4話 シークとリンコと地獄業火暗黒沼
「特典って言っても試供品や無料お試しレンタルがほとんどだったな、まあ無料の分は試すけどな」
「ねえ、イルこっちにも獄安協会の加盟店あるよ行ってみよ」
シークは年季の入った銭湯を指差す。地獄業火暗黒沼
と書かれている。
「俺はパス、濡れたくないんだ」
「面白そうだから私はついてくわ」
「じゃあねーちゃんと行ってくるね!」
シークはのれんをくぐりドアを引く
「はいいらっしゃい、子供1人500円ね」
白髪の背の高い鬼の老婆が番頭に腰掛ける。
「ばーちゃん、これ」
シークは鬼の老婆にBランクハンターのバッジを見せる。
「私はばーちゃんじゃないわ、リンコさんとお呼びなさいな、それはBランクのバッジね自分の魂とリンクさせてみな」
シークがバッジに意識を向けるとバッジがクルクル回りだし空中にBランクハンターの証明とハントの履歴が表示される。
「これでどう」
「本物のようだね、Bランクの試供品はこのミラクルジュースだよ、使用制限守ってのむんだよ」
「ありがとうリンコさん」
シークは入湯料の500円を払い脱衣所へ向い水着に着替える。銭湯の中は水着着用の為混浴になってる。
「わー!これが沼の銭湯か!」
お湯の成分は美容、湯治、と書かれている。
シークは体を洗ってから沼に浸かる。
「ぬるぬる気持ちいいー!」
シークは肩まで浸かりシークは鼻歌を歌う。
「名前をー教えてー可愛いーお顔ねー…」
シークが歌っていると突然色っぽい悲鳴が聞こえるのでシークは振り向く。
「キャー」「何!?何!?」
「どうなってるのこれ!」
「きたきたー」「ウホッ」
銭湯にいる鬼の女性に泥の塊が意識を持ったように不完全な人型になりクネクネと絡み付く、同時に数人の鬼の男性達にも泥は絡み付き皆はぁはぁ荒い息をたてている。
騒ぎを聞きつけた店主のリンコが慌ててやってくる。
「嬢ちゃんまだ無事みたいだね!この泥は亡者の魂の媒介になるからシャワーですぐ洗い落としなさい」
シークは急いで泥を洗い流し状況を見守る。
シークが見た感じEランクは泥のナメクジの様な体をDランクは泥で不完全な体を作っている。
「時々暗黒沼から湧き出た変態の亡者の魂が悪さをするんだよ、嬢ちゃんはハンターだったね、戦えるかい?」
「うん!それで俺はどうしたらいいの?」
「このホースのお湯で客に絡みついたドロを洗い落としてくれ、やつらはDランクとEランクだ、私はこの暗黒沼に居座るAランクの変態を探してしとめる」
「えっ!!Aランクがいるの!?」
「ただの変態だしこの暗黒沼からは離れないからちょろいもんさ、ただ透明人間だから見つけるのに苦労するんだがね」
リンコはそう言ってミラクルジュースを飲む、すると華奢な体がムキムキの筋肉質の体にり爪が刃物の様に鋭くのびる。
銭湯の中をドロの足跡だけがペタペタ歩きまわり、その方向から泥の塊がリンコとシークの方向へ飛んでくる。
シークにいくつかヒットする。
「ぎゃっ!クネクネして気持ち悪!」
リンコは場慣れしているのか泥をどんどん避けていき透明人間の亡者が居るはずの空中を爪で攻撃を連打すが攻撃は当たらない。
「ははん、今回は復活するのが遅かった分動きが早いね」
リンコはAランクの透明な亡者からの泥の攻撃をスルスルと避けていく。
「変態の攻撃なんかへなちょこもんだ、当たらんよ」
リンコは攻撃先からAランクの亡者の位置を割り出し反撃にでる。
「そこだね!」
が予想は外れてスカる。
リンコが戦う中シークがホースで客の泥を落としているとシークの体を透明人間の亡者が撫で回しにきた
「ぎゃ!?なんか、お尻と胸を触られたんだけど」
「まな板…」
シークの耳元ででボソっと亡者の声が聞こえた、シークは顔を真っ赤にして怒る。
「なんなだ!変態!」
なおも動きまわる透明人間の亡者にリンコは五感を研ぎ澄ませて空中を引っ掻く
「そこかい!」
引っ掻いた空中からドバッと泥がとびちる。
「嬢ちゃん目印の傷を作ったからそこにホースのお湯をぶち込みな!」
シークは透明人間の傷口にホースを差し込む透明人間の亡者も暴れまわるがシークもしがみつきお湯を流しこみつづける。
しばらくするとバーンと水が弾ける音と共に薄い泥水が雨の様に一面に飛び散りAランクの亡者の魂が床を転がっている。
変態のAランクの魂はリンコが回収し暗黒沼に投げ入れる。それとDランクとEランクの魂もどんどん拾い沼に投げ込む
「獄安協会に持っていかないの?」
シークが不思議そうに尋ねる。
「嬢ちゃんにはまだ早い話しだが、大人は皆この亡者目当てでくる客が多いのさ、魂はまた暗黒沼で体を作って貰って月に1度今回のように暴れてもらうんだよ、それでも最近は獄安協会の監視の目が厳しくてねすぐに亡者を魂だけにしないといけないんだよ、昔はもっと亡者のやりたい放題の銭湯だったんだがね」
「それ以外の時は?オンボロ銭湯なのに儲かってるの?」
「失礼な子だね、それ以外の日も美容と湯治が客に人気だし泥は子供にも好評だし客足は多いのさ、嬢ちゃんもまたいつでもきておくれよ」
「あぁ、そうそう亡者掃除手伝ってくれたお礼にミラクルジュース5本サービスしとくよ」
「ありがとうリンコさんまた来るね!」
シークは銭湯を出てイルと合流し、銭湯での出来事を話す。
「なるほどね、いくら美容と湯治に効く銭湯でも変態の亡者がでるなら俺ならお断りだわ」
イルは身震いする。
「俺はぬるぬる楽しかったからまた入りたいな!そうそう試供品で貰ったミラクルジュースって体に負担があるから18禁みたいなんだ、俺まだ飲めないからイル飲んでみる?」
「確か能力値がアップするドーピングみたいなものだったらしいな、頂戴しよう」
イルはシークからミラクルジュースを1本受け取りゴクゴクと飲み干す。
すると、イルの体のもじゃもじゃがバンっと爆発したように伸び絡まりタンポポの綿毛のような容貌になった。
「ふふふわたあめみたい」
「可愛い!防御力アップしたのかもねー」
イルは店のガラスに映った姿をみて呟いた。
「トリミングいかないとな」
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姉「あぁ、そういえば地獄業火暗黒沼ネットUPしてすぐ反応あったわよ少ないけど」
シーク「あっ、本当だ、閲覧数17かぁ」
イル「コメントもついてるな」
シークとイルは携帯端末を覗き込んでコメントをチェックする。
「あそこの地獄業火暗黒沼って銭湯行った事なかったんだがとんだ穴場だったんだな」
「行ってみたい…だが客の年齢層高めなのがな」
「シークちゃんかわいいな、妹になってくれないかな」
「前回の動画もみてみるか」
シークとイルはコメントに一通り目を通して2人は伸びをする。
「広告料稼ぐのもなかなか難しいな」
「シーク、妹になって差し上げたら毎日お小遣いもらえるんじゃないか?そんな楽そうな依頼こないかな」
「ふざけてんのかイル!!」
「俺は可愛い女子のレンタルぬいぐるみになりたい!」
「はぁ…可愛らしい女子なら俺が居るじゃん」
「俺はグラマラスな女子が好きなんだ」
「もじゃもじゃがモテるわけないだろう残念」
シークはふふふと笑いイルに背を向け歩き出す。
「俺は今は渋いなりだが昔は可愛いくて女子に人気だったんだぞ!」
その後を短い足のイルがテクテク追いかけ歩き出す。