わし、白髪
わし、白髪
わしは、白髪。
かつて、仲良し三本組であった白髪じゃ。
わしらがまだ緑の黒髪であった頃は、青春じゃったよ。毎日が楽しくてのぉ。
どんな疲れもシャンプーと一晩あれば、朝にはシャンとしておったわ。
ガシャ ガシャ ガシャ ザバーッ
あの手荒さこそが、生きている証と、あいつもシャンプーの度にそう言っとった。
それがいつの頃からか、そう、まわりが抜け始め、わしらも白髪になっていくと、あいつは時々、弱音を吐くようになりおった。
コシ、ハリもなくなり、ツヤすら薄い。あの頃のキューティクルはどこへ行ったのか、とな。
若い頃は爽快だったあの手荒いシャンプータイムが、段々と苦痛に変わって来たのよ。
そして、とうとうあいつは、わしともう一本を残して、いってしまった。
とてもここには居られん、と言ってな。
三本組だった頃が、懐かしい。
実のところ、もう一本も同じことを言い始めておる。
おぉ、今日も過酷なシャンプータイムが始まる。
わしは負けん。
負けんぞ。
最後まで生き残って、おぁっ…。