疑問は何かに至る道
心臓がでんぐり返りそうになりながらシヨルラさんをお運びし‥‥‥
そして再び谷の向こうに戻ると、
「もぉお待ちしてましたよー」
マクファーソンさんの期待はもう、思いっ切り膨らんでいた。
他のお三人はもう、鎖を両手で掴み、狭い足場を渡っていた。コフランさんとシスターさんは裾を捲って結び御御足が露わに。もう一方は高そうな鎧を外して。
脱いだ鎧は見受けられないから、コフランさんにしまってもらったのかな? 魔法で異空間に。
さてさて、お待たせして申し訳ありません。マクファーソンさんをおんぶしてフワフワ浮遊を始めると、
「‥‥おぉ‥‥飛んだ‥‥‥ 飛んでる!! 浮かんでますよ!!!」
アハハ、喜んでいただけて何よりです。
「これっていったいどういう魔法何ですか!?」
「え~と、そうですねぇ~‥ 地球の重力と‥反対に作用するように‥
「えっ? ‥‥チキュウ? ‥‥‥ジュウ‥‥リョク?」
‥‥‥おぉ~っと?‥‥‥ そっかぁ‥‥この世界は丸くない可能性もあったかぁ‥‥
「え~と‥‥前世の大地は丸かったんですよ‥‥ あの~‥ こっちの世界にも水平線ってあります?」
「ええ勿論」
「あっ、じゃあこっちの地面も、海もひっくるめて丸いと思いますよ。平らだったらどこまでも続いて見える筈ですから」
「あ‥そうか‥‥ いえ、でも世界の果てが‥‥」
あっ、なるほど。その可能性があったね。
「水平線って弧を描いていますか?」
「え~と‥‥えぇ、そうですね」
「他の土地で見たときに、形が変わったりは?」
「いや、そのような事は無いと思いますけど」
「じゃあ多分丸いと思いますよ? 果てがあるなら、変わって見える方が自然ですし」
「な‥‥なるほど‥‥」
「まぁ‥見た場所が近いから、変わって見えなかったって可能性はありますけど‥‥ あっそうだ、例えば移動中に、地平線から山が、山頂からだんだんせり出して見えてきたりとかは‥‥」
「う~ん‥すみません、意識して見たことがないので‥‥」
うん、そりゃそーですよね。
なんて、ちょっとアカデミックな会話をしてたら、もう着いちゃった。まぁ大した距離じゃないからねぇ。
マクファーソンさんを降ろして背負い籠を取りにもう一往復すれば、他のお三方も、ちょうど渡り終えたところ。
「ところで、大地が丸い事と飛べる事に、なにか関係が
「おい、話なら歩きながらにせい」
ありゃ、再び会話を交わそうとしたマクファーソンさんに、大きな盾の人から釘が。 まぁ、そりゃごもっとも。
でも‥‥
「すいません、ちょっといいですか?」
少しばかり、自分には気になっていた事があったので、大きな盾の人の言葉を遮った。
「あの~~‥シヨルラさん‥‥」
「‥‥‥何‥?」
思いがけずといった色を、シヨルラさんは表情に浮かべた。 もしかしたら、ご自身の胸に留めるつもりなのかもしれない‥‥
でも、もしかしたら‥‥ それに自分が関わっているのかもと思うと、とても尋ねずにはいられなかった‥‥‥
「‥ひょっとして‥‥右腕、痛めてませんか?」
次話はちょっとした伏線回収です。