9話 シークとイルと鏡檻屋敷の家事代行
シークとイルとフランは依頼主に会うため立派な庭と日本家屋を見上げなが歩いて進む
「今回の依頼はこの屋敷の家事代行か大きな」
「普段なら受けない依頼だが今はフランがいるからな大丈夫だろ」
「はぁ、大丈夫ですかね…私地獄の常識とかいまいち慣れてなくて…不安ですーぅ…」
インターホンを押すとバタバタと足音が聞こえ引き戸がガラガラと音を立てて開く。
玄関から10代後半くらいの男の鬼がでてきた、愛想よくニコッとしている。
「よく来てくれました。おじいちゃーん業者の方が来てくれたよー!」
「うるさーい!勝手にとっとと働きやがれ、だがわしの鏡に手出すんじゃねーぞ!いいな」
男の鬼の呼びかけに家の中から怒鳴り声が響く。
「すみません、おじいちゃんいつもあんな感じなんで、気にせずうちに上がってください、あっあと布の掛かった鏡には触れないようお願いします。僕ソウマっていいます!今日は宜しくお願いします。」
「はい、わかりました。所で依頼には家事代行とありましたが具体的には何をしたらよいんでしょうか」
フランの問いに男の鬼が答える。
「はい、僕も含めて掃除、洗濯、炊事、などを分担してもらおうと思います。いつもはお手伝いさんにお願いしてるんですが今日は急用ができたらしくて」
話し合いの結果、シークが掃除、イルが洗濯、フランとソウマが炊事と買い出しに分かれた、担当が終わった者からまだ終わってない担当の者を手伝いに行く事にまとまった。
「ふー、洗濯終わりフラン達はまだ買い出し中だからシークの掃除を手伝いに行くか」
イルは屋敷のシークを探す。
その少し前、シークは2階の廊下を雑巾がけが終わり一息ついていた
「この屋敷無駄に広すぎ、使ってない部屋もおおそうだし」
次はこの部屋を掃除しようかなとコンコンとシークはドアをノックする。
「誰か居ますかー?掃除はいりまーす」
「…助け…て、だれか、」
部屋からかすかな声がしたがシークは上手く聞き取れず。気のせいかと気に留めなく部屋に入る。
「ん?、なんか聞こえたような、まあいいか、次はこの部屋を掃除するか」
他の部屋と違い雨戸が閉められ昼間だというのに夜みたいに部屋は暗く空気もホコリっぽい、
「うわっ、真っ暗、ホコリ臭っ、窓開けるか」
シークは窓を開ける、こごもった空気が入れ替わり晴天の空が気持ちいい
「やっぱ掃除するときは窓を開けないとな」
「あっ!!その部屋は窓は開けないで下さい!すぐ閉めて!」
フランと買い物から帰って来たソウマが叫ぶが
風がふき布が次々と飛ばされ隠されていた鏡が現れる。
「あっ!ソウマさんすみません、すぐ閉めます!」
シークは部屋を見渡す、部屋には体生再起不完全型亡者の絵や人間の絵が連なりカバーの布は部屋中に散らばっている、本当は絵ではなく亡者が閉じ込められた特殊な鏡だがこの時シークは絵だと思ってます。
「げっ、気持ち悪、亡者の絵かよさっさと窓閉めて布カバー掛け直そっと」
シークは電気をつけ窓を閉め布を拾いに行く。
それを見ていたソウマはシークの元へ走り出す。
「まずい間に合えばいいが…」
「ソウマさん!」
フランも何事かと感じソウマを追いかけてる。
布を集めるシークにイルが合流する。
「シーク、洗濯終わったから掃除手伝うよ」
「サンキューイル!じゃあこの布集めてあの亡者の絵のカバーにするから」
「OK」
イルは布を拾い集める、シークは集めた布を絵に被せるため絵の前に移動する。
「こんにちはお嬢さん」
人間の絵がシークに話しかける。絵は動いたり話しかけてくるがシークは何も見なかった事にして布のカバーをかけていく。
が、シークはある絵の前で動きを止める
「ねーちゃん…?」
姉に似た女性が写っていた。
「…助けて」
シークが絵に手で触れると、絵の中から手が伸びシークの腕を掴みシークの姉に似た人間が出てきた
「あなたにはそう見えるのねふふふ」
「ねーちゃんなのか?」
「シーク!そいつは男だ姉貴じゃねーぞ!」
「えっ?」
イルが叫ぶ、シークには姉に見えるがイルには男に見えてるらしい
「チッ、仲間がいたか面倒だな」
男の人間は近くにあった絵から亡者を引きずりだすと窓を開け飛び降り逃げて行く。引きずり出された亡者は大型の体生再起不完全型亡者で日本家屋の屋根や壁を突き破りドッーンとシーク達の前に立ちはだかる。
ドンドンと階段を登る音が聞こえ、ガタンと部屋の扉が開く
「シークさん!」
ソウマが息を切らしながら部屋に入ってきた。そこにはシークとイルと家を壊した巨大な亡者がいる。
「くそ、遅かったか」
「シークさんイルさん無事ですか?これは亡者の絵ではなく祖父が捕獲した亡者を特殊な鏡に閉じ込めているものです、危険な亡者も居るのでこの部屋は鍵をかけていたはずなんですが」
「俺ら亡者を倒すのが本業なんでね」
「ああ、行くぞシーク」
シークとイル、ソウマの3人は戦闘態勢にはいる。
「待って下さい!」
フランがシーク達と亡者の間に入り遮る。
フランは亡者の方へ向き直り言葉をかける。
「貴方は本来なら天国へ行くための魂の輝きをしてますね」
フランは大型の体生再起不完全型亡者に触れ
「我ノフルの名の下に天界の力を駆使する、この者の穢れを清めたまえ」
体生再起不完全型亡者は人間の女性の姿を取り戻す。
その時バタンと部屋の扉が開く。
「なんじゃなんじゃ!?鏡には手を出すなと言っただろうがー!家が壊れとる!?貴様らの仕業か!」
ソウマの祖父がドアを開け怒鳴り込む。
「レンスイさんお久しぶりです」
人間の女性がヤマトの祖父に話しかける。
レンスイと呼ばれたソウマの祖父が目と口をあんぐりと開けていた。
「あっあぁ….、詩鶴さん?…元の姿に戻れたんだな良かった、わしの事は覚えとるか?」
「はい、レンスイさん憶えております」
詩鶴と呼ばれた着物を着た若い人間の女の魂がソウマの祖父に語りかける。
「詩鶴さん、わしはわしは…あんたにどう詫びればいいのか、本来天国に行くべき詩鶴さんを地獄に連れて来てしまい亡者の化け物にしてしまい本当にすまなかった」
「いいえ、レンスイの所へ行きたいと言ってついていったのは私です、私はいままで化け物になろうがレンスイさんの近くに居れて幸せでした」
「詩鶴さん…」
フランが詩鶴に手を差し伸べる
「私は天使です。この方を天国まで導く義務があります。さあ詩鶴さん行きましょう」
「そろそろ天国へ行かなくてはならないようです。レンスイさんきっとまた会えます」
詩鶴はニコリと微笑む
詩鶴はフランに手を握ると詩鶴の魂はフランに溶け込んでいく。
レンスイは涙をポロポロ落としながら地面に両膝を着く。
「おじいちゃん…」
ソウマがレンスイを支え安全な部屋に移動する。シーク達も2人の後に続く。
「あのーそれで依頼料どころか大切な家を壊してしまったので慰謝料を払えるだけ弁償したいのですが…」
イルが気まずそうに申しでる
「あの部屋には誰も入れないよう鍵をかけていたはずなんですが」
ソウマがため息をつき言葉を探す。静まりかえる一同にレンスイが口を開く
「…いや、家を直すぐらいの金なんて家には有り余るほどある、だが詩鶴さんの行く末は金ではどうもできんかった、今回の件でわしが目の黒いうちに詩鶴さんを見届ける事ができて本当に感謝しとる皆さんありがとう」
「何かお礼をしたいんじゃが、やっぱり金がいいかのう?」
「え!?いいんですか!実は人間界に行く為費用を集めてまして依頼料を頂けるのならありがたいのですが」
「何故人間界へ?」
レンスイは眉間にシワをよせ怒った表情をする。
シーク達は行方不明の姉と魂の断片が残るカメラの事をレンスイ達に話す。
「なるほどの、カメラをちょっとばかし見せてみぃ」
レンスイはカメラを手にとり眺める。
「この写真か、この背景は確か人間界の慈善町の神社のお祭りの風景じゃな」
「知ってるんですか!!」
「あぁ、知ってるも何も昔は慈善町に住んどったからなぁ、それに多分このカメラはわしの孫のキバが作ったカメラじゃ、ソウマの従兄弟になる」
「ならキバさんにお会いしたいのですが!ねーちゃんの事何か知ってるかも」
「あぁ、それがキバとは5年前にに絶縁しとるんじゃ今は何処でどうしとるのか…すまんの力になれず」
「いえ、俺の方こそ家庭の事情に踏み込んで悪かったすみません」
「ごめん、話しは変わるけどおじいちゃんあの逃げて行った亡者は大丈夫なの?」
「お前らの話しをまとめるとあの逃げて行った亡者は見る者によって姿を変える厄介な奴じゃ、人間の亡者は地獄では鬼の血肉を食らうからな早く獄安獄安協会に通達を出しとかんとな、わしにも報復にくるかもしれんが返り討ちにしてくれよう」
「何故危険な亡者を協会に渡さずご自宅に?」
フランがレンスイに質問する。
「そうじゃな、この亡者を閉じ込める鏡はわしが作った呪道具なんじゃが、亡者は金持ちの道楽に需要があってのう代々家はあの鏡で財を築いてきたんじゃ、因みにこの鏡を改良したのがキバの作ったカメラなんじゃ」
「へー!すげー!俺も金持ちになったら亡者入の鏡部屋に飾ろう」
シークはウキウキして興奮する。
「何言ってんだシーク、亡者気持ち悪くて嫌いなんじゃないか?」
イルはシークを白い目で見る。
「ははっ…道楽ですか、地獄の方の感性は私には理解できません」
フランは苦笑いする。
「とりあえず慈善町を目指してみようと思います。」
「だな、姉貴さんの手がかりがあって良かったなシーク」
「あぁ、気をつけてな、これは依頼料とお礼じゃ」
レンスイはシーク達を見送り依頼料とお礼をシーク達に渡す。
「はい、ありがとうございます」
シーク、イル、フラン、姉カメラはレンスイの家を後にし街に戻る。
「では私は詩鶴さんを天国へ連れていきますので一旦同行を離れますシークさんイルさんカメラのお姉さん道中お気をつけて」
「あぁ、フランもパワハラなんかに負けるなよ」
「…はい、そうですね、それよりこのツギハギだらけの体で天国へ入国できるかどうか、」
「あぁ、またなフラン」
「その体だフランならきっと新しい道がひらけるさ」
「なんですかそれ!私は天界の住人ですよ!!」
フランはプンプン怒って歩き去って行った。
「あらまぁ、プライドの高いことで」
「ギッギッギ」