そして私は恥を知る
「随分とかっこいい名前なんですね~。ミスリル銀ですか~」
背中にバサバサ刈った植物を詰めた背負い篭をしょって、テッテコテッテコ歩きながら、コフランさんとマクファーソンさん、お二人と会話の花を咲かせていた。
「そちらじゃ何と?」
「う~ん、決まった呼び方はないですね~。一番言われてるのは‥柔らか金属かな~‥‥ 他の金属と十把一絡げに‥‥‥ あっ、鍛冶屋の方々は、力を溜める銀‥それを略してタメ銀って言ってたような気が‥‥」
「ほぅ‥鍛冶屋がいらっしゃるのですか」
「そうなんですよ~。ゴブリン、ノッカー、コボルト、クルラホーン、サイクロプスの方々が多いですね~」
「サ‥サイクロ‥‥サイクロプス‥‥ですか‥」
「あ~~‥‥でもサイクロプスの方々は冶金専業って方が多いですねぇ‥‥」
「‥は‥?」
「あっ!凄いんですよ~~! 閉じた片目は温度を見抜く!! 純粋金属に至らんと って!!!」
「‥‥‥ちょっと待って‥‥ください‥ サイクロプスって眉間に一眼じゃ‥‥」
‥‥ん?‥‥
「‥‥あっ‥ひょっとしてそれって‥力仕事の大柄なとき?」
「サイクロプスは‥大柄‥‥ですよね‥‥」
「普段は皆さんとおんなじくらいの大きさですよ? ちゃんと二眼で‥‥
あっでも、二眼の片目は温度だけが見えるから‥‥ 両眼で視てると気持ち悪くなるから、いつもは眼帯かなんかで隠してますけど‥‥」
‥‥サーモグラフィーみたいですねって言って‥‥‥ キョトンとされたなぁ~~‥‥‥
因みに漏れなくオッドアイ。かっこいい。
「‥‥そうなのですか‥‥ では、オリハルコンは何と?」
「う~ん‥‥刃物鋼?」
「‥‥‥ありがたさのねぇ名前ですねぇ‥‥」
「素直な金属って言う人もいましたねぇ~ ミスリル銀?よりは溜め込むクセが穏やかなんで」
ミスリル銀は前世の、コンデンサとかキャパシタみたいな感じで、魔力を込めると溜め込んで、まとめてドン!!って性格。
オリハルコンもその気はあるけど、ミスリル銀よりは穏やかな性格なので‥‥ そしてちゃんと刃物にできるくらい、しっかり硬い。
なんて話していると、鼻をくすぐる香りが‥‥
「すいません ちょっっと水浴びしてきていいですか?」
「は?水なんてこんなところに‥‥」
「いやぁ~水の匂いがするんで、多分すぐ近くに‥‥」
ごめんなさいコフランさん、でもちょっと耳打ち
「(ほら‥自分、汗臭いかと‥‥)」
汗臭いどころか汚れまくってるし‥‥
そしてシヨルラさんがいつもすぐ近くに‥‥何とも申し訳なく‥‥
「(あまり気にしなくても良いと
「お~行ってこい行ってこい」
あれ? なんか大きな盾の人が、あっさりとオーケーを出してくれた。‥‥よっぽど臭かったかな‥‥
「あっ、じゃあ失礼して‥‥」
‥‥と、背負い籠を降ろし、手刀を切った自分の後ろに‥‥
「‥‥あの~~シヨルラさん???‥‥ なぜ~‥‥??」
「‥‥護衛‥‥」
「おぬしダンジョンで一人で無防備になるつもりか?」
‥‥なるほど‥‥ 確かに、皆さんにとっては‥‥ ダンジョンで無防備になるのは危険ですよね‥‥
「‥‥すみません‥‥」
‥‥そして自分は居住まいを正し‥‥
「せめて同性の方でお願いします‥‥」
前世を含めて‥生まれて始めて土下座をした‥‥ 異性に裸を視られるのは‥‥なんぼなんでも恥ずかしかった‥‥男らしくないと言われようとも‥‥‥ いやまあ今はベヒーモスだけど‥‥