張りつめて、糸
「嬢ちゃん早く張ってやれぃ」
大きな盾の人が呆れた様子で言葉をこぼし、シヨルラさんが慌てる様で、背を向けつつ弦の輪を作り始めた。
「いや! 気色悪いでしょうからホントお気遣いな
「おぬし少し黙っとれ」
「え‥?あ‥ハイ‥‥」
ちょっとだけ振り向いたシヨルラさんは、少しばつの悪そうな色を視線の端に浮かべ‥‥
それでも黙々と弦張りは進み‥‥ そして振り返ったシヨルラさんの弓には、ピンと張られた弦があった。
「‥‥‥あの~~本当に‥‥お気に召さなかったら遠慮無く‥」
‥‥う~~ん、またまたシヨルラさんは首をブンブンお振りになられた‥‥ 肩くらいまでの、茶色混じりのグレーの髪がフルフル揺れる。
弓の先には、縒るときにこさえた三つの輪がぶら下がって‥‥
「よかったらその輪‥切っちゃいましょうか?」
「‥‥‥ううん‥‥大丈夫‥‥」
‥‥先に切って渡せばよかったなぁ~‥‥‥ またいらない気を使わせちゃったよ~な気が‥‥
なんて悶々としながら‥‥次はニカワかなんかを塗るのかな、なんて思っていると‥‥
不意にシヨルラさんが真顔になった。
そして、顔を顰めながら‥‥‥ こちらに向かって弓を引いた。