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和みの住処  作者: 朱鷺房
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雪女の手紙

―手紙―

秋寂の風が街中を駆けていく。

信州の小さな村外れの郵便局に見慣れないワンピースを着た女性が切手を買いに来た。

「封書に使う切手をください・・・」

切手を求める消え入りそうな声に受付の西森八重子は驚いて顔を上げた。

20年間勤務している古い作りの郵便局で、建てつけの悪いドアの開閉のたびに軋む音をドアベルがわりにしていた彼女にとってなんの音もなしに入ってきたお客様に本当に驚いたのだ。

どんな時でも音がするはずなのだが・・・。

「き、切手でよろしいですね、封書ですと82円になりますが・・・」

「82円ですね・・・」

ポーチから小さな小銭入れを出してカルトンの上に料金分だけを置く。

「こちらでお出ししておきましょうか?」

そういう伝えるとそっと封筒をこちらに渡してきた。白色の封筒に小さな紅葉が透かしで入っている初秋らしい封筒であった。

「よろしくお願いします」

「かしこまりました」

色白の肌に綺麗に整った顔立ち、まるで美人画から飛び出してきたかのような容姿に思わず八重子は見とれてしまった。

「なにか・・・ついてます・・?」

「いえ、ごめんなさいね、あまりにも綺麗だったものだから・・・」

ごまかしながらレシートをカルトンの上に置くとその指が優美な仕草で取り上げた。

「封筒、よろしくお願いします」

そういって彼女は頭を軽く下げると扉をゆっくりと開けて出て行った。やはり音はしなかった。

「日本人形みたいな人だったわね・・・」

本当に細身の日本人形が人になって出てきたような感じがした。

受け取った封筒に切手を貼る。ついでに見た宛名書きは「内務省 調査局 国内調査部 第7課 大海様」となっており裏面には小さく長屋小雪と記されている。

「固いところに手紙を出すのね・・・」

といいながら、先ほどまで読んでいた昼ドラ小説の道ならぬ恋を諦めて、傷心のままに旅路で手紙を出す主人公の女性を思い浮かべてしまう。

「あの女性は最後は自殺だったわね」

嫌なことを思うものだと思いながら、田舎おばちゃん特有のお節介根性がでてきて、思わずカウンターを出て広告の貼られている窓から外を覗き見ると、バス停横の長椅子に彼女が腰掛けていた。

座っている姿もこれまたとても優美であった。

「本当に綺麗な子・・・」

思わず見とれてしまっていると定刻通りにバスが来て彼女は乗って行った。

しばらく事務作業やそろそろそ夕方の終いの時間が近づいてきたので、出先から戻ってきた局長と共に店じまいの準備に入った。

「今日は疲れたよ」

「飯田まで行くのは疲れたでしょう」

「ええ、しんどかったです、行き帰りで2時間半ですから・・・」

都会から田舎へ転勤となった若局長はため息をつきながら、セキュリティーボックスなどを操作して順当に終い作業を続けていく。

「私も下から上がってくると通勤だけで疲れてしまうから・・・」

40分かけて阿南町の街中からここまでくるのがだんだんと辛くなってきているのも事実だ。

「本当にお疲れさま、早めに締めて上がりましょうよ」

「あはは、そうしましょう!今日も帰りに阿南局によってもらっても良いですか?」

「ええ、届けてきますね」

たまに荷物のある時は拠点局に帰りがけによっていくことを彼女は日課にしていた。むろん、そこに彼女の優しい旦那も務めているので拾って帰るためだ。

通信袋と書かれた袋を局長は彼女に渡した。どっしりとした重みに驚いてしまう。

「今日の会議で決まった回収物と資料類です。すみませんがお願いします」

「わかりました。届けますね」

不意にドアがすごい勢いで開いた。きしみ音と同時に着崩れたスーツを着た三十代くらいの男が入ってくる。顔には無精髭が伸びておりワイシャツの襟首が何日も変えていないのか襟首が黄色く汚れていた。

「おばさん、今日、ワンピースの女から手紙を預からなかった?」

「いえ、預かってませんけど」

思わず身を守るために嘘をついてしまう。

「嘘は言わないでくれる?」

睨みつける彼の視線は異常者と言っても良いくらいに淀んでいる。

「言ってませんよ。それに・・・・」

不意に乾いた銃声が響いて彼女が床に崩れ落ちた。

「西森さん、大きな音がしたけど・・」

奥の部屋から顔を出した局長も、その出した頭を撃ち抜かれて近くの机に派手に頭をぶつけて倒れ込んだ。血が辺り一面に吹き出して室内に色と匂いを滾らせる。

「時間がないんだよ」

物色しようとカウンターを乗り越えて、現金などには目もくれずに手紙の入った袋を探し始めると先ほどの通信袋が目に留まった。

「お・・・これじゃないか」

中身を空いた机にぶちまけると硬貨と書類などのファイルで一つ一つを調べていく。中に隠されていないか、また、紛れ込んでいないか、硬貨の入った小さな手提げ金庫までひっくり返して中身を確認するが手紙は入っていなかった。しかたなくカウンターのあたりにあった物をどんどんと室内にぶちまけていくが一向に出てこない。

「なんでだ!」

カウンター、局長の机、近くの荷物の積んである机、その辺りを徹底的に探すが手紙は見当たらなかった。

「あの女、どこで出したんだよ!」

玄関口にもポストが設置されているのでその中かとも思ったが、鍵のありかを知っている者は足元で転がっているので知りようがない。

八重子の体を思いっきり蹴っ飛ばして彼はカウンターに残っていた物を床に叩き落とした。

「畜生」

不意に車の音が近づいてくるのが聞こえてくる。

「ああもう!」

物色を途中で諦めて彼は急いで外へ出た。軽トラが隣の駐車場に入ったところであった。

「めんどくさい」

つかつかと歩いて行き、軽トラからまさに降りようとしている老人の頭を素手で殴りつけると腰にしまってあったナイフを喉元に素早く差し込んでへ自分とは反対の外側へ引き抜く。血しぶきが飛びドアにもたれかかるようにして老人は息絶えた。

「ああもう、何もかもめちゃくちゃ」

ひとりでブツブツと言いながら局内に戻ろうとして、スーツの内ポケットから音がなった。

スマホを開くとメッセージがきており開くと一言だけ記されている。

[戻れ]

彼は青ざめた、この状態で帰れば何をされるかわかならない。

[未だに見つかりません]

返信をすぐに打ち込む、探させてくれと伝えなければならない。

[すぐに戻れ]

「ああ!もう!」

軽トラックの隣に停めてあったセダンに乗り込むとすぐにエンジンをかけて駐車場を後にした。




さて、こんな書き出しでございますが、続けていくことができますでしょうか・・・・ご期待に添えれますように頑張る所存です。

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