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詐欺師

           001 詐欺師


僕は、行き付けのBARのカウンターに座っている。

「マスター。いつもの。」

いつもの。それは、ウィスキーのロックだ。店内には、心が落ち着く音楽が流れてる。

「お待たせしました。」

ウィスキーを飲み、タバコを吹かしていると一人の男性が座ってきた。



隣に座ってきた男性が、鞄の中からA4サイズの封筒を出しカウンターの上に置いた。

「頼まれてた、資料と写真が入ってます。」

僕は、封筒の中身を確認した。

「ありがとう。」

封筒の中身は問題なかった。僕は、上着の内ポケットから茶封筒を手渡した。

「また、お願いします。」

お礼を言い、男性は帰っていく。



男性が帰った後、後ろのテーブル席に座っていた女性が近付いてきた。

「悟。どうだった?」

金城 悟。それが、僕の名前だ。

「響。問題ない。」

彼女は、響。僕のパートナーだ。一日中、パソコンをいじってるオタクだ。



さっきの男性に貰った封筒を開ける。中から、三枚の写真を取り出した。

「こいつらなの?」

黙って頷き、資料も取り出した。

「この三人が、振り込み詐欺の主犯格だ。」

警察も分からない情報を、何故さっきの男性が知っているのか?と言うと、僕が信頼してる腕利きの情報屋だからだ。お金さえ払えば、どんなことでも調べてきてくれる。警察も顔負けだ。



「響。このデータをパソコンに入れといて。」

三人の資料と写真を渡した。響のパソコンに、データのインプットが終わると、資料と写真をシュレッダーにかけた。

「誰から行く。」

僕は、ウィスキーのおかわりを頼んだ。タバコをくわえ、火を付ける。



パソコンの資料を見てる。資料には、三人の自宅の住所、家族構成や電話番号までも載っている。

「最初は、この一番若いやつにしようか。」

三人の中で、一番若いのを指差した。

「わかった。」

響は、何も言わずパソコンをカタカタと操作しはじめた。

「出来たよ。こいつのスマフォのメルアドをハッキングしたから。」



響は、ハッキングの天才だ。

「ありがとう。」

これで、外国のダミー会社を経由してメールを送ることが出来る。どんなに調べられても、足が付くことはない。

「とりあえず、GPSで動きを監視してくれ。」

まずは、奴等が動くのを待つだけだ。

「了解。」



ここ三日ほどは、自宅にいるみたいだ。僕が待っているのは、こいつらが詐欺活動を始めるのをだ。まずは、詐欺の証拠を押さえる必要がある。



いつもの、BARでウィスキーを飲んでいる。すると、携帯が鳴り出した。

「はい。」

響だった。

「明日、駅で待ち合わせするみたい。」

どうやら、監視の対象者に仲間からメールが届いたらしい。やっと、明日は動きがある。



今日は、二日酔いで寝不足だ。二日酔いは、いつものことだけど。

「お待たせ。」

駅が見える位置に車を停めていた。響が、買い物をして合流した。

「どう?表れた?」

駅の北口を指差した。一番若い男が、何かを待っている。



待つこと、40分ほどで一人のお年寄りが表れた。あの若い男に、お辞儀をしながら紙袋を渡している。

「よし。写真に押さえた。このあと、尾行するから車をよろしく。」

そう言うと、僕は車を降りて駅の北口を目指す。



どうやら、この若い男は仲間からリョウと呼ばれているようだ。

「今は何処?」

響から電話が入る。電車の中だから小声で話している。

「電車で隣町に向かってる。」

リョウと呼ばれている男は、隣の車両に乗っている。

「とりあえず、車でそっちに向かうから。」



リョウは、お婆さんから受け取った紙袋を持って移動してる。

「このまま、アジトまで案内してくれたら助かるけどな。」

隣町の駅に着いた。帰宅途中のサラリーマンで、駅のホームはいっぱいだ。



駅を出て、少し行ったところに飲み屋街があった。リョウは、そこに歩いていく。慣れているのか、回りの警戒におこたわりがない。



リョウは、あるビルに入った。一階や二階は、スナックやラウンジ等が入っている。リョウが乗ったエレベーターが四階で止まった。四階には、親和企画という会社の事務所が一つだけ。

「ここが、詐欺師のアジトだな。」



しばらく張り込みをしてると、響が運転する車が到着した。

「お待たせ。」

車に乗り込むと、響がおにぎりを二個とお茶を出してくれた。

「あのビルの、四階がアジトだ。」



僕達は、警察でもなければヒーローでもない。この世は、お金が全てだ。大金を稼ぐために、犯罪者の弱味を握り恐喝して大金を稼いでいる。



犯罪者は、後ろめたいから警察に駆け込むことは絶対にしない。素直に、お金を払えばいいが、相手は犯罪者だ。危険は付き物で、その為には念入りに下調べが必要だ。



「今回は、いくら稼ぐの?」

毎回、恐喝する金額は変わってくる。払えない無理な金額よりは、払える可能性がある妥当な金額にしている。

「三人だから、一人百万にしようか。」



「アジトはわかったから、後は家族構成や恋人まで調べたら、勝負開始だ。」

確実にお金を取るために、対象者の身辺を徹底的に調べることにした。一番に気になるのは、事務所の名前だ。

「とりあえず、今日は帰ろう。」

さぁ、明日から忙しくなる。稼ぎ時だ。



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