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涼しき場所には猫が寄る


 真夏の日差しを遮る。闇を使って。


 確かにそれはバッチリの結果を得た。


 しかしそれが、周囲に恐怖を催すというのなら…………その結果だけをダイレクトに作ればいいんじゃね? と、オツムの中身が転がりました。


 という訳で魔法の趣向をちょいと変えて、光の吸収率三十パーセントくらいの魔法でスッポリ体をおおってみます。

 するとあら不思議、日傘も無いのに日影の様に。


 さて辺りを見やると、うんっさっきみたいな騒ぎにはなってませんねっ。まぁ多少……と言うかそこそこ……イヤそれなりにどよめきは起こっちゃいるけど……


「……うむぅ……まぁ、そのくらいなら……」

「おぉ、これは快適ですねぇ」


 そしてスルリと、マクファーソンさんが魔法の中に入ってらっしゃった……ホント魔法のことだと物怖じしないなぁ……


「でっ、これはどんな使い道で?」

「いやぁ……まぁこれは、ちょっと思い付いたんでやってみたと言うか……」

「……思い付いたで出来てしまうんですか……」

「まぁさっきの魔法がベースにあるんで」


 そんなこんなと、影のヴェールの中でマクファーソンさんと語らう中……ふと、シヨルラさんの視線に気付いた。

 マクファーソンさんに向かっていた視線がそっとこちらに上がり……かけてから少しうつむいた……

 そして……クッと、何か思いを決める様に力を込めると……こちらに歩み……が数歩で止まった……


「あの~、遠慮なさらずどうぞ……?」


 こんな灼熱のピーカンなんですから。


 するとシヨルラさんの表情に、僅かに明るさが差し込んだ……気がした。

 そしてそれから、影の中にそっと座られた。


 ……肩口だけ。


 もぉそんな、ホント遠慮なさっちゃて。

 なれば、ヨイショとこのデカい図体半身シヨルラさんに寄せ、スッポリとその御身を夏の日差しからさえぎった。三十パーセントだけど。


 シヨルラさんはこちらを見上げ……それからスッとご自身の正面の地面に視線を落とし……


「……あ……あり……がと……」

「えっと、どういたしまして……」


 ……う~~ん、何か躊躇いというかお戸惑いというか、恥ずかしげというか…………なんかそんなご様子が……ひょっとしてまたいらんことしちゃった…………ハッ!!!!


「すいません!! ひょっとして汗臭かったですか!!?」


 そうだよ! こんなうだる様な暑さの中で!! 真っ黒毛むくじゃらが夏の日差しに晒され続けていたんじゃあ!!!!


「……えっ……!? …………えっと……えっ……!?」

「ホンッット申し訳ありません!!!! 自分ってばホント気が回らなくって!!」

「ち……違う……! そうじゃ……! ……ない……!」

「……またかい……」

「大丈夫ですよギネッタさん、別に匂いませんよ」


 わっちゃんわっちゃんしているこちらに不意に、マクファーソンさんがお声がっ!


「大体ダンジョンから出てくる前に水浴びされていたじゃないですか。野次馬を含めて、この辺りでそちら以上に匂わない人なんて殆んどいないと思いますよ?」

「えっ、そうですか? ……でもこちらはこんな暑苦しい風体ですし……!」


 こんな毛むくじゃらの真っ黒け! 人間の皆さんとは耐暑性能がえらい違いですよっ!? マイナス方向に!!


「……大丈夫、ギネッタ……は……臭くなんて……ない……」


 そしてそんなわたくしめに、シヨルラさんからも念押しが。


「えっと……ホントに……?」


 シヨルラさんはコクコクと首を縦にお振りになった。ひょっとしたらお気遣いで何でもない素振りをしていただけてるのかもだけど、お優しいから……

 いやまぁ例えそうだとしても、意固地になって謝り続けるのもそれはそれで失礼かな……

 

「……あ……あの……なんかすいません、大騒ぎしちゃって……」


 という訳で、何とかこのお話に一区切りをば……


 すると、横を向いて三角座りになったシヨルラさんが、フルフルと首を横に振って、抱えた膝に顔をうずめた……

 ホントすいません性懲りもなく毎度々々……


 そしてまた、何をするでもない時間が流れ出…………と、


「……ん?」


 すぐそばに、いつの間にやら猫がいた。

 コロンと丸まって。


 そっかぁ~~猫は涼しい場所を見つけるのが上手って言うもんねぇ~


 いやぁ~めんこいなぁ~


 しかしちっこいなぁ~……っていや、それはこっちの図体がバカでかいってだけだね。

 あ、なんかまた、二~三匹寄ってきた。


 すると……野次馬の方々の方から何やら声が……


「――まぁ……見て奥さん……猫なんて集めて……」

「――食べるのかしら……」



 ………………食べないよ!!!!



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