7話 シークとイルと血飛沫霧のお兄さん
「行方不明者が多発してるのここだよな、この赤い霧が関係あるのか?」
辺りに漂よう赤い霧は触れると赤い水滴になり服に染み込むのでシークとイルはレインコートを着込んでいる。
「いや、この血飛沫霧は昔からある観光名所だ問題なのは多分立ち入り禁止区域の方だな、しかし視界が悪いな」
「私はレンズが霧で赤く染まって上手く撮影出来そうにないから…今回はシークの首でお休みするわね音声だけ録音しようかしら」
シークの姉が紐を出しシークの首にかけカメラの動きを止める。
「了解」「そうだな、無理すんな」
シークとイルは行方不明者捜索の依頼を受け血飛沫霧の観光名所を抜け立ち入り禁止区域の森の奥地の方へ進もうと柵を乗り越える。
「ちょいちょいちょい待ちー!!ダメダメそっちは立ち入り禁止だぞ!」
シークとイルは太ったおじさんの警備員に呼び止められる。その後を若い顔の整った背の高い警備員が走って来た。
「お嬢さんがた観光客かい?今、血飛沫霧は行方不明者が多発して森は捜索隊以外は立ち入り禁止なんだわ」
「俺たち獄安協会から依頼を受けたハンターなんだ行方不明者を捜索にきた」
そう言ってシークは獄安協会で貰った捜索隊の許可証を見せる。
「どれどれ、許可証は本物のようだな、はぁ、それにしてもこんなちびっ子にハンターの任務を任せるとは世も末だな…」
「失礼だな、俺たちはこう見えてもBランクのハンターなんだぞ!イル行こう!」
「ああ、心配無用だ」
と、シークとイルは森の中へ進んで行く。
「やれやれ、ハルトお前あのちびっ子ども心配だからついてってやれ、行方不明者が増えてもこまるから頼んだぞ」
「はい、タイゾウさん行ってきます!」
ハルトはシーク達に追いつき話かける。
「おいおい君達、不慣れな森には道案内が必要だろ?俺も同行するよ」
「あぁ、兄ちゃん道案内はいいが足手まといにはなるなよ」
「はぁ、Bランクのハンター様はお手厳しいようで…俺も職業柄腕には多少心得がありますので自分の身は自分で守りますよ、あと俺の名はハルトだよろしくな」
「当然だな、な、シーク」
イルはシークに同意を求めたがシークの返事は返ってこないイルはシークを探し周りを見渡すが何処にも見当たらない、血飛沫霧も入り口より濃くなっている。
「シーク!何処だー!」
「不味いな霧が濃くなった悪いがお嬢さんは諦めて一旦入り口まで引こう」
「戻るんならあんた1人で戻れ俺はシークを探す」
「やれやれ、俺が悪かった一緒にお嬢さん探すよ」
「おーい!シーク何処だー!」
「お嬢さん1人じゃ危ないよー」
シークと行方不明者を探しながらイルとハルトは森の奥へ進んでいくと滝壺に辿り着く。
イルとハルトが周囲を探しているとさっきの太った警備員がやってきて2人に気づかず滝の裏側へ入っていく。
「タイゾウさん?何故ここに」
ハルトが思わず呟く。
「警備員のおっさんか、シークを見かけたか聞いてみよう」
2人が滝の裏側に行くと洞窟があり赤い霧が立ち込めている。イルはマスクを装着し背中のリュックからホースを取り出し赤い霧を吸い込みつつ進んでいく。
途中人工の赤い霧を出す機械があるハルトはくびを振るう
「なんだ?血飛沫霧は人工なのか」
「いやそんなはずは無い、これは良いものとは思えない、壊して行こう」
暫く歩くと開けた場所にたどり着く、そこには色々な女性用の服や様々な機械、奥には牢屋があり行方不明者であろう鬼達の吐息やすすり泣く声が音を立てている。
「ルールルルールールルルルルー」
タイゾウが裸で女性用の服を選びながら歌ってるのが聞こえるイルとハルトは身を潜める。
「あのおっさんあんたの同僚じゃないか?なんで裸なんだ」
「いや、俺は知らない」
「美容にはやっぱり若い女の血のシャワーよね今日はどの子にしようかしら」
行方不明者達の悲鳴が聞こえる。
タイゾウは1人を選びミキサーにセットしスイッチをおすと血のシャワーがタイゾウに降りかかる。
「なんて酷い事を…他の行方不明者を助けに行こう」
イルが動こうとするのをハルトが制す。
「待ってくれ、今の少女は残念だったがもう少し様子を見よう」
タイゾウは血を水で洗い流し女性用の服に着替える。
そして壁際には鎖で繋がれている男鬼がいるタイゾウは男の鬼に近づきキスをする。
と、キスをされた男鬼はだんだん老化しミイラになり朽ち果てる。
「あら、貴方は失敗作ね残念」
「次はどの殿方にしようかしら」
タイゾウは男の鬼を品定めしゆっくり歩く。
「タイゾウさんが何で…」
「様子を伺っている暇は無い、まだ行方不明者がいる助けに行こう」
イルとハルトが物陰からとびだす。
ハルトは警棒、イルはステッキの鞘を抜きタイゾウに詰め寄る。
「誰!?」
タイゾウは2人の攻撃を受けるが致命傷ではなくすぐ体勢を整える。
「うっふん!ここで実験してるとこ見つかっちゃたわね!もう帰してあげない!私のモルモットになりなさい」
タイゾウはお姉言葉で言い放つ。
「さあ!ハルトそのぬいぐるみを捕獲して!女の子の方も探し出して処分するわよ」
「何言ってんだタイゾウさん?」
ハルトはそう言いながらイルを羽交い締めにする。
「おい!?お前らグルだったのかうぐぐがげほ」
ハルトはイルを縛り口に布を詰め猿轡をかます。イルはどうにか縄を振り解こうともがく。
そこにマスク姿のシークが現れ戦闘態勢をとる。
「イルを離せ!兄ちゃんの事は初めから疑っていた亡者の匂いがプンプンしてるぜ、単独行動して正解だったな」
「すまん、離したくても体が勝手に動くんだ」
ハルトは素直にシークに詫びる。
「多分この霧を多く吸い込んだ影響だ、多分血飛沫霧に混じって亡者の分泌物が混ざってるんだ、亡者に操られているお兄さんは悪いがここで眠っててもらう」
シークが現れたとたんタイゾウが駆け寄り助けを求める演技をする。
「お嬢さん助けに来てくれたのか!あの若い警備員が君の相棒と私を捕まえて実験のモルモットにしようとしたんだ」
ハルトがシークに向かって走ってくる、シークはすらっとハルトを避けハルトの目にスプレーをかける。
「うがぁあ、目が目が焼ける」
シークはハルトにスタンガンをあてハルトは気を失ってたおれる。
「おっさん…趣味かその服」
タイゾウはシークをギロッと睨む
イルは口の猿轡をどうにか噛み切りシークに向かって叫ぶ
「シーク!そのおっさんから離れろ!そいつが今回の事件の首謀者だ!」
「えっ!?」
タイゾウはパッとシークから距離をとり人質の方へ移動する。
シークもイルの所へ駆け寄りイルの縄を解く。
「僕は女子供には興味ないんでね、あんたには僕の美容のエキスになってもらうよ、ウフフ若い女の子の血はどんな味かしら」
「んなもんなる分けねーだろ!おっさん!」
「ブスさっきから口が悪いわね…僕の事はお兄さんとお呼びなさい!」
タイゾウは服を選ぶかのように行方不明者の人質を選別する。
「あら、いい男!たくましくて好みよ!貴方に決めた!」
タイゾウは人質の口を開けて自らの口を近づけるそしてタイゾウは嘔吐をするように口からナマコ程の亡者の一部が顔を覗かせ口から赤い血飛沫が飛び散り人質の口に入る。
「ふふ、貴方は成功ね、あのブス達を殺して」
タイゾウに操られた男の鬼はシークとイルに襲いかかる。
「シークこの人は行方不明者だできれば無傷で助けたい」
「無傷ってそりゃ無理だろ!この人顔真っ青で全身から血をふいてるぜ」
シークとイルは攻撃を避けつつ反撃のチャンスを伺う。
「うぐぐ」
ハルトは意識を取り戻す、人工の赤い霧を出す機械が壊れたせいか体も自由を取り戻している。
シークとイルはタイゾウに操られた男の鬼と戦っている。
ハルトはタイゾウが出口から逃げようとしているのを見つけ滝の外まで追いかける。
「タイゾウさん逃がしませんよ、まさか貴方が犯人だったとは…」
「…うぐぐ、違うんだハルト君私は…私の体の中に」
「タイゾウさん?」
「逃げろ…」
タイゾウの口から亡者が飛び出しハルトの口から体内に侵入する。ハルトは呻きもがくが僅かな抵抗も儚く終わる。
暫くするとシークとイルが追いかけて来た。
行方不明者も一緒だ。
「兄ちゃん大丈夫だったか?」
「ああ、終わったよ、タイゾウさんは僕が始末した、獄安協会にも連絡したからじきに捜索隊がここにくるよ」
「あぁ、俺たちも獄安協会へ連絡した行方不明者の中に衰弱している者がいるからな医療が必要だ」
「戦ってた相手は倒したのか?」
「あいつなら攻撃を避け続けてる間に血を流しすぎて自然に倒れたよ」
「獄安協会に事情を聞かれるのも面倒だが報酬も貰わないと割に合わないからな俺たちはここで待機だ」
「君たちは確かハンターだったねこれはタイゾウさんを倒した時に一緒に手に入れた亡者の魂だ、多分今回の事件の首謀者だ君たちにあげよう」
ハルトはシークに亡者の魂を渡す。
「いいのか?俺達が貰って」
「今回のヒーローは君たちだ、獄安協会には適当にタイゾウさんの単独犯だと伝えておくよ」
「そっか、ありがとう兄ちゃん」
暫くして獄安協会の捜索隊が到着しシークとイルに事情を聞いて行く。事情を話し終えたシークとイルはハルトに別れを告げ町に戻っていくことにした。
亡者に体を乗っ取られたハルトはシークとイルに声が届かない距離まで離れたあと
「じゃあね、ブスばいばーいふふ」
と笑いながら見送っていた。