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11話 シークとイルと虹掛かる河原のお茶会

シークとイルは河原が見える丘で鬼豪族のお茶会の護衛をしている。


「しかし、鬼豪族様はこんなの見て何が楽しいんだろうな」


「あぁ、見るにたえない趣味だな」


河原では、鬼が人間の子供の亡者が積み上げた石を棍棒や手足で蹴り飛ばしている。人間の子供の亡者は皆泣き叫んでいる。



それを丘の上から鬼豪族のシークと同い年くらいの若い娘3人がきゃっきゃっと楽しそうにお茶会をしながら見物している。


シーク達の方にも娘達の話し声が聞こえくる。


「今日もあれやろうよ!」

「ぷっぷっぷっ、良いストレス解消になるのよね」

「いいけど2対1で勝負するの?それか1人審?」

「そうねー」

キョロキョロする鬼豪族の娘とシークは目が合った。


「貴方丁度良いわ!こっちに来なさい」

鬼豪族の娘がシークに手招きをする。


「貴方名前は?」


「シークです」


「そう、シーク貴方は私達と背格好も同じくらいだし一緒に遊びを手伝って欲しいの、私の事はミナとよんで」

「私はリム」

「オルエよ、よろしく」


「いや、俺ただの護衛だし一緒に遊ぶなんて恐れ多いです」


「護衛なら貴方意外にも屈強そうなのがいっぱいいるわ、それにこのゲームに参加するなら相応の報酬はだすわよ」


「ハクシマ、シークさんに報酬の追加を!」


「かしこまりましたお嬢様」


ハクシマと呼ばれた従者はシークに電卓を見せ報酬の確認をする。


「シーク様、これほどでいかがでしょうか?」

「ははは、わかったよOK」

シークは苦笑いをしてうなずいた。


「で、俺は何をすれば良いんだ?」

シークはミナに尋ねる。


「そうね!説明するから着いてきて」



鬼豪族の娘達は人間の子供の亡者が石積みをする河原に降りて行くのでシークも着いていく。


ミナは河原の鬼に話しかける

「貴方達お仕事ご苦労様、今からいつもの遊びをするから少し休息におはいりなさいな」


「あぁ、ミナ嬢俺たちは観戦させてもらうよ、みんなー!休憩だ!」

河原の鬼は各々《おのおの》休憩に入る。


「2対2に別れてここからスタートして石積みを崩して行くゲームよ多く石を崩した方が勝ち、道具は何を使用してもOKよ」


「…あっ、俺やっぱ辞退させてもらいます。」


「どうしたの急に?報酬が不満だったのならもっ…」


「俺こんな悪趣味な遊びできません!」

シークは真面目な顔でミナに訴える。


「いまさら?」

ミナは苦笑いして意地悪そうにシークに詰め寄る。

「いいこと?ここの河原の人間の亡者は罪を償うため刑を科せられているの、そして私達鬼は彼らを裁く権利があるの」


「だけどまだ子供じゃ…」


「そうね、けどここの亡者達は全員が悪だと思いなさい、哀れみなんて抱かないことね、心の隙に入り込まれるわ」


「貴方も私達と同族の鬼ならわかるでしょ、地獄にいる人間の亡者は等しく地獄の腐敗の原因なのよ」



「まぁいいわ!私達でお手本見せてあげるからシークさんはそこで見てて」


ミナ、リム、オルエはじゃんけんをして、オルエは審判、ミナとリムの対戦がはじまる。ミナとオルエは自分の背と同じくらいの棍棒を持ちスタートの位置へつく。


「持ち時間は1分、位置についてよーいスタート!」

オルエが手を振り上げる。


ミナとリムは近くの石積みから棍棒や足蹴りで崩していく、亡者の子供は泣き叫んでいく。


「今日こそは負けないわよリムみてなさい」


「ふふふっミナ頑張って!」


「むっ!バカにしたな」


「ふふふっそこ貰ったわ」


シークはリムの吹き飛ばした石を避ける時後ずさりし近くにいた子供の亡者の石積みに倒れ込み石を崩してしまった。


「うばぁー」

子供の亡者は泣き叫ぶ。


「あっ、ごめんそんなつもりじゃなかったんだ」


「石積み手伝うから泣かないで」

シークは石を積みはじめるとかつて亡者が人間の生前だった頃の感情が流れこんでくる。


「あれ、俺この子のママだっけ…」

シークは記憶があやふやになり子供の亡者に手を伸ばす。


「マァマァー」

人間の亡者の子供がシークに絡みつく、


「坊やもう安心よ、ママは坊やといつまでも一緒にいるから」シークは子供の亡者をあやす。


「シークさん!危ない!」

シークの異変に気付いたミナが棍棒で亡者の子供をはらいのける。


「シークさん!気を確かに!さっきも言ったでしょ亡者は心の隙間に入ってくるって!」

覇気のない顔のシークにミナは平手打ちをする。


「はっ!俺どうしたんだろ」


まったく、分かったわ、シークさんには私達の遊びは向いてないようね」


「そうね、今日はお茶とお菓子で締めましょ、シークさん貴方の話聞かせてよ」


「こんな真面目そうな子のお話なんて面白いのかしら」


シークとミナ達は丘の上に戻りお茶会を再開する。


「シークさん私達の護衛をしてるってことはハンターなのよね、ランクは?」


「Bランクです」


「シークさんがBランクのハンターなら私はAランクとか余裕でなれるわ」


「なら私はSランクね」


(俺バカにされてるのか…)とシークは感じたが声には出さなかった。


お茶会を再開し話に花を咲かせているてと、青空から虹の橋が河原にかかり地蔵菩薩が降りてくる。その場に居合わせた者達から歓声が上がる。


「わー!綺麗な虹の橋」


地蔵菩薩様じぞうぼさつさまだわ!人間の亡者の子供達を救済しにきたのね、私もはじめて見るわ」


「何人連れて行くのかしら」


シーク達は子供の亡者と地蔵菩薩を見守る。


「ここみたいな河原は地獄にはいくつもあるけど、シークさん地蔵菩薩様を見られるって幸運な事なのよ」


「そうだ、虹と地蔵菩薩様をバックに私達と写真を撮りましょ!」


「ハクシマ、写真お願い」


シークとミナ、リム、オルエはハクシマにカメラをわたし撮影を楽しむ、シークはクールな表情を崩さない。


「では俺は護衛の方へそろそろ戻ります」

「あらそうなのね、もっとお話聞かせ欲しかったんだけど」

「本日はお茶会にお招き頂きありがとうございました。」



シークは鬼豪族達に一礼をし護衛の持ち場のイルの居る場所に戻って行く。



「どうした、シーク浮かない顔してなんか鬼豪族達に何かいわれたのか?」


「そうだな、らしくないよな、人間の子供の亡者見てたら昔の事思い出しちゃって正義づらかましちまったんだったがお角違いだったぜ」


「まあ、稼ぐにも仕事を選ばないとな」


「あぁ、だが地蔵菩薩様はラッキーだったな」


虹を見上げるとちょうど地蔵菩薩が子供の亡者を連れ3人連れて虹の橋を渡ってるところで河原にはまだまだ子供の亡者が残って泣きわめいている。


「地蔵菩薩様、子供の亡者3人だけしか連れていかなかったな、鬼豪族の娘達はこれからも変わりなくあのお遊びをつづけるんだろうな」



「そうだな、地獄にはここと同じような場所は無数にあるあの娘達のほかにもまた別の場所でここと同じような事をしてるはずだがシークにはまだ難しいかもしれんがこれは必要悪なんだ」


「そうか…」


シークとイルは地蔵菩薩達を見送る。

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