3話 シークとイルと星降るお花畑
カメラを入手しシークが姉を人間界に探しに行こうと決意した翌朝、宿屋でシークのまわりでカメラが喋り飛び回る。
「シーク、シーク、起きて朝だよ!」
「うーんー、ねーちゃんまだ…ん!?ねーちゃん!?
なんで!?どこにいるの!?」
シークはびっくりして飛び起きた。
「シークここよ!カメラカメラ、私は鬼だから魂のカケラをカメラに残せたの、まだ記憶は戻らないけど少しでもシークの力になりたいの」
「カメラも体だと思えば自由に動かせるわ!あとこのカメラ面白い機能みつけたの」
カメラの姉はシークのリュックに焦点を当て撮影するとリュックが消える、そして別の空間にカメラを向け再びボタンを動かすとリュックが現れる。
「わっワープしたの!?」
「このカメラ物を収納できる機能があるみたいなの!
使いこなせればかなり便利ね」
シークの頬を涙が伝った
「どうしたの!?シーク」
「いや、ねーちゃんとまた一緒に居られると思ったら嬉しくって」
シークは涙をぬぐった。
「…そうね」
「ねーちゃん絶対見つけてあげるから!」
「ふふっありがとうシーク、貴女といると元気がでるわ!」
シークは身支度を済ませイルと朝食をとり、カメラの中にいる姉の存在とカメラの収納機能を話した。
「なるほどなぁ、姉貴さんまた宜しくな」
「イルさんお久しぶりです!シークがいつもお世話になってます。宜しくお願いします」
「よし、じゃあ今日は酒場の依頼書も見てみるか、獄安協会には無い稼ぎの良い依頼があるかもしれんしな」
3人は宿屋を出て酒場へ入る、酒場は壁一面に依頼書が貼ってあり店主が依頼主と請負人の仲介を行なっている。獄安協会と同じ亡者の魂のハント依頼もあるが庭の草抜き、ペットの世話、イベントのスタッフ等の仕事もある。
「あっこれいいんじゃない?」
シークが依頼書を指差す。
「ふむ、オニノナミダ平原までの道中の亡者の魂をハントしながらの護衛になりそうだな、そうだな、まあまあいい報酬だしこれにしよう」
イルは依頼書をみながら頷く。
「ハントの撮影は私にまかせて」
シークの姉も初仕事にはりきる。
「おーい、親父さんこの依頼請負いたいんだが紹介頼む」
酒場の店主はシークとイルを見てあご髭を撫で首をひねる
「ああそれな、依頼人が特殊でなかなか請負人が決まらなくてな出発日は今日じゃないと間に合わないらしい、けどガキとぬいぐるみのもじゃもじゃだけで大丈夫か?一応依頼人に聞いてみるか?」
シークとイルは店主の言葉にムスッと苛立つが「はい、お願いします」とだけ伝える。
「お2人さんこっちにきてくれ」
酒場の店主はシークとイルを2階の宿屋の1室に案内した。
宿屋の店主はドアをノックする。
「おーい!ノフルさーん依頼を請負たいってお客さんが来たんだがどうするよ」
扉が少し開きフードを深くかぶった女性が扉の隙間から顔をのぞかせる。
「入って、話しは中で」
「じゃあ俺はこれで、話がまとまったらまた酒場の方で声をかけてくれ」
酒場の店主は1階に戻っていった。
シーク達はノフルの部屋に入る
「はじめましてノフルと言います。貴方達が護衛を引き受けてくれるのですか?」
「そうだ、ノフルさん依頼だがあんたをオニノナミダ平原まで往復で護衛すれば良いんだよな、途中の首はね森はちと危険だが少し迂回して抜ければ大丈夫だろう俺達に任せてくれ」
「護衛するのが私でも大丈夫でしょうか…」
ノルフはそう言ってフードとマントを外した。
シークとイルはノフルをみて口をあんぐりあけた。
ノルフは明るい天使の輪と天使の羽が生えている。
「天使じゃん…」
「これはこれは護衛は一仕事になりそうだ、なぜ地獄に」
「はい、実は上司のパワハラにあいまして、天国ではなく地獄の絶景をカメラに収めてこいと…それでオニノナミダ平原の星降るお花畑といわれる名所を取材しようとここまできました、ですが護衛予定の方が先払いした報酬だけ持って行って私をこの宿屋に残して去っていったのです」
「うん?ちょっとまてよ、ってことはモン無しなのか?」
「はい恥ずかしながら、ですが報酬は必ず後日お支払いします!どうかお願いです」
イルは少し考え込んでこう答えた
「なら血書契約をするか、これは俺の能力の契約方法なんだが契約を破ると契約どうり罰をうける事になる、今回は死んで体で払ってもらう天使の体は地獄で高値で取り引きできるしな、ノフルさんどうする?」
「…はい、それで大丈夫です。」
「よし、じゃあこれに契約内容と条件を書くからサインをたのむ」
イルは羊の皮の契約書を取り出し自分の血で契約の内容と条件を書きだす。
「期日はどうする?」
「無事撮影を終えてこの町に返ってから8日後のこの酒場でお願いできますか?」
「ok、8日後だな」
イルは契約書に8日後と書き加え自分のサインをした。
イルから契約書を受け取りノフルはサインをした、その直後ノフルはぞくっと寒気を感じた、ノフルまわりにイルの姿の黒い霧が現れノフルの口の中へ吸い込まれていく。
「契約成立だな!じゃあ早速出発するか!」
「はい!宜しくお願いします!あの…それでもし宜しければ護衛とガイドを兼ねて天国のテレビに出演してみませんか?もちろん報酬は上乗せさせて頂きます!」
「テレビ出れるの!?俺ら有名人じゃんでるでるー」
シークは喜んでノフルとイルをみる
「かっこよく撮ってくれよ」
イルも乗り気だ。
「じゃあカメラ回しますよ!編集は帰ってからしますので一通り撮影モードで撮らせて頂きますね」
ノフルは自力浮遊追跡型のカメラをONにした、
「私は今、地獄の絶景をリポートする為近くの宿場町サカズキ街まで来ています。現地までの護衛とガイドをしてくださる方をご紹介します!イルさんシークさん宜しくお願いします!」
「ヘッヘッへ」
「ギッギッギギッギッギ」
シークとイルは鬼のような形相で笑ってみせた。
「では出発しましょう!」
酒場の店主に契約成立の有無を伝え一同はオニノナミダ平原へ向かう。
「わー!?なんじゃこりゃ」
シークとイルは大量のFとEランクの亡者の魂をリュックのホースで吸い取りながら進む
Eランクの亡者は10cm〜20cm程の人間の不完全な姿で体ができる前の魂の核である、FランクもEランクも体は無くシーク達の体をすり抜けるだけである。
「私は今平原に向かう途中なんですが大量の地獄の亡者の魂に囲まれています!護衛の方がいなかったら私は一歩も動けません!」
ノフルはカメラに向かって喋りながら歩く
「やっぱり天使が一緒だと亡者の魂が救いを求めて群がってくるぜ、ノフルさん俺達から離れないようにFとEランクだけならいいんだが、問題はオニノナミダ平原に向かうには首はね森を横切らないといけない」
「首はね森ですか?危険な場所なんでしょうか?」
「あぁ、Bランクの亡者の魂がいるらしい、できれば避けていきたい」
首はね森に入りしばらくしたころ鬼の青年とCランクの化け物が絡み合いながら転がってきた、鬼の青年は体勢を整え化け物に刀を刺し殺し魂を抜き取る。
Cランクの見た目は虫や動物を媒体とした気持ち悪い亡者がうようよいるそうだ。
鬼の青年はシーク達に気づき近寄ってくる。
「ガキともじゃもじゃかと女か?この森にはBランクを筆頭にCランクの化け物がうようよいるピクニックは危険だぞ」
「私達はオニノナミダ平原まで取材に行きたいのですが…」
ノフルはフードを外す。
「あんた天使か!亡者の化け物どもは天使に救いを求めて群がる、ここで提案なんだがあんたら化け物のエサになってくれないか?そして俺が化け物の隙を突き攻撃で倒して金儲けする、あんた達は無事この森を抜けられる、どうだ?」
「むむ、俺達だって戦える馬鹿にすんな!」
「シーク今の俺たちじゃこの森のBランクとCランクを相手にするのは準備不足だ、この青年の言う通りハントは任せよう」
「決まりだな!それじゃあ作戦を説明する。」
一同は円陣を組み鬼の青年の作戦に耳を傾ける。
「ノフル大丈夫か?」
作戦を聞き終えた後イルはノフルに囮役は大丈夫か確認する。
「もちろん!撮影のだめです体はって作戦に協力します」
ノフルははねを広げ森の中を飛び回り化け物達の気を引く天使の存在に気づいたBランクCランクが化け物の群れを作りノフルを追いかける。
「ぎゃー!食べられちゃう!これ作戦の意味あるんですかー」
ノフルの声は森中に響く。
「よし、上手くBランクも釣れてるようだな、あとは罠の位置まで頼む」
今更首はね森にいるBランクは食肉植物を媒体として4mほどの人型4足歩行でからだは緑色で皮膚がなく筋肉と内臓が剥き出しで体から大きなタコの足のような食肉植物が生え襲ってくる。食肉植物は大きなキバと肉を溶かす酸を吐いてくる。
ノフルは天使の羽で飛び回り攻撃を回避しながら所定の位置まで化け物を誘き寄せ空中へ羽ばたき合図をおくる
「今です!」
ノフルの下がドッカーンと爆発し化け物達の体が飛び散るBランクも内臓が飛び出しているがまだ生きている。
「殺ったか?」
「いや、まだ残ってる」
BランクはCランクの生き残りと死骸を喰らい不完全な内臓むきだしの身体が多少再生し巨大化な人肉の塊のトンボのような形状になりノフルがいる空中へと飛び立つ。
「しまった、羽とは厄介だな」
鬼の青年は化け物が空中に飛び立つ瞬間しがみつき刀を突くが化け物はスピードを上げてノフルに迫る。
「イルどうする?作戦失敗したよ」
「そうだな」
「こんな物があるわ」
シークの姉がカメラからあるものを取り出した」
「これならもしかしたら…!」
シークは空に向かって叫ぶ
「ノフルさん!お兄さん化け物をこっちに誘導して!直前で避けて!」
「!はい!
「なるほどな!」
ノフルは下降し森の中に入る、ノフルを追いかける化け物が地上近くに来たとき鬼の青年は化け物の体から離れて地上へ転がる、そしてノフルはシークとイルが仕掛けた何本ものワイヤーの直前で方向転換しクルリと旋回する。
ワイヤーが化け物のつぎはぎの体を切り裂き肉片が飛び散る。
「今回の仕事の手柄は君達に取られたな、このBランクの魂持ってていいぜ」
鬼の青年はシークにBランクの魂を渡す。
「そうそう俺の名前はサクだ、お前らの名前は?」
「俺はシーク」「イルだ」「ノフルです」
「じゃあまたどこかでな!」
サクと別れ一同は首はね森を抜け夕刻オニノナミダ平原にたどり着いた。
「ここまで着けばFとEランクみたいに魂だけの存在は青い花の檻に吸収されるし、それ以外の体のある強力な亡者の化け物も近づけないから安全だ、時間まで休憩しよう」
「はーい!お弁当食べよ」
「私は撮影の準備と編集します!お弁当も頂きます!」
太陽が沈み星が輝きだす頃オニノナミダ平原のブルーの花が光り輝き空からはたくさんの星のような光りが降り注ぐ。
シークははしゃぎながら花畑を駆け回る
「わー!キラキラして綺麗ー!空の星がお花めがけて星が降ってくるみたい」
「久しぶりに見てもいい光景だな」
「皆さんみてくださいこれがオニノナミダ平原の星降るお花畑です。これは1年に1度天国からの魂が地獄の知り合い魂に会いにくるのを許された日なんですよ、ブルーの花の檻の中には地獄の面会希望の亡者の魂が閉じ込められていて、空から降ってくる光は天国の亡者の魂です。鬼も涙する光景なのでオニノナミダ平原と名がついたようです。」
ノフルの撮影は星降るお花畑といわれる絶景が終わりをつげる朝日が差し込むまで続けられた。シークとイルは野宿で一晩すごした。
撮影の帰り首はね森を抜けサカズキ街に一同はたどり着く。
「イルさんシークさんありがとうございます!おかげさまで有意義な取材ができました。報酬は必ずお支払いします」
「当然だ報酬待ってるからな」
「気をつけて帰れよ」
「はい、ではまた後日」
と言ってノフルは天国へ急ぎ帰っていった。
「私の方も撮影バッチリよ!編集してネットで動画公開するわね!」
シークの姉が張り切る。
「ねーちゃんめっちゃ空気だったな」
「そうね、あの天使さんには正体明かさない方がいいと思って、正体しられたら絶対いじくりまわされるわ」
「まあ用心する事にこしたことはないな、カメラの姉貴さんの事は当面の間は俺達だけの秘密にしとこう」
「そうなるとこの3人以外の人気があるばしょでは話せないわけか、ちょっと寂しな」
「ネットテレビ電話って設定はどうかしら、それなら堂々と話せるわ」
「ねーちゃんアッタマいい〜!それでいこ!」
「確かにいい方法だ!ナイス姉貴さん」
「ふふ、案が採用されて良かったわ」
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2人は獄安協会に入り亡者の魂を換金する、
「地獄行きEランク352と、Fランク2172でございますね、…!あとこれはBランクお1つでございますね!報酬はこちらになります。それと今回Bランクのハントの成功報酬としてこのバッジを贈呈致します。Bランクハンターとして獄安協会や加盟店で様々な特典がございます。またのご活躍期待しております。」
シークとイルは報酬とバッジを受け取り地獄治安安全協会を出る
「俺達もとうとうBランクハンターか」
「イル、Bランクハンター特典探しに加盟店回ってみようよ!」
「そうだな!よし行こう!」