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56話 白鳩と猫


 「ん、慈善、姉ちゃんを…元に戻せ!!」

 シークは自分の寝言で目を覚ましてベッドから飛び起きる。


 「あれ?ここは?烈華(れっか)の家?そうだ!姉ちゃんは?」


 「おはよう真紅(しんく)

 シークにベッド下に座る日向(ひな)が挨拶する。


 「お前誰だ!」

 シークは初めてみる日向を警戒しベッドの上で間合いを取る。


 「え?と、そのー…私は真紅のお」


 日向が何か言いかけた時部屋の扉がノックされ開く

 「日向さん炎蓮さん、朝食を持ってきましたー」


 烈華とイルがそれぞれ朝食をのせたお盆を持ち部屋に入ろうとしてくる。


 「炎蓮、姉ちゃん?」


 烈華の言葉にシークが反応する。


 「あっシークさん目が覚めたんですね!良かった!シークさん3日も眠り続けていたんですよ!みんな心配しました、あっ私シークさんの朝ごはん持ってきますね」


烈華は日向にお盆を私一階にドタドタ降りていく。


 「シーク、探していた炎蓮ならここにいる。慈善は逃してしまったが炎蓮は無事帰ってきた」


 イルは盛り上がった布団をめくると丸まった炎蓮が目を覚ます。


 「うーん、もう交代の時間かな…あれ、シーク久しぶり、元気だった?」


 「姉ちゃん!何寝ぼけた事言ってんだよ!俺すっげー心配したんだぞ うぐっぐっ」


 シークは涙を堪えようとするがどんどん溢れてくる。


 炎蓮はしばらくその様子を寝不足の頭でボーっと眺めて日向とイルを見てハッとする。


 「シークごめんね、慈善から助けてくれてありがとう。それからシークに紹介したい人がいるの!この人はシークの本当のお母さんの日向(ひな)さんよ」


 「えっ、本当のお母さん?」


 炎蓮の言葉にシークはさっきまで警戒していた日向を黙って見つめる。


 「はじめましてかな真紅、ごめんなさい13年も会えなくて、このまま真紅が眠ったままだったら私どうしようかと…本当に目を覚ましてくれて良かった…」


 日向は話しながら涙がポロポロ落ちる。


「シーク、今まで日向は表に出て来れない事情があったんだ」



 「…うん、日向お母さん鬼人化して地獄にいたんだよな、イルから話聞いてた。無事で良かった…、なんかその、俺、日向お母さんに緊張しちゃってへんだよな、へへっ」


 「ふふふ、真紅、お母さんって呼びづらかったら私の事は日向で良いよ、まだ全然親らしい事できてないし申し訳ないから」


 「うん、ありがとう」

 シークは下を向いてコクリと頷く。


 部屋の外から階段を駆け上がる音と扉が開き烈華が部屋に入ってくる。


 「シークさんの朝食持ってきました」


 シークは烈華から朝食をありがとうと受け取る。


 「それで日向とシーク、今後のことなんだが地獄と人間界どっちに身をおくかだが、俺はどっちでも良い」


 「私も人間界でも大丈夫だし、13年地獄で暮らしてたから地獄でも大丈夫だよ、…真紅が良ければ一緒にくらしたいな」


「俺は…」


 コンコンコン、キュルキュルキー、と窓から音がする。


 「にょーん」「ポッポックルックック」


 「猫と鳩?なんだろう喧嘩かな」


 烈華が部屋の窓を開けると猫と白鳩が部屋に入ってきた。


 「シークさんお久しぶりにょー」

 猫が喋る。


 「わー可愛い!なんだろう妖怪かな!」

 烈華は猫を抱き上げる。猫は抱っこされるのを嫌がり真紅の座るベッドの飛び上に降りる。


白鳩が部屋を飛びあがりベッドの柵にとまる。


 「シークさんイルさんこんな姿で失礼します。ノフルと化け猫娘のココです!」


 「ノフルさんって慈善神社でシークを正気に戻してくれた貫禄のある天使様ですか?」


 烈華はフランケンシュタインの様な片翼の天使をおもいだす。


 「あのつぎはぎの体では誤解が多いので私は鳩の姿で、ココさんは霊力の関係で猫の姿で参りました」


 「フラン、めちゃこわだもんなー」

 シークはしっしっしーと笑う。


 イルは事情のあまり知らない日向と烈華にノフルとココを簡単に紹介する。


 「で、2人とも何しに来たんだ?」


 シークが楽しそうに尋ねる。


 「ノフルさんの右の翼が人間界の慈善町にある情報を仕入れたにょ、でも人間界でのこの仮の姿じゃ翼を盗んだ亡者と戦えないし人間の依代も都合良く見つかるはずもなく、ノフルさんに正直に連絡したらシークさんとイルさんが慈善町にいるって教えてくれたんにょ」


 「それで2人で亡者ハンターのイルさんとシークさんを頼ってきました」


 「もちろん報酬は私がお支払いしますにょ」


 ココはシークの顔をすりすり顔を擦りつけシークに小声で呟く。

 「ノフルさん怖いにょ、シークさんお代まけてほしいのにょ」


 「それで仕入れた情報を聞こうか、右の翼だけでも天使の一部だ亡者が持つと厄介な代物だ」


 イルがココを抱き上げる。


 「はい、私は宅配の仕事の合間地獄で右翼の情報を集めていました」



 ココは宅配便を済ませて夕食に酒場へはいり料理を注文し他の客の話に聞き耳を立てる。


 本当は獄安協会に依頼を出して右翼を探したいが天使の羽が亡者に渡っただけでもスクープなのにそれが自信のミスだと知れれば実刑は免れない、バレないようにバレないようにとココは心の声がいつの間にか声にでる。


 ココの携帯端末が音を鳴らす。

 画面にはノフルから右翼の情報収集は順調かとの確認メッセージだ。毎日届くそれにココは恐怖していた。


 約3ヶ月後、何か情報がないかとココは獄安協会と酒場に足を運び料理を注文する。


 ココが食事をしていると後ろからハンター達の楽しげな声がする。

 

 「片翼の天使様またこねーかな、俺天使の癒しってはじめ受けたときは感動ものよ、体が軽くなって頭がホワホワーってまあ、一瞬だけどな」


 「ああ、なんだっけ右翼のお印様だっけ、綺麗な天使だったな、大怪我を負ってまでも心は清らかなまま、あんな女房が俺はほしいよ」



 「右翼!!」ココが右翼と言うワードに耳を立てて反応する。



 「その話詳しく聞かせて!今日の酒場のお代はもちろん払うにょ!」


 「お印様はもう地獄にはいないぞ、人間界に行って救われない人々を助けるために異世界案内所に行ったらしい、なんか訳ありで無認可の案内所を探してたぞ」


 「確か、人間界の慈善町って所に行くって言ってたな、俺また天使の癒しでリフレッシュしたいから人間界まで行ってお印様追っかけようかな」


 「ありゃ依存症になる前にやめんと心も金もすっからかんになるから気をつけんとな、確か人間界に行くお印様に数人信者がついて行ってたぞ」


 「 猫ちゃんもお印様の癒しには気をつけぇや、うん、まあそんな明るい顔してれば天使様の癒しは必要ないかな」


 「あ、はい、お話しありがとうございます!お約束通り酒場代お支払いさせていただきます!あっノフルさん、連絡しないとにょ」



 ココがメッセージを送るとノフルからすぐ折り返しの電話が入った。


 「ココさん!右翼見つかったって本当ですか!今人間界の慈善町にはイルさんとシークさんがいます。私もココさんと人間界に参ります合流しましょう!」


 ノフルとココは地獄で合流し異世界案内所から人間界に移動して霊力が温存できる今の白鳩と猫の姿にかわる。



 「そこでイルさんとシークさんを探してここまで探してきたんです」


 「右翼の亡者は地獄でお印様と呼ばれてたにょ、きっと人間界でもお印様ってワードがキーになってるはずにょ」


 「お印様?ってなんか聞いた事あるような」

 烈華が首を斜めに(かし)げる。


 「私、お印様は映画の仕事の関係でチラッと聞いた事あります。けどココさんの話の内容と時間軸がずれてますが」


 「多分それ亡者が生前の生活をなぞっているんじゃないか?」


 「よし、手がかりはあるみたいだしフランとココの依頼引き受けよう、いいかシーク」


 「私も何かお手伝いするよ!いいかな」

 「映画の関係者に確認してみますね」

 「れっくんもお印様思い出してみるね!」


 日向、炎蓮、烈華もノフルの右翼の捜索に加わる事となった。


 「私の為にみなさんありがとうございます」


白鳩姿のノフルは涙を大袈裟に流しながら喜ぶ。

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