譲歩する事を譲歩しない
「(‥‥あの‥‥すいません、弓の相場って如何ほどですか‥‥?)」
そっと‥‥コフランさんに尋ねた。 なんか薄々‥‥シヨルラさんに直接聞いても教えてくれなさそうな気がしたので‥‥‥
「(‥すみません、私もそちらの相場には明るくないもので‥‥‥)」
「(あの大体でいいんです、例えばミスリル銀ならどれくらいで
「‥‥ギネッタ‥‥」
フォワッ! 聞き咎められちゃったシヨルラさんに!!!
「‥‥ギネッタ‥‥は‥‥‥‥‥‥なにも‥‥悪いこと‥‥してない‥‥ だから‥‥‥」
「いやいや!思いっきり商売道具壊しちゃってますから、悪いも悪いですよっ」
「‥‥‥‥親切‥‥に‥‥してくれた‥‥だけ‥‥」
「いや悪気が無いからって弁償しない訳にはいきませんって‥」
「‥‥あっ‥‥えっと‥‥‥ギネッタ‥の‥‥おかげで‥‥収穫‥‥増えた‥‥ だから‥‥」
「いや ソレはソレ、コレはコレですよぉ」
「‥‥‥何やっとるんだおぬしら‥‥‥」
「倒錯した値段交渉ですね‥‥‥」
「本人がいいと言ってるんだから、いいんじゃないですかね?」
いー訳ないでしょマクファーソンさん!!
「じゃあせめて八割!!! 八割は出しますんで!!!」
うーん!全然色好い表情になってくれない!!
「‥‥え~と、じゃあ七割!! 七割でどうです?」
「‥‥‥」
‥‥ふるふると首を横にお振りになられた‥‥‥
「‥‥六割五分では‥‥‥」
「‥‥‥‥」
‥‥‥どうする‥‥? ここは一気に半分に‥‥ いや、そんなに出させちゃったら何かが廃る!! ど~したものか‥‥
「‥‥‥お‥‥おお‥おいっ!!! な、な何をやってるんだ貴様ら!!!!」
‥‥‥‥突然、聞き慣れない声が飛び込んで来た‥‥‥
そちらを見ると、詰襟の服の上から、左胸だけ隠すシンプルな鎧を着た男性が。
「えっと‥‥こちらも軍人さんですか‥‥?」
一応鎧を御召しになられていたので、取りあえずバーヌさんにお訊ねを。
「いや‥こいつは衛兵だ」
「‥えっと‥‥どういう違いが‥‥?」
「‥‥コイツらは、街の治安を守るのが仕事‥‥と言って、分かるか‥‥?」
‥‥‥あっ、なるほど。 自衛隊と警察の違いかな? 前世の日本なら。
「なっ、なな何でこんな危険なもんをダンジョンから出してるんだ!!!」
「こやつを連れ出す様に仕向けたのは、ここを管理しとる冒険者ギルドと軍の連中だわぃ。 文句があるならそっちに言えぃ。」
「‥だっ‥‥‥だ、だからって! 野放しにするとはどういうつもりだ!!!」
「‥お?‥おぉ‥‥まぁ‥そうか」
「早くこれで縛り上げろ!!!」
おもむろに衛兵さんはロープを突き出した。 しかし細いなぁ、そのロープ‥‥
「は?何を言っているのです? この方が危険と‥」
「‥‥いやぁ‥いいですよ? どうぞ縛っちゃって下さい」
「えっ? ‥‥あの‥‥いいのですか‥‥‥?」
すいませんコフランさん、庇っていただいてるのに‥‥でも
「えっと‥‥だって怖いでしょうし‥‥‥」
そりゃこんなデカい図体がここでフリーダムなら、怖がる人が一杯でしょうから‥‥‥
ですからねっ、据わった目をして衛兵さんを睨み付けなくていいんですよっ シヨルラさんっ!!
「あ‥‥でも、足は結ばないでいただけると嬉しいかなぁ~~と‥‥」
「ん‥‥それはまた何故‥‥」
「いやぁ‥‥なんかあったらダンジョンに逃げれる様にしときたいなぁ~~~‥‥と‥‥‥」
‥‥痛い目に合うのは嫌なんで。
うんなこんなが有りまして‥‥胴と二の腕、後ろ手が縛られております ハイ。
正座の姿勢でペタンと横に倒れて、縛れる高さにして。
なんで正座なのかは‥‥‥まぁ‥またお見苦しい物を晒しちゃったらいけないんで‥‥‥
「‥‥‥大丈夫‥‥?」
「‥‥あの~~もうちょっとキツ目に締め上げてもいいんですよ‥‥?」
なんかずり落ちそうで怖いです。
そんな優しさとの駆け引きの末、どーにかこーにか縛り上げられ、自分は体勢を直して地面に正座。 なんか時代劇のお白州の気分。
そして‥‥‥
「‥‥‥暑いですねぇ~~‥‥‥」
「‥‥うん‥‥‥」
「‥‥そうさのぉ‥‥‥」
再び事態は、ま~ったく転がらなくなった。 そしてお天道様は迷惑なくらい元気‥‥
ホントこの先、ど~なるんだろうなんて‥ボヤ~~と考えてると‥‥‥
「‥‥‥ん‥‥?」
ゾワりと‥‥‥体に奇妙な感触が走った‥‥‥
そして膝の下から、ザリッと異音がした。