから……僕だって下克上ぐらいやってやろうじゃないの!
――――――――
「……はぁっ……」
昨夜、いびきがうるさすぎて寝れなかった。あれからいろいろと仕返しに顔にマジックで落書きしようとしたら見事に酷い目にあった。まさか部屋に入った瞬間氷の槍が飛んでくるとは思わなかったのだ。しかも立て続けに永遠と……本当に永眠するとこだった。
「……緋奈さん、朝ですよ、朝」
そしてこれもお約束………
「何で龍輝君がいるんですかぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
いい加減、なれてほしい。
壁に激突してむせている僕に雪子さんがあくびをしながら近づく。
「龍輝、パン焼いてくれ」
あんたは一日でなれすぎだ。




