プロローグ
外から聞こえる兵士共の揃った足音。
無限軌道の喧しい音。
航空機が空を駆ける音。
鼓膜に響く重低音の破裂音。
破裂音の後の沸く民衆の歓声。
元の世界では軍事パレードとか出兵式とか呼ばれた物であろう。このパーティー会場目の前で、兵士共がパレードをしている。
空砲であれ破裂音というのは研究開発の段階から何度も聞いてきたが慣れる物ではない。
「我々に富を齎す戦争に、乾杯!」主催がグラスを高々に掲げる。
「「乾杯!」」
皆が高らかにグラスを掲げ飲み干し拍手する。何とも狂気染みた光景だ、これから人が沢山傷つき死ぬ事になろうと言うのに。本当に馬鹿げている。
―― 何故…… 何故この様な事になってしまったんだ。
この国の首相が隣国の住民による自爆テロで死亡し、それを発端にした戦争が始まろうとしている。しかし目の前に広がる光景は、この世界情勢に似合わぬ華やかなパーティー。
主催をしている者は、一守が神経をすり減らしながら必死に、それこそ血反吐を吐く思いをしながら暴走を止めようとしてきた。彼の親友である二關光郁である。
それが何故この様な結果になってしまったのか。これではまるで……
「あれじゃまるで、悪の組織のボスじゃない……」「死の商人、だね……」
今にも泣きだしそうな顔をしながら呟く青年二人、亜里沙と颯汰。
元の世界、つまりこの世界がゲームだった頃、光郁と共に難関クエストをこなしてきた戦友だ。そして〈厄災の日〉以降、光郁の暴走を食い止めようとしてきた戦友でもある。
「やっぱり、光郁くんには敵わないのね。私たちはさ」亜里沙が諦めた様に肩をすくめた。
『そうだ、アイツには敵わない』と一守は思った。
力で勝てたとしても脳ミソでは絶対に敵わない。流石俺らの参謀。難関クエストをクリア出来たのも、厄災の日以降も生きてこれたのも。この国家が他所と戦争を起こすまでに安定出来たのも。全て光郁の脳ミソあっての事だ。
ここに来るまでどんなに横暴で醜いやり方をしても、最終的には納得いく結果があった。この戦争も私利私欲だけではなくて、何か大きな事を成し遂げ様としているのだろう。そう信じたい。と一守は考えていた。
R3/11/07:一部修正