表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界の現実  作者: ワタワタ777
9/9

行動が招くもの

ジフは、あのあと自分がなにを考えたのかもよくわからなかった。完全に混乱していた。ただ、そのままじっと考えることもできずに、街の中を早歩きしていた。そして、やたらと何かを探しているようだった。


彼は、ミスニアを探していた。


(噴水で見かけた時から、時間は経ってはいるが、そこまで遠くには行ってないだろうし、貴族の彼女が、人目のつかない所に自分からいくとは考えにくい、おそらく、人目の多く、綺麗なところを探していれば見つかるかもしれない……!!)


先ほどまでとは打って変わって、思考がよく回っている。しかし、心の方はもっと酷いことになっていた。なんでこんなことしているのかジフもわかっていない。もし会ったらどうするのか、どうなるのか、どうするべきなのか、何一つしっかりした結論を出せていない。不安と絶望、希望と期待、様々なものがごちゃごちゃになった心境の中、ただ彼はミスニアを探し続けていた。


ここまでする理由も、しっかりしてはいなかった。


夕方になって、彼も流石に疲れてきた。さっきよりは少しだけ冷静になったのか、帰って休もうとした。だが、冷静になった時も、人の望みは変わらないのか、体は勝手にその望みを求めて、行動した。


(あれ?……あそこにいるのは、ミスニア!?)


前から歩いてくるミスニアの姿を目撃したジフは、あえてゆっくりと彼女に近づいた。そして、偶然を感じさせるように、少し驚いた表情をして、彼女に挨拶をした。


『あ、ジフさん。』


『お久しぶりですね、ミスニアさん。』


(うまく口が回らない……。落ち着けよ自分!!)


『なんだか、顔色が良くないですが、大丈夫ですか?』


『ああ、うん、大丈夫。……今日はなぜここに?』


『実は、王都に引っ越すことになったのです。そのため、王都の地理は覚えていた方がいいかなと。』


『そ、そうなんだ……。』


『ジフさんは、見張りの方はどうですか?』


『と、特に問題はないよ……。』


(勇者の事を聞くべきか? でも、不審がられないか? 何を聞けばいい!?)


『……こ、今度、紹介したい場所があるんだけど、どうかな?』


人生で一番振り絞ったと言える勇気で、思い切って言ってみた。ミスニアがこんな事で自分を不審がることはないと思って。


『そうなんですか? 私は用事がなければいいですよ。それに関しては、お互いに手紙で日程を考えましょう。』


『そうだね。』


『……やはり、ジフさん、顔色が良くないですし、なんだか変ですよ。今日は帰って、しっかりとお休みください。』


『え? あ、ああ、ありがとう。』


そういうと、ミスニアはまた手を振って、去っていった。彼女とジフが会って話すのは4回目。ミスニアにはどう思えたのかわからないが、ジフにはこの会話に、何か大切なものがかかっているような気がしていた。だが、それもすぐに終わった。


ジフは帰宅し、自室のベッドに横たわり、また考え事をしだした。


(やった!! 会って話すことができた!! それに、自分のことを心配してくれた!! 良かった!!)


具体的に、何が解決して、何が進展したのか、それは言葉にはできてはいなかったが、ただ、彼女に会えたことを喜ぶ。喜んでいた。最初だけは喜んでいた。

だが、それは今はこうなっていた。


(……あの時、彼女は『そうなんですか?』と言った。その言葉に、自分に対する興味がない、という暗示が隠されていないか?)

(いきなり、場所を紹介するなんて言って、やはり不審がられているんじゃないだろうか。表面には出してないだけで、本心では不審に思ってるんじゃないだろうか。)

(日程をあの時に決めなかったのは、やはり行く気がないからなのではないだろうか。)


再び迷走してしまっている。同じことを心配しては、落ち込み、不安になり、より深く迷ってしまう。


嬉しかった感情が、気がつけば後悔に変わっていた。

感想、アドバイス、いつでもお待ちしております。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ