17話 烈華と言の葉神社
烈華とイルが話していると烈華の部屋にいる3人の幽霊が烈華に話かけてくる。
「帰りたい…帰りたい…」
サラリーマン風の男
「ねえ、貴女見えてるんでしょ」
ギャル
「お札を返しなさい」
老婆
幽霊は女性2人と男性1人だ3人とも死装束と呼ばれる白衣ではなく、現代風の格好をしている。
「あっ、そうだった家内安全のお札とお賽銭!神社に謝ってこんと!何かあの神社怖かったから…イルも一緒に来てくれん」
「どこの神社だ?氏神神社か?」
「氏神神社って何?私が行ったのは名前も知らない遠くの神社なんじゃけど、昨日行ったから場所はおぼえとるよ」
「氏神神社ってのは自宅から最も近い神社の事で神社のある地域に住む人々を守る存在なんだ。ちゃんと挨拶行ってるか?って俺が言うのもへんか、それで名前も知らない遠くの神社って何か失礼な事でもしたのか?」
「…近くの神社あるけどまだ行った事ない」
烈華は昨日の神社での出来事イルにを話す。
「そうか、視線を感じたって事はその幽霊の3人はその神社から着いて来た可能性もあるな、お札を返せって婆さんが行ってるし、その遠くの神社に行ってみるか」
「ありがとうイル」
「問題はイルは原付乗れないんだけど…」
「リュックと大きめなぬいぐるみはあるか?俺はそれに入ろう」
「?」
烈華はリュックから顔がはみ出るほどのぬいぐるみを背負い犬のイルとともに2階から降り玄関に向かう。
「ちょっとイルと一緒に買い物と散歩行ってくる」
「はーい、行ってらっしゃい」
「気をつけるんよー」
烈華は原付にまたがりエンジンをかける。
「入るってこのウサギのぬいぐるみに憑依するって事だよね」
「そうだ」とイルは言い犬の姿は光に姿を変えウサギのぬいぐるみに吸い込まれていく。ウサギのぬいぐるみは髭を生やしシルクハットとステッキを持っている。
「まあまあの感じだな」
イルがリュックの中でモゴモゴ動く
「きゃう!本当に憑依した!イル可愛い!じゃあ出発」
2時間ほど原付を走らせ遠くの神社に辿りつく言の葉神社と言う名前だった。
イルは犬の姿に戻っている。
「ここ、言の葉神社って名前だったんだ」
鳥居をくぐるまえから数人の幽霊の視線を感じる。辺りにはピンクの風船みたいな球体やモヤが霧みたいにかかっている。
「…幽霊さんいっぱいいるんだけど」
「今はオレがいるから大丈夫だ、あとピンクの球体には触れんようにな、良くないもんだ」
烈華はいつものように鳥居をくぐる前に一礼し、参道は端を歩き手水舎で手と口を清めて拝殿に行き鈴を鳴らしお賽銭を入れ二礼二拍手一礼をする。
「昨日はごめんなさいでした!許してください、お札もお返しします」
「もういいのよ、そのお札は持っておきなさい」
烈華に取り憑いていた老婆がそっと言い烈華から離れて行く。
「言葉には気をつけるようにな」
「…」
ギャルとサラリーマン風の男が烈華から離れていく。
「はぁ、離れてくれたーよかった」
烈華は昨日は写真だけ撮って読まなかった碑文を見つけ読んでみる。
「言の葉神社ってどんな所なんだろう」
碑文にはこう書かれていた。言の葉神社は泣き鬼ノ姫閻魔が祀られており言霊を現実にする力を持ち願い事が叶うとされている。
「烈華は不動明王生き霊返しを何度も唱えたんだよなそれに加え言の葉神社の言霊を現実にする力、烈華に取り憑いていた悪い生き霊と良い生き霊を飛ばしてた人にも影響がでてるだろうな」
「えっ!悪い生き霊には復讐したいけど良い生き霊はどうなったん?」
「さあてな、だが烈華から良い生き霊が離れた影響で烈華を守る存在が弱まって俺を含めて色んなのが取り憑いてしまったんだろうな」
「俺と契約できたほどだ烈華は元々霊能力の素質があったんだろうな、それが何かのきっかけで力が開花した」
「ならテレビや漫画でやってるような能力をれっくんも使えるって事?」
「ああ、試してみるか?烈華は言の葉神社の泣き鬼ノ姫閻魔に気に入られたようだから言霊の力が長けているはずだ、ネガティブな言葉には気をつけろよ」
そう言ってイルは本殿の屋根の上を見上げる。烈華もイルの視線の先を追いかける。20代前半くらいのおでこから2本の角の生えた着物姿の綺麗な女性が座っている。
「わ、わ、わ、神様?!」
「お主、わらわが見えるのかえ、言の葉神社に辿りつけた人間も何十年ぶりだろうな、縁者なのだろうな、ますます気に入った地獄に来た時はもてなそうぞ」
「え?!地獄、え、あの、その私、天国の方が…いいかなーなんて」
「地獄も良い所だぜ」
イルは意地悪そうに笑う。
「早速だが烈華とやらピンクの球体とモヤをは払ってはくれぬか?これは良くないものでな、わらわの力では払えんのよ、生きてる人間の力が必要じゃ」
「払うってどうやって?!」
烈華は泣き鬼ノ姫閻魔とイルの顔を交互にみる。
「ピンクのモヤが晴れるよう心に思うまま言葉にするとええ」
「わかった」
烈華は目を瞑り心のまま口を開く。
「ピンク色は嫌いなんじゃー!さっさと消えて綺麗な青空と境内みせろやー!!」
烈華は大声で叫ぶ。とピンクのモヤも球体も消える。
「おや、ずいぶんと威勢の良い事、霧も球体も綺麗に消えてしもうた、あっぱれじゃな」
「昨日烈華が来た時わらわも家まで着いて行こうとしたんじゃがな、そなたの住んでる地域はわらわの管轄外じゃけぇ行けれんし力も届かんでのぅ、真言を覚えるよう勧める多少わらわの力も加わるじゃろう」
「真言って何?」
「フェイスノートで真言を送ろう、わらわと友達になろうぞ」
「フェイスノートって何?携帯電話の?私友達いないから使ってないよ、使い方しらんし、ってか神様もフェイスノート使ってるの?!」
「いや、泣き鬼ノ姫閻魔さまが言ってるのは霊能力者専用の回線の事だ、烈華が想像してる携帯電話の方とは違う」
烈華は泣き鬼ノ姫閻魔とイルに霊能力者回線の方のフェイスノートの使い方のレクチャーを受け連絡先を交換する。
「へー霊能力ってこんな便利なんだ!宙に描けるスマホみたい!」
烈華は宙に指を動かしメッセージを開く。
「あっ、真言ってこれね!あ、でも名前が?」
「烈華は友達じゃわらわの事は綺羅良と呼ぶがええ」
「ありがとうキララちゃん」
「イルは何か難しい名前ね」
「わらわは付き合いが苦手での烈華が住んどる地区の氏神とは付き合いがないんよ、どんな奴かしらんが良いやつそうなら宜しく言っといてくれんかの」
「あはは、れっくんもキララとおんなじで付き合い苦手なんだ…お互い頑張ろうね」
「そうだな氏神神社にも挨拶に行った方が良いいかもな、今日はもう日がくれそうだから明日の午前中が良いかもな」
「そういえば13歳くらいの鬼の女の子を見かけませんでしたか?俺の連れなんだが、フェイスノートに俺の記憶動画を添付しときますので見かけたらご連絡下さい」
「そうだよなー匂いだけで探そとか無理ありすぎだし、って記憶画像とかも可能なの?すっごいハイテクじゃん」
キララと烈華はイルから送れられた動画を確認する。両側頭部から渦巻き状の角が生えた鬼の少女が動画の中を動きまわる。
「わー、鬼っているんだ」
「見かけん魂じゃのう、わらわの管轄地区の幽霊どもにも見かけたら知らせるよう通達を出しておこう」
「泣き鬼ノ姫閻魔様ご協力感謝します」
「そなたもわらわの名を呼ぶ時はキララ姫様と呼ぶがええ、泣き鬼ノ姫とか弱そうな名で呼ばれるのは本位では無いんじゃ」
「では改めてキララ姫様感謝します。」
烈華とイルは夕日の中原付で烈華の家を目指し帰る。
「ねえ、イルとさっきの鬼の女の子どういう関係なの?」
「そうだな、家族だな、慈善町で3ヶ月前に行方が分からなくなって探しているんだ」
「そっかー早く見つかるといいね、顔もわかったしキララちゃんも協力してくれるし良かったじゃん」
「顔は変身して変わってるかも知れんからあまり当てにならんかもしれんな、匂いとか魂の形とかで見分けないと」
「なんだそりゃ、れっくんお役に立てそうですかね」
「どうだろうな…だが能力が開花している烈華と行動出来ることは心強いな」
「そこまで言ってくれるか嬉しい!今日はステーキ奢るよ!」
「烈華は金なしニートだろ無理すんな、霊脈の血だけで十分だ」
「むー、何それ、れっくんだって少しくらい少しくらい貯金あるよ、少しだけど…」
烈火は小声でモゴモゴ言いむくれる。
「気持ちだけうけとるよ、宜しくな」
途中すれ違う車や人が烈華をみて大声で独り言を話している危ない奴だと振り返るが烈華はそれに気づかず時速30キロのスピードで家路に向かう。




