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重装戦士の胸三寸

 まったく妙なことになったわぃ‥‥ 軍人の儂が、ベヒーモスに子供の様におぶわれて、フワフワ浮かんで崖の対岸に運ばれておる‥‥‥


 背中に背負っとる大盾が、今は妙に重く感じるわ‥‥‥





 重装戦士・バーヌのルーツは、海の向こうだった。



 温暖な気候と肥沃な大地、そして豊かな水にも恵まれ‥‥ ただし政情には、決定的に恵まれていなかった‥‥



 複数の勢力による、内戦に次ぐ内戦。


 一時、どこかの勢力が実権を握っても‥‥ 農民すらも餓えているというのに、腹の足しにならない嗜好品や麻薬の栽培命令。


 隣国に助けを求めたくとも‥‥ その隣国が、どこかの勢力の後ろ盾‥‥‥


 控えめに言って、未来のない国だった‥‥



 有り体に言えば‥‥ もう国として終わっていた‥‥‥




 だから‥‥身内がすべて亡くなり天涯孤独となった時に、船を得て亡命した‥‥‥



 ‥‥‥らしい‥‥ 何しろそれは、五代も前の話‥‥



 その頃は、まだきな臭かったこの国に渡った五代前は、兵士になり武功を上げ、そして当代騎士爵の地位を得た。


 その息子のひい爺さんも軍功を上げて、当代から永代へと変わり、以降続く軍人家系となった。



 ‥‥もっとも‥ 騎士爵家はかなりおるので、大した地位という訳ではないが‥‥‥




 そして自分も軍に入り三十年が経った。それなりに長く勤め上げているので、相応の地位を得ているが‥‥

 それを快く思わない、狭量で排他的な連中も多い。


 だから未だに、さして重要でもない当番任務が宛がわれている。



 今回も思い出した頃に湧いて出る、子悪党の揚げ足を取るための任務と思い‥さして気構えずダンジョンに赴いた訳だが‥‥‥ まさか本当にベヒーモスがおるとは‥‥‥



 咄嗟に大盾を構えた儂を、易々と飛び越えて行ったベヒーモスを見た瞬間‥‥ 逃げ切ることはほぼ叶わないと悟った‥‥


 ‥ならば倒す‥‥? いやそれこそ、逃げるより遥かに自殺行為だ‥こんな人数じゃどう考えても話にならん‥‥‥



 しかし‥‥予想外のことが起こった‥‥


 あろうことかベヒーモスが、弓使いの嬢ちゃんを落とし穴の罠から助けた‥‥‥

 最初はさらうつもりかとも思ったが、それも違った‥‥


 このベヒーモスは、とにかく腰が低かった‥‥‥



 そしてあれよと言う間に、ベヒーモスが入り口まで付いて来る話の流れに‥



 ‥‥‥正直それには、大きな戸惑いはあった。 ‥‥だが‥この事態を口だけで説明しきるのは、どう考えても無理だ‥‥


 それにこの遭遇をもみ消そうにも、 ‥‥まぁこの人の良いベヒーモスのことだ、頼めば口裏を合わせてくれるやもしれんが‥‥‥ だがこやつが上層でうろついている以上、なにがしかの痕跡は残っとるだろう。それが見つかったら、ここにいる全員の立場は相当に危うい‥‥


 更に言えば‥‥ 軍人は、冒険者の権利侵害も禁止されておる。 ‥‥弓使いの嬢ちゃんの身の上を知っとると‥‥何というか、余計に気が咎め‥‥‥




 ‥‥‥さて、こんな大事だ。どんな処遇が待っているやら‥‥‥


 妻と娘がおる身としては、大変気が重かった‥‥‥



 それを思うのがベヒーモスの背中でというのが、なんとも締まらない話だが。

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