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31話 日向と透き通る羽衣

「なんでイルだけ椅子に座ってくつろいどるんよ!あんたがキャンプしたいって言ったんでしょ!」


日向達は夏休みを利用し星の良く見える山頂付近のキャンプ場に来ている。日向と雪夜はテントの組み立て、炎蓮もできる範囲で2人を手伝っている。



「日向そう怒るな、雪夜と炎蓮を見ろ文句も言わずにせっせと仕事をしている。俺は炎蓮の警護をして忙しい、日向も見習え」


「日向、テントはもうすぐだから大丈夫俺にまかせて、イルさんと炎蓮ちゃんと近くの牧場に遊びに行っておいで」

雪夜が日向をなだめるように牧場行きを提案する。


「そうだな、雪夜のご厚意にあずかろう。日向、炎蓮行くぞ」


「もー!なんでイルが仕切るのよ、2人の面倒(めんどう)を任されたのは私よ、もー!勝手な行動しないでよ」


「日向、さっきからウシみたいにモーモーうるさいな、乳を(しぼ)られたいのか?(さら)せ俺が搾ってやろう…」


「ははは、イルさん、日向は赤ちゃんがいないから母乳はでないよ」

雪夜が答える。


「日向の珍味を味わいたかったんだがな残念だ、そうだ魔術で日向を雌牛めうしに…」


「むっーぅ」

日向は顔を真っ赤にしている。


「やめてイルさんに日向さん!喧嘩しないで楽しいキャンプにしたいの、イルさん日向さんに謝って下さい!」


「…日向、悪かったな」

「イルもういいわ、ごめん炎蓮、牧場行こっか」


「はい!」

炎蓮はニコッとして頷く。


「今日はキャンプもするが牧場にでる化け物退治の依頼もメインだから気をつけてな、俺も後で合流するから」

雪夜は3人の背中に声をかける。


「はーい」

「了解です」

「朝飯前だ」


日向、炎蓮、イルは牧場に向かう。3人は子牛の哺乳体験、搾乳体験、をし搾りたての牛乳を飲んだりした。


日向と炎蓮はアイスを食べながら牛や山羊(やぎ)に餌をあげて写真を撮ったりしている。イルは乗馬体験をしている。イルの乗ってる馬はフンをブリブリ落としている。


「ふふふ、イルの乗ってる馬うんちしてる、ウケるわー」

日向は笑いながらカメラをイルと馬に向ける。


「俺が乗ったからリラックスしたんだろう、脱糞行為はエクスタシーだからな」

イルは落ち着いて分析しているのに日向は「何それー」とまた笑っている。



「あそこの木に何か引っかかってる!」

炎蓮が牧場の外の木にひらひらした布の様なものが引っかかってるのを見つけ指差す。


日向と炎蓮は布の近くに行って見ることにした、イルも馬を降り後から2人を追いかける。


日向は木登りを試みるがズルズル滑り登れない。


イルが炎蓮を肩車し布を木から外す。布は重量に逆らい風も無いのに宙を舞っている様にみえる。


「雪夜さん遅いね、これなんだろマントかな?」


炎蓮はイルから降り日向と布を広げて4方に広げる。布は淡いピンクで桜の柄であり形は長い長方形で着物みたいに腕を通す穴がある。


「着物かな?でもなんでこんなにフワフワしてるんだろう」


「これもしかして天女の羽衣じゃないでしょうか!日向さん着てみてください!」


炎蓮が目を輝かせながら期待するので日向もワクワクしながら着物に袖を通す。帯がないのでおはしょりができない為着物の裾が地面に2mほどひこずる様になるが、着物は地には付かず宙を浮いている。


「わわわ、日向さん姿が消えてます」

炎蓮がキョロキョロしてるのが見える。


「えっ?」

と日向が思った時は風がブワッと渦巻き日向の体は花びらのように宙に舞飛びたとうとしていた。着物は鳥の羽の様に形を変えている。


日向が気づいた頃は上空にいた、しかも上手く飛べないし上空からの景色は怖すぎる。日向はバタバタすると着物が脱げてしまい落下してしまう。


あぁ、もうだめだ死ぬのか、と日向が思った瞬間気づいたら上空でイルにお姫様だっこの状態で助けられていた。着物が脱げて日向の姿が目視できたから助ける事ができたのだ。


「全く世話をやかせるな、日向降りるぞ」


「ありがとうイル」

日向はイルにお礼を言う。


日向はイルの首に両手を回し目を瞑る。体が密着しているためイルの体温と匂いがダイレクトに伝わってくる。いい匂いだし落ち着くなんだか心臓がドクドクと高鳴る高所のせいだろう。


「日向さん大丈夫ですか?怖かったですか?」

炎蓮の声が聞こえる。


「何してるんだ日向?地上だ俺から降りろ」

イルが地上に着いた事を日向に伝える。日向はゆっくり目を開けてイルから離れる。目の前には炎蓮と雪夜がいる


「えっ?!お兄ちゃんもいつからそこに?!これはそのイルとは何でもないから助けて貰っただけで…」

日向は顔を赤らめ何かを否定する。


「その割にはイルさんにずっと抱きついてたな、はははっまあ無事で良かった事情は炎蓮ちゃんから聞いてるよ日向」

雪夜ははははと笑っている。


主人がいなくなった着物いや羽衣という物か?それが上空から日向達の元にひらひら落ちてくる。


「しかしこの羽衣は牧場の家畜に被害を出してる依頼の化け物に関係あるのか?一応回収しておこう」


雪夜が羽衣を手に取ろうとすると羽衣はスルスルと手からすり抜け日向の前に浮かび停止する。


「えっ、この羽衣私がいいのかな?」


日向が手を差し出すと羽衣はゆっくり日向に自身を預ける。


天衣(てんい)に気に入られたようね」

いつのまにか黒いの羽衣を着た13歳くらいの少女がいる。羽衣で姿を消していた為見えなかったらしい。


「誰!?」


「私は桃鈴(とうりん)、貴女達が天女と呼ぶ種族よ、その天衣私の落としちゃった洗濯物なんだけど探してだんだけど貴女にあげるわ」


「えっ!いいのこんな高価そうな羽衣の着物じゃ無くて天衣だっけ、それに飛んだり消えたり私なんかに着こなせないよ」


「うん、大丈夫、天衣も貴女を気に入ってるらしいし私が使い方レクチャーするわ!それで代わりに貴女達にお願いがあるんだけど」


「なるほどな、初めからそのお願いが目当てらしいな」

イルが桃鈴に冷たい眼差しを向ける。


「いや、貴方達腕が立ちそうだったからつい、あっでも天衣が貴女を気に入ったのは事実よ!」


桃鈴は日向にすがるように目をウルウルさせる。


「話しだけでも聞こうか、俺たちにも協力出来るかもしれないし、牧場の被害にも何か関係あるかもしれんしな、桃鈴さんお願いって何があったのか話してごらん」



「ありがとうございます!はい実は私がこの辺りの温泉で(くつろ)いでいた時に私が乗って来たペットの牛、黒蘭(こくらん)がこの辺りで化け物に襲われそうになり逃げてしまい探しています。黒蘭がいなかったら私…」


「そうだったの化け物は私達が探してる奴と同じ奴かな」


その時山の茂みの中から黒い何かとそれを追う肌色の何かが5人のそばをかけ去っていく。肌色の何かは足を止めてくるりと向きを変えて日向達の方へ襲いかかって来る。


「黒蘭!今の黒蘭です!私追って行きます」

桃鈴は天衣を翼に変形させ黒い影を追う。


「牛を追ってるって事は家畜に被害だしてる鬼の化け物か?俺たちが相手してやろう」


雪夜と日向は体の一部を鬼人化させ戦闘態勢に入り戦う。



しばらくすると桃鈴が黒い牛の黒蘭を連れて日向の所に戻ってくる。桃鈴は肌色の化け物を横目で通り過ぎ


「皆さんありがとうございます。化け物が倒されて黒蘭も安心したようです。化け物もいなくなったしまたこの地の天然温泉に安心してこれます」


「いや、俺たちは化け物退治しただけで黒蘭の捜索はしていないしそれにその牛さんは桃鈴さんが居たから落ち着いたんだろう、よく可愛がってるんでしょうね、見つかって良かったですね」

雪夜は桃鈴にニコッと笑いかける。


「はい、黒蘭は私の宝です!ではありがとうございました、それで約束通り天衣の使い方をレクチャーしますそれで名前を聞いてもいいでしょうか?」


日向達は桃鈴に軽く自己紹介する。


「では日向さんやりましょう」


「はっはい!桃鈴さんお願いします」


イル達3人は木陰(こかげ)で日向の練習を見守る。


「イルさん、俺にもしもの事があったら妹を、日向を頼んでもいいか?対価は俺の命だ」


「何か訳ありか?」


「ああ…」


炎蓮はいつのまにか眠ってしまい雪夜とイルの会話は気づいたら話しは終わっていた。



しばらくしてレクチャーが終わったのか日向達が木陰でくつろぐ雪夜達の方に歩いてくる。


「日向さん天衣に選ばれただけあってきっと才能あります、もう少し練習すると自分の体の一部の様に動かせる様になりますから!では皆さんお元気で」


「はい!師匠頑張ります」


日向達は空中を駆け上る黒蘭に乗る桃鈴を見送る。



4人はバーベキューをしてテントに入り各々(おのおの)の時間を過ごす。日向と炎蓮は2人で1つのテント、雪夜とイルは1人で1つの別々のテントだ。


日向と炎蓮は本を読み時々話しながら夜を過ごす。


「日向さんはイル好き?」

炎蓮が話題を変えイルについて聞いてきた。


「うーん私は…」

どうなんだろうと日向は頭の中で自問自答する。私はイルを…



雪夜が日向と炎蓮のテントを訪ねて来て外から声をかける。


「今日は天気も良いし外で寝るか、星が凄く綺麗だぞ」


「えっ、いいの?お兄ちゃん」

「私も星見ながら寝たいです!是非!」

日向と炎蓮は目を輝かせやったーと両手を合わせている。


「ああ、イルさんにも声かけてくるよ」


4人はテントの外にシートを引き寝袋の中に入り空を見上げる。山頂にいる為たくさんの星が大きく光り輝いて綺麗に見える。


「天の川綺麗だね、七夕は過ぎたけど織姫様と彦星様会えたかな」


「うん、大丈夫っしょ」


「あっ流れ星だ!」


「また流れ星!」


流れ星は次から次へと空を駆け降りる。

4人はそれを見上げながらいつのまにか眠りに誘われて行く。

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