1話 シークとイルと血だまり池
ここは地獄の鬼の住人が住まう世界。
深夜にほのかに明るい松明を掲げる3人の影が血だまり池という血の池のほとりで釣りを始める。
「へっへっ夜にくればこの血だまり池の亡者もいちころだろ」
屈強そうな鬼の男が笑いながら釣竿を動かす。
地獄の鬼と言っても人間の容姿に近い、人間と違うのはおでこから生えてる角と身体能力くらいだ。
「そうね、けどもうすぐ被害者がでてる夜明けよやばくない?今日は引き返さない」
グラマーな鬼の女が心配そうに時計を眺める。
「大丈夫だって、俺らBランクハンターじゃん、Cランク亡者とか朝飯前だって!っとヒットだ!」
太った鬼の男が釣竿を巻く。
とたん3人の足元から太くて赤いミミズの様な触手が伸び絡まる。
「わっ!なんだこのミミズ聞いて無いぞ!」
3人は装備している刃物でミミズを切るがミミズは切っても切ってもどんどん体に巻きついてくる。
「もうすぐ夜明けよ!だから言ったじゃない今日は帰ろうって!ばか!!」
3人はミミズの管が体のあちこちにに噛みつき穴を開けられる血を吸われ意識が無くなる。そしてミミズが池に3人を引きずり込み夜明けを迎える。残るのは釣竿と荷物だけだ。
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数日後、深夜の血溜まり池に鬼の少女と背の高いもじゃもじゃが亡者のハントにやってくる。
「今日はこの血だまり池にいる亡者を引っ張りだすぞ」
鬼の少女の影がよしっやってやるとばかりに意気込む。
「ギッギッギ、今日は何体捕獲しますかね」
背の高いもじゃもじゃの影が笑いながら釣竿の釣り糸をなげる。
「だがシーク何故わざわざ夜に来るんだ?昼間でも大丈夫だろ」
シルクハットを被った2m50cm程程の毛むくじゃらのぬいぐるみの様な影が問いかける。
「イル依頼書よんでないのか?この血だまり池は昼間は灼熱なんだ、だからここでの亡者釣りは夜って相場が決まってる。」
問いかけに側頭部に巻き角と羽が生えた13歳くらいの少女の声が答える。
「イル、それに亡者の魂は普通の釣り餌じゃつれない、この天使の作る釣り餌を使うこれは救済を求める地獄の亡者に安らぎを与えるんだ、それとランクの低い亡者にはこの特殊な松明を使うんだ」
そう言って少女の影は血だまり池に釣竿を設置し松明を照らす、すると亡者の魂が光によってくるこれは特殊な松明で安価な品物である。
「で、この網ですくって、イルいつもの様にリュックのホースで亡者の魂を吸い込んで捕獲頼む」
「おお、シーク俺様に任せとけ」
光で近くに集まった亡者の魂はシークが特殊な網ですくい上げ、イルが大きなリュックからホースを伸ばし亡者の魂を吸い込んでいく。リュックは亡者の魂を入れる為に作られた特注である。
Fランクは直径5cm〜10cm程の小さな人間の顔が球体に凝縮され白く光り輝いている。Fランクは目には見えるが実体はなくシーク達の体を透き通りフワフワ浮いている。
「グェッ」「ヴァああ…」「家に帰りたい」「あぁ、神よ」等とFランクの亡者達はうめいてる。
「光に集まるのはFランクばかりだなー、依頼書にあったCランクの亡者はどう誘きだせるもんかな」
「Cランクかぁ、何人か被害者がでてるやつだろ、地道に亡者の好物つけた釣竿にかかるの待つしかないんじゃないか」
「おっ!ヒットだ」
イルは釣竿をクルクル回して操作する。
「あっ俺も!」
2人は釣り糸を手繰り寄せるすると赤く大るなミミズみたいなものが針に食らいついている。ミミズの中には血だまり池の血が詰まっている血管の様な生物だ。
「あーこれ亡者の好物に食らいついてるってことはこのミミズは体生再起不完全型の亡者だなEランクって所か?」
Eランクの体生再起不完全型の亡者とは魂が核となりあらゆる物質から新しい体を作り出す現象だが体も知能も不完全な状態で生命活動を再開している。ここの亡者は血を媒介として体を構成している。
ミミズは足で踏みつけ潰し亡者の魂をとりだしリュックのホースで吸い込む。
「Eランクばかり釣れるな」
「血だまり池の亡者は夜のうちに体が作られても昼間の灼熱で体が死滅して育たないんだろな」
「なるほどな」
「Cランクまで育ってる事は熱耐性がある魂なんだろうさ、被害者の目撃情報によるとCランクは夜明け前に出てきてハンターを捕獲して血だまり池に引きずり込んで朝日とともに灼熱の池で煮殺すそうだ」
「もうすぐ夜明けまえだな」
「あぁ、おっ!なんだ?太い長いミミズだ引っ張ってみるか」
イルは釣竿に食らいついているミミズの体を血だまり池に引っ張る。
池の中から赤いミミズの体を引っ張ると何本ものミミズの管がつながり血管の様に絡まっている。
途端にミミズの何本もの管から赤黒い液体が吹き出てシークとイルに浴びせられた。
「マジか?!くっせーぇなおい」
シークは液体がついた体や服をくんくん匂う。
シークは血だまり池から何本ものミミズの長い管が伸びてくるなが見えた。
「シーク目をやられた」
イルは目に直撃し悶えていると、何本もの長いミミズの管がイルの体に巻きつこうと管を伸ばしてきたのでシークは持ってた短剣で管を切り捨てていく。
「イル目大丈夫?たぶんこいつがCランクだわ」
「いや、目が痛くて暫く何も見えそうにない、シークあとの作戦は頼んだ!」
「あいよ任せとけって、とうっ!!えいっ!!」
シークはスイッチ式爆弾を血だまり池に次々と投げ込んでいく。
「ふっふっふっCランクの化けものめ此方は準備満タンなんだよ!これでも喰らえっ!血液凝固剤だ!!」
シークは翼を広げ血みどろ池の上を飛び粉を巻き始めた。
血だまり池からCランクの化け物は巨大な人の皮膚の剥がれた顔の様な形で現れ大きな口を開けてシークに喰らい付こうと襲ってくる。
「こいつが本体か?」
シークは攻撃を避けつつ、巨大なCランク化け物の顔の口に粉を入れていく。粉を喰らってもCランクの化け物はなおも攻撃の手を緩めず動き回りシークを襲う。
「あれっ動けるの?もしかして失敗かな?」
シークは顔が青くなり冷や汗がはしる。
「失敗だ!イル退散だ!」
シークはイルの手を引いて走りだす。
逃げる2人に血管ミミズの集合体のCランクの4m程の皮膚の剥がれて腐ったような人型の化け物が血だまり池から這い出し追いかけてくる。
化け物は地面に足をつくたびに体のあちこちの血管ミミズが剥がれ落ちゾンビの様に痛々しい。
「顔怖えー、イル目は大丈夫か?二手に分かれて逃げよう」
「了解、目は何とかみえる」
シークとイルは森の中を2てに分かれ逃げるがCランクの化け物は跳躍しシークの前に立ちはだかる。
化け物はゆっくり近づいてくるが動きが鈍くなった足取りもおぼつかない、よく見るとCランクの化け物の体のあちこちがかさぶたの様に固まっている。
「血だまり池から飛び出して血の補充ができないから体を修復できないんだ」
「…血液凝固剤がきいてる」
シークはスイッチ式爆弾のボタンを押した。
かさぶたの様にガチガチに固まったCランクの亡者の血管ミミズの肉体はスイッチ式爆弾でバラバラに砕け散った。
「はぁ血液凝固剤と爆弾作戦が成功して良かったー、ヒヤヒヤしたぜ」
「シーク!無事か?化け物は?」
イルがシークの元にかけてくる。
「これこれ!ハント成功」
シークはにっこり笑い化け物の残骸を歩く。
シークは残骸の中に赤と黒のマーブルの亡者の魂を見つけ手を伸ばす。
「Cランクの亡者の魂ゲットだぜ!」
朝日とともに2人の姿が照らされる。
シークもイルも血まみれであるが依頼達成で満足そうにしている。
朝日がのぼり血だまり池がふつふつと煮え滾始める。
「暑いな帰ろう」
「だな」
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2人は町までもどり地獄治安安全協会へ入る略して獄安協会だ。
「依頼書の血だまり池Cランク持ってきたぜ!」
シークはリュックを開けCランクの魂をとりだす。
「他の魂もランクの鑑定と換金たのみます」
「はいは〜い!ご無事にご帰還何よりです!鑑定と換金ですね、少々おまち頂けますか」
受付嬢は魂を受け取り鑑定機械に魂を投入していく。
「地獄行きのFランクが32とEランクが19、依頼書の地獄行きCランクが1でございますね!此方が今回の報酬になります。またのご活躍心よりお待ち申し上げております!」
2人は報酬をそれぞれ受け取る。
「さーて食って寝るか」
と、シークは背筋を軽くのばす
「俺は目がさえちまったからカフェで読書たしなんでくるよ」
イルは目が真っ赤だ。
「じゃあ夕刻またここで落ち合おう」
「了解」
シークとイルは彷徨う亡者を捕獲し天国や地獄に送る仕事を生業にしている。
今2人がいるのは地獄の鬼の居住区である。
亡者の魂とは人間界から天国や地獄に向かう途中のものや溢れ出したもの逃げ出し隠れたものである。
地獄行きの魂の中には凶暴化して問題を起こすものが多く地獄の一般の鬼社会の中で社会問題になっているそれらを片付けるのがシークやイルのようなハンターである。