26話 日向と鬼人化
止水は慈善神社から声魂姫神社と名を変えた神社に残り儀式中断の後処理と神社の氏神を交代させる為と破滅型転生者を綺羅良姫の加護を受けさせる為関係各所に連絡を繋いでいる。
同日11時半ごろ一同は帰り途中立ち寄ったスーパーでお弁当を買い清流の実家の道場がある日本家屋に移動しシーク、清流、宮、月兎飛、蒼太、烈華、奏恵、晴緑、小春、泰徳はお弁当を食べながらイルの話しを聞く為に一室に集まる。仁和は別室で小川家のお手伝いさんが看護をしている。
「私も居ていいの?」
と奏恵が緊張しながら尋ねる。
「いいぜ!気にすんな」
シークが答え他の皆も頷く。
「はい、有難うございます」
イルは真面目そうな口調で口を開く。
「これから話す事は俺の記憶と日向や他者から聞いたものだ、シークの探している姉の炎蓮にも繋がる話しだ」
「そうだなこれはシークが生まれる前、今から約15年前の話しだ日向から聞いた話しから話そう」
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ここから15年前御ニ日向の物語になります。
昼間、化け物と戦う二人の鬼がいる。鬼と言っても元は人間であり鬼の血を引いている家系で鬼人化と言っても体の強化したい一部である。それに今の地獄の鬼とは違い鬼の先祖の様な荒々しい様相である。
化け物は巨大な蛇の体に人間の頭がついている。傍らには化け物の卵がいくつかあるがほとんど生まれないまま潰されている。が、無事な卵も残っており新たな化け物が生まれ出て逃走する。
「日向!逃げたのを頼む!」
両手に呉鉤剣を持った鬼人が巨大な化け物と戦いつつ妹に指示をだす。
「はい!雪夜兄さん」
刀を持った一回り小さな鬼が逃げた化け物を追いかける。
日向は木々の生い茂る公園で化け物を見失う。
「どこに…」
「うっうぇっえっんん」
子供の泣き声が公園のトイレからする。
「まさか子供を人質に」
日向はトイレに向かい子供の無事を確認する。
「どうしたの?もう大丈夫よ」
「ありがとうお姉さん」
子供は笑顔で日向を抱きしめようと近寄る。
「良かった」
日向は笑顔で持ってた刀で子供の腹を切り捨てる。
「何で…僕はただ普通に生きたかっただけなのに」
子供は血を吐き姿を頭以外を蛇にと変わり息絶える。
「貴方の普通は人を喰らうこと、生かしてはおけない」
「貴方の失敗は子供でありながら鬼の姿である私を怖がらなかった事」日向は子供の化け物の亡骸を眺めつぶやく。
「日向無事か?こいつらは卑劣気周りない騙されない様にな」
巨大な化け物を倒して返り血だらけの兄雪夜が妹の日向を迎えにきた。
「うん、わかってるよ雪夜兄さん」
二人は鬼の姿から人間の姿へと戻る。
これが私、言の葉神社で綺羅良姫の加護を貰い鬼の力を制御できるようになってからの御ニ日向の鬼人として初めての化け物退治である。
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日向が綺羅良の加護を受けたのは数日前、唯一の肉親兄の雪夜に言の葉神社に連れてこられてそこで綺羅良姫と出会い加護を受けた。
「御ニ家は綺羅良姫の加護をもらっている為破滅型は居ない」
「なんで?何で御ニ家だけ特別なの?何で鬼の力を制御出来る加護をもつ言の葉神社の綺羅良姫様を皆んなから隠しているの?」
「それはまだ日向がもう少し大人になったら話すよ」
「何よ私はもう高校3年生よ!充分お・と・な!」
日向はぶーっとむくれる。
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時は日向が鬼人として初めて化け物退治をした後日、高校3年の一学期がはじまりお昼休憩。日向は友人の伊藤楽成と福原恵とお弁当を囲んでる。
「ねえ、日向は進路どうするの?」
楽成が日向に尋ねる。
「私は警察の陰陽師の戦闘員かな、家の親もう死んじゃっていないでしょ、お兄ちゃんだけだと心配だし私も助けになりたいから」
「健気だねー、日向は、他にやりたい事とか夢とかないの?」
恵が日向に尋ねる。
「そうゆー恵と楽成はどうなのよ、何かやりたい事とかあるの?」
「私は早くお嫁さんになって素敵な家庭を持ちたいって夢があよ!料理の腕前上げたいからとりあえず調理師とか栄養士の勉強する為に専門学校に進学する予定よ」
恵が答える。
「私は医大で勉強して鬼人化破滅型転生者を救う研究をしたいと思ってる」
「そっかー2人とも考えてるんだね、じゃあ私はただの陰陽師じゃなくて正義の味方になる!」
「ふふっ」
「いーんじゃない、ヒーロー」
恵と楽成はくすくす笑う。
「もー2人とも笑わないでよ、ひっどーいー」
翌朝、日向が登校前食事をとりながらニュースを見ていると慈善町で鬼人化した化け物の連続殺人の映像が流れていた。鬼人化すると人間としての理性はなくなり人を食う化け物に成り果てる。ニュースの鬼人は姿を眩ませているようで警察と陰陽師が捜索しているらしい。
「俺も今仕事でこいつ探してるんだ、日向も何かあったらすぐ連絡しろよすぐ行くから、じゃ行ってきます」雪夜は警察の陰陽師部門で働いている。
「うん、わかったお兄ちゃん、いってらっしゃい」
日向も登校の準備をすまし学校から同じ方向に家がある恵を待つ。少し待つとインターホンがなり恵がおはよーとやってくる。
「おはよー日向」
「おはよう恵、腕どうしたの?日焼け対策?」
恵はいつもはつけてない手袋をつけている。
「あ、ちょっと化粧品でかぶれちゃって…薬塗ってるの、ベタベタしないように」
「ふーん、早く良くなるといいね、」
恵は何か考えこむよう俯き首を横にふる。
「う、うんん、日向にはやっぱ本当の事話す!」
恵は手袋を外しハイソックスも下ろす。鬼人化が始まっている。
「えっ!鬼人化?人間の意識は大丈夫なの?」
「それが意識が無い事が数回あって…まだ家族にも内緒なんだどうしよう」
2人は話しながら作業が開始していない大きなビルの建築現場の前を横切る。
ガラガラガッシャーンッと頭上から建築資材が2人の上から落ちてくる。
日向は恵を安全な方向へ突き飛ばし自身も安全な後方へのけぞる。
「失敗したか、まあいいすぐ食ってやろう」
化け物が上から日向の前に飛び降りてきた。
「残念だったわね、私陰陽師なの、貴方なんかイチコロよ」
日向は兄を呼び出す為スマホで合図を送る。
「熱炎の炎で焼き切ってあげるわ」
日向は鬼人化する事なく刀を取り出し自身の能力である火のちからを刀にまとわりつける。
日向は化け物に向かって跳躍し化け物に何度も斬りかかるがひょろっと避けられる。
「陰陽師の小娘の肉か、柔らかくて美味そうだな」
化け物は日向の足を引っ掛け転ばせる。日向は地面をゴロゴロ転がる体がいたくすぐに起き上がれない。
「うぐ、恵の前で鬼人化したく無いけど…」
「ひひっ、弱すぎる、さあどっちから食べようかな」
化け物は日向に近づく。
「…鬼人化するか」
日向が鬼人化するか考えていると化け物の背後から恵が落ちていた大きな鉄柱を化け物の頭上に叩きつけ鈍い音がした。鬼人化すると身体能力が上がり恵でも重い鉄柱を持ち上げる事ができたのだ。
「助けに来たよ日向!」
鬼人化が更に進行した恵が日向を助けに来た、どうにか人間としての意識を取り戻しているようだが苦しそうだ。
恵は化け物の腹を爪でえぐりないそをぶちまけ喉元に噛みつき食いちぎると連続殺人の化け物は息絶える。
「日向ごめん、私…人としての意識を保つの限界…私を殺して…お願い」
恵は意識が混乱し日向に襲いかかる。
「ごめん恵…」
日向は目をつぶり刀で切ろうとしたが友達を手にかける事はやはり出来なかった。
「いいの日向、日向を傷つけなくて良かった…私を人のまま殺して」
「苦しかったな、今楽にしてやろう」
雪夜が現れる恵の心臓を後ろから呉鉤で突き刺す。
「日向思い出をありがとう、楽しかったよ…日向ならきっと立派な正義の味方になれるから、応援してる…」
恵はそう言い残し眠るように意識を失った。
「お兄ちゃん、私陰陽師として失格かな…」
日向は泣きじゃくりながら決意を決める。
「ああ、時には優しさは命取りになる、だが助かる方法も無いこともない」
日向は恵の頬を撫でる、微かに上下に呼吸をするよう動いている。日向は恵の口元に耳をあてて呼吸を確かめる。
「あれっ?恵まだ生きてる!どうしてお兄ちゃん?」
「そうだな、悪い物だけ切り取った。その子はまだ生きてる綺羅良姫様に加護を貰えば人間として助かるはずだ、日向の友達だから特別だぞ、だが他の陰陽師には気づかれないように気をつけような」
「ありがとうお兄ちゃん」
3人の元へパトカーと救急車が音もなく停車し医師と救急隊員が担架を押して現れる。近くの住人が呼んだようだ。
「御ニ雪夜さん、その娘をどうするつもりで?鬼人化破滅型転生者は我々の病院で引き取って治療をするのが筋です、貴方になにができる?」
医師が雪夜に問いかける
「でき…」
「わかった彼女を貴方達にたくします」
日向が出来ると言いかけるのを雪夜がわかったとさえぎった。
綺羅良姫の元へ連れて行けば大丈夫だと言ったのは雪夜である。何の事情があり隠してるのかは分からないが日向も兄にしたがう事にした。恵は病院で治療すると大丈夫だと。
「はい、勿論です、では」
医師は一礼し恵は担架に乗せられ救急車で運ばれていく。
それから日向は数日学校を休み恵のいない学校へ行く。恵は死んだとは聞かない欠席扱いのようだ、少し安心する。
休憩時間、青い顔をした日向に楽成が心配そうに話しかけてくる。
「あっ、日向どうしたの?体調悪かったの?顔青いよ」
「うん、ここじゃ言えない、今日家これる?」
「うん、大丈夫だけど、恵も来てないし日向も無理しないでね、体調悪かったら保健室だよ」
授業が終わり日向の家で楽成は恵が鬼人化破滅型転生者になり病院に連れて行かれたと聞く。
「そうだったの、日向貴方だけでも無事で良かった」
と楽成は日向を抱きしめる。
「楽成、私もっと強くなって皆んなを助けだす正義の味方になるから、頑張るから…恵を助けられなくてごめんなさい…」




