手に余るもの
できるだけチンタラリと、時間をかけなが~ら歩きつつ‥‥
プーーっと、細~くファイヤーブレスを吹いて‥‥
「‥‥何をやっとる‥‥」
「えっ?‥ あぁ、えっと‥伸ばした爪、焼き落としてました。邪魔くさかったので‥」
なんせ指と同じ長さだったもんで‥‥
火傷が怖いので、先に向かって斜めに当てたから、もうキレイさっぱり灰になっとります。
「勿体ないのぉ‥‥」
「? あっすいません、何か仰いました?」
「あ‥あぁいや、何でもないぞ‥‥」
「? そうですか?」
オリハルコンだったっけ? 刃物鋼‥の鉱石でゴリゴリ爪にヤスリがけしてたもんだから、何を言ったのか聞こえなかった‥‥ ちょいと上の空だったなぁ‥‥
‥‥‥‥‥
‥‥そんなこんなで戻って来ると、ノックアウトさせたミニバンイノシシが、両手両足‥‥ いやこの場合は四肢と言った方が正確だね。 が、一つ束ねに縛られ、ついでに目隠しもされていた。見事なお手並み。
そして倒した他の二頭と一緒に、まとめ置かれていた。
おそるおそる‥‥そっとシスターさんの方を流し見ると‥‥フォワ!目が合っちゃった‥‥‥ シスターさんは、肩がピクッとなってから目を逸らして‥‥‥
‥‥‥‥あ~~~よかったぁ~~~~!!!! また泣かれなくってぇ~~~~!!!!!
「‥さて‥‥どう分けるかのぉ‥‥」
‥‥あぁ~そーだよねぇ~‥ どうするんだろ?
「‥‥‥のぉ?」
‥‥ん!? あっコッチに聞いてたの??
「あの~~‥いつもはどのように‥‥」
「‥ん‥まぁ‥‥山分けかのぉ‥」
「それでよろしいのでは?」
「‥‥待って‥‥‥ ‥ギネッタ‥‥さ‥ん‥‥ 一番‥‥功労者‥‥だから‥‥」
おっとシヨルラさんが、振り絞るように待ったを掛けた。 ‥‥いい人だなぁ~~ 自身の取り分、減るかもなのに‥‥
「そうですよ。あくまでこちら側の取り決めですから」
あらコフランさんまで、ありがたいなぁ‥。でも
「いえいえそんなお気になさらず。郷に入りては郷に従えと言いますし」
「は?」「えっ?」「‥?」「ゴウ?」
‥‥ん? ‥‥‥あっ、ひょっとすると‥‥
「あっ、え~~っと~‥‥ 他所様の所に来たら、自分のやり方をゴリ押ししちゃいけないって感じの‥‥前世の諺でして‥‥」
「‥‥‥コト‥ワザ‥?」
おっとこっちもか
「‥‥まぁ‥‥教訓‥‥ですかね‥?」
「‥‥おぬしの前世は宗教家か何かか‥‥?」
「いやぁ~~~~‥宗教家じゃあ~~~ないですよ?? 只のしがない田舎者です」
何ぞ?この話の転がり方‥‥
「‥ん、‥‥そうか‥‥‥ じゃあ切り分けるか」
「ちょっっと待ってくださいっ 肉なら要りませんよ??」
「‥‥は?」
「こんなしょっちゅう食べてるもん‥‥わざわざこっから持って帰るのも‥‥」
これからダンジョンの外に行って、塩を受け取って、またダンジョンの底まで‥‥ ど~~考えても肉が痛む‥‥
塩漬けとかにすれば保つかもだけど‥‥そんな事に、貴重な塩を使いたくない。
それに嵩張る。その分、キレイな塩を持って帰りたい。
「しょ‥しょっちゅう‥‥‥」
「‥あの~~‥ちなみに‥‥その分、換金して塩を買うとどれくらいの量に‥‥」
「‥‥持って帰れる量じゃなかろうて‥‥‥」
‥わぁ‥そんな量になるんだぁ‥‥
「あの~、じゃあシヨルラさん‥‥‥ すいませんけど、これの分で‥‥ ほどほど塩を買っていただいて‥‥ 残りとあの石は、お手間代として貰っていただければと‥‥」
「‥‥‥でも‥‥‥それじゃ‥‥‥‥」
「あっ‥!あのっほら、シヨルラさん。自分こんな形なのに、人扱いしてくださったじゃないですか!あれすごく嬉しかったんですよ! ですからむしろ、こちらの方がお礼ですよ~!」
「‥‥‥でも‥‥‥」
「それに自分じゃ、外から塩を買ってこれないですから、わざわざやっていただけるなんて感謝感激ですよっ! ね!ですから!」
「‥‥‥‥」
「‥‥おぬしらは‥また何をもどかしいことを‥‥」
「ではこの三体は、このまま持って帰るということでよろしいのですね」
ん? コフランさん、そんなことおっしゃったけど‥‥ どうやって運ぶんだろ?? ‥‥なんて思ってたら‥ やおらイノシシの方を向き、両手を掲げ‥‥ うぉ!ふわっと白い光が現れた!ささやかな音と共に! それが円筒状にイノシシらを包み‥‥ それから大体四十秒‥光がスーっと消えると、三体とも忽然と姿を暗ませていた‥‥
ぅわぉ!流石ファンタジーな世界!! こんな事も出来るんだ!!
こりゃとんでもなく便利そう!!