汝は誰そ
「ハァ!!」
「フン!!」
わぁ‥‥‥
斬激が‥‥‥光を帯びて飛んで行く‥‥‥
この層に登ってからは、原色の‥‥体に悪そ~~な色をした青や緑のスライムや、毒をもった狼やなんかが、たま~に襲って来る。そしてあっさり返り討ち。
で、今は二匹の肉食コウモリ。
鎧のお二人が、十メートルくらいのとこら辺まで迫ったやつを、たった今撃ち落とした。
斬激と言っても、どうも鋭さはない様子。
なのでコウモリが‥バットでぶっ飛ばされたみたいに‥‥‥
「凄いですね‥ あれも魔法ですか?」
「いえ、あれは闘気って言って、また別のものです」
へぇ~~。 あっ、上からもう一匹来た。
今度は高そうな鎧の人が、三メートルくらいの距離のところで当てて‥‥あっ、今度は真っ二つ。近いと鋭いのかな?
そしてコフランさんが仕留めたコウモリを異空間に収納し、再び歩みを進めようとしたその時‥‥‥
「おいっ、ちょっと待てっ ‥‥‥何か来る‥‥」
高そうな鎧の人がストップを掛けた。
「‥‥ゴブリン‥‥か‥‥?」
目を凝らせば、棍棒みたいなのを持ったボロボロの装いの、小柄な二足歩行のシルエット。確かにゴブリンの方に似てるけど‥‥
「(‥‥おい、あれはどうすればいいんだ‥‥?)」
そして高そうな鎧の人が、声を潜めて尋ねてきた。
「(ちょっと待って下さい、‥‥え~~と‥どっちだ‥‥?)」
「(おい! 早くしろ!! あいつをどうしたらいいんだ!??)」
「(う~~ん‥えっと~‥‥)」
判断を付けかねて惑っていると‥‥‥
‥‥‥グギャアアァァァ!!!!
棍棒を振り上げ、目をむき、奇声を上げながらこっちに向かって突進してきた!
「あぁ~~大丈夫です! やっちゃって‥」
パァン!!!!
‥‥雷光一閃‥‥ 言い終わるを待たず、マクファーソンさんが魔法で雷をぶっ放した‥‥‥ 頭上から走る光に貫かれ‥‥そして相手はくずおれた‥‥ 容赦ねぇ~~‥‥‥
「なぁっ‥おいっ‥! 本当にやってしまってよかったのか!?」
「大丈夫です、ありゃゴブリンの方じゃなくてボガートですから」
「ボガー‥ト‥‥って何だ‥‥?」
「見た目はゴブリンさんにソックリだけど、知能のほぼ無い化け物ですよ」
「本当か? 本当にあれは、そのボガートなのか??」
「えぇ。大体の見分け方は、着てる物が粗末ってとこですね。 まぁゴブリンの方の中にも、貧乏だったり、着る物に頓着しない方だったり、哲学かなんかで敢えて粗末な物を着てる方とかもいらっしゃるので、絶対じゃあないですけど」
「じゃあもしかしたら!あれはゴブリンかもしれないんじゃ」
「いえいえっ あとは目がいっちゃってる、言葉が通じない、と言うかそもそも喋れないで、ほぼ決まりです。
で、確実なのが‥‥」
そう言って自分は倒れたボガートの元まで行って、その手を持ち上げ‥‥
「ボガートは手足の指が四本なんですよ。」
最後の決め手をご説明した。
「そうなのか‥‥‥」
「何ともタチの悪い化け物ですね‥‥‥」
「まぁ一番目の敵にしてるのは、ゴブリンの皆さんですけどねぇ‥‥‥」
なんでもヤツらにさらわれて、口では言えないあれやこれだそうで‥‥‥ お気の毒に‥‥‥