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Apostles12~罪を背負いし少年の復讐譚~  作者: 尖閣諸島諸島警備隊第6小隊隊長代理
一章 対[火]の使徒
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プロローグ~ある国の神話~

楽しんで読んでくれたのであれば幸いです。

――何だあれは…!

不意に視界に写った非現実的な生命体、否、生きているのかさえ分からないものを、確認するまでもなく、ただ己の本能に従い、男は一目散に妻の待つ家に駆けていった。

「おいっ!大変だ!今すぐ逃げるぞ!」

「そんなに急いでどうしたの?」

必死の思いで家に辿り着いた男。しかし、緊迫した様子の男とは真逆の態度で、男の妻は問いかける。

「急げ!速くここから逃げないと死ん――」

刹那、男の胴がずれた。

斬られたことを思い出したように時間差で血が吹き出る。

「…え?」

男の妻は、返り血の付着した頬に触れ、間抜けな声を出した。しかし、それは一拍おいて、悲鳴へと変わった。

「キャアアアアーーーーー!!」

何が起こったか分からずただ泣き叫ぶ。

これが夢であってほしいと願う。

だが、目の前の現実は無慈悲に、彼女に"死"を以てこれが現実であることを突きつけた。

もっとも、理解するまもなく、息絶えているが。

突如訪れた惨劇は街のあちこちで起こっていた。

「…誰か…助けて…痛い…よぉ…」

未だ死ねずに上半身だけでもがく女。

「うわあああぁああぁああ!!」

今、命を刈り取られようとしている男の叫び。

「くそがぁっ!何なんだこいつらは!俺たちが何をしたっていうんだよ!」

混乱し怒号を撒き散らす男。

言葉は異なってはいるが、皆、一様に心の中が絶望と混乱で支配されていた。

そして、皆願った。

「夢であれ」と。

しかし、これは紛れもない事実だ。

――この日、天翔1年1月1日。

何の前触れも無く起こった出来事。襲ってきた者の正体は誰も知らない。

死者は丁度100万人。

人々はまだ知らない。この事件を口火に人という"種"に断罪がなされることを。

この事件がその一環であることを。人が、滅亡の危機に陥ることを――




この出来事から約一万年後。

とある神話がある国に存在していた。

これは、その神話の序文である。

------------------------------------------------------------------------------------

人は、12の罪を犯した。

[火]の罪。火を生み出し、大地を焼き払い、星の摂理を燃やした罪。

[破壊]の罪。森を壊し、生態系を壊し、星の自然を破壊した罪。

[表情]の罪。常に表情を変え、他を欺き続け、時の感情に身を任せ、星の秩序を乱した罪。

[愛]の罪。愛は永遠、愛は確かに存在すると、偽りの愛を説き、星を失望させた罪。

[裏切り]の罪。他の信頼を裏切り、期待を裏切り、自分さえも裏切り、星を堕落させた罪。

[慈悲]の罪。他の罪を許し、罪を償わせずにさらに罪を重ねさせ、星を罪人で溢れさせた罪。

[侵攻]の罪。己が領土を拡げんと他に侵攻し、生物の棲みかを侵攻し、星を強奪した罪。

[憎悪]の罪。己が罪を償えず、現状に憎悪し、終には己にも憎悪し、星を負の感情で覆った罪。

[偽善]の罪。偽りの優しさを向け、聖人気取りで優越感を得、星を偽で満たした罪。

[恋]の罪。一時の激情に身を委ね、狂気にも似た言動、行動を繰り返し、星を汚した罪。

[傀儡]の罪。己は動かず人を操り、糸を引き、星が定めた運命をも変えた罪。

[現実]の罪。目の前の事実から目を背け、己にも目を背け、閉じ籠り、星を嫌悪と羨望で飽和させた罪。


星は、自分に危害を加える"人"を"撃滅対象"とした。

そして、人に裁きを与えるべく、12の"使徒"を生み出した。

ある使徒は配下を創造し、新たな種を生み出し、ある使徒は単独で星をさ迷い、ある使徒は人に紛れて、

人を断罪した。

使徒は毎年現れ、死に様を、断末魔を楽しむように人を殺した。


そこに、その全ての罪を背負い、全てをはね除けた少年とも少女ともとれない人物が居た。

その人物は女神とも呼ばれ、武神とも呼ばれていた。

だが終ぞ、その人物の正体を明かした者は居なかった。

にもかかわらず、その存在するかも定かではない人物の事を、人々は敬意と畏怖を込めてこう呼ぶ。


"罪を背負いし者"と。


我々は、二度と繰り返してはならない。

過去の惨劇を、悲劇を、二度と繰り返してはならない。

皆で手を取り合い、この星を守っていくことを誓おう―――

-----------------------------------------------------------------------------------------


この神話は、誰が語り継ぐともなく一万年間途切れることなく後世に語り継がれている。

それこそ、カラスは黒いということと同じように、当たり前のように語り継がれている。

人は、同じ過ちを繰り返す生物だ。

どんなに酷い出来事も、時の流れと共にその重みを忘れていき、遂にはその出来事があったという事実さえも風化してしまう。

それでも、この神話は語り継がれている。

一言一句、違えることなく、ずっと。


一万年の時の流れにも風化しない、凄まじい重みがそれにはあった。


神話が途切れた時、人類は滅び地球も滅ぶ。


絶対に、忘れてはならないのだ―――




では、今こそ私も語り継ごう。

地球を救った罪を背負いし者の話を。

運命に狂わされた、ある星の話を。


誤字脱字があればご報告お願いします。

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