戦闘?
今日も見張りをしている。正門付近は芝生はあるものの、木とかはないため、見晴らしがいい。
そのため、ジヴニークが来たとしても、不意打ちでやられるようなことはないだろう。多分。
どうもやっぱり怖い。兵士がこんなこと言ってちゃダメなんだろうけど、それでももしジヴニークが来て、戦闘することになったら、と考えたら怖い。そう考えたら自分って幸せだな。戦場に行かなくてもいいのにお金もらえて。
でも何か、何かが少し気にくわない。気にくわないというか、なんというか。なんだろう?
よくわからない葛藤がジフに襲いかかっていた。言葉にもできないような心境。どう対処すればいいかわからない。
いかんいかん。そんなことより仕事に集中せねば!といっても、見張りって意外と暇なんだよな……。
『たすけてーーーー!!』
女性の悲鳴。そこを見ると、女性が男に追われている。男の服装から、多分盗賊だ。しかし、身長は普通より少し大きめ、175くらい?どちらにしろ自分よりは小さい。おそらくジヴニークというやつではないと判断。
すぐさまその女性の元へ駆けつける。盗賊はもちろん気づいて自分のことを警戒する。
『なんだテメェ!?』
いかにも悪い奴というような発言をする盗賊。あまり強そうな雰囲気はない。しかし、自分もかなりの恐怖を感じていた。相手の手には斧が握られている。こちらは防具を着ているが、それでも全身のどこを狙われても大丈夫というわけではない。
初めての実践。初めての戦闘。…………初めての殺し合い。
こちらが剣を抜こうとした時、相手はもうすでに襲いかかってきた。
しかし。
その盗賊の動きの遅さにびっくりしつつも、斧の攻撃を避けた。そして、すぐさま、防具付きの拳で、盗賊を一発KOする。
やはり兵士のように訓練を受けた人は強いんだな。と兵士になって、今気がついた。そして何より自信にもなった。荒くれ者を、こんなにも早く始末できたのだから。
すると、後ろから女性が声をかけてきた。
『助けてくださり、ありがとうございます!! 私、ミスニアって言います! お礼がしたいです。どうか、名前を教えてください!!』
『……えっと……俺はジフ。よろしく、ミスニアさん。』
かなり唐突に自己紹介され、さらにその女性が綺麗な見た目をしていることに、焦りと少し照れていることを隠しながら、名前を教える。
『またここに来て、お礼をさせてください!!』
『あ、ああ。俺は構わないよ。』
そんな短いやりとりをした後、ミスニアは国の中に入ってしまった。とても綺麗な女性だった。また会える、話せる、しかもお礼までしてくれる。と考えたら、楽しみだし、緊張もしてきた。
ミスニアと会ったら、何を話そうかなと考えながら、家でもある酒場に帰った。
そして、また訓練所に向かった。
『聞いたぜー! 女性を助けたんだってな!!』
ノツァがテンション高めに言ってくる。どうやら目撃者がいたらしく、その人が訓練所の関係者で、すぐに訓練所ではその話が広まったらしい。
『期待の新人はこれからすぐに新郎になるのかー!?』
『嬉しいんだけど、からかわれるように言われると恥ずかしいわ…』
『コラァァァァ! また無駄話しとるのかぁぁぁぁ!!!!』
教官が怒号を発する。ノツァは少しくらい学習したらいいんじゃないだろうか。
教官とまた実践練習をする。教官は193センチの男。やはりリーチが長いのか、足も長く、踏み込んでくる一歩が大きいのか、距離があっても倒されてしまう。
今日も一度も勝てなかった。
『ジフ、聞いたぞ。盗賊を剣使わずに倒したのだとな。やはり、お前は強い。これからもっと強くなってくれよ。』
『はい!頑張ります!』
めちゃくちゃ嬉しい。あの教官にも褒められる。ノツァに褒められるよりも100倍は嬉しい。これ普通に失礼な言葉だな。
いつもよりも気分がいい状態で、帰宅する。
『ただいまー。母さん、俺にもご飯ちょうだい。』
客の注文に混じりながら、ご飯を頼む。すると、隣から咳き込むような声が聞こえた。
隣を見ると、数時間前に会った、ミスニアが座ってご飯を食べていた。