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07.ゴブリンの巣

ご都合主義なんです。

いや、分かっているんですけど…ネタが振ってこないから仕方ないんです…

許して下さ(ry

 草原のほうまではモンスターは出てこない。

 森に近くならなければこの辺りは安全なんだ。


「この先、何かいるな。数は2」


 マップで見た所、モンスターらしき影。森との境界が近くなったころだった。

 キースが眉を顰める。


「警戒して進め」


 グランドがそういうとパーティの空気が引き締まった。

 少し進んだところで俺の報告通りフォレストウルフが2匹。


 俺は手を上げて自分が出ることをアピールする。

 フォレストウルフは鼻が利く。もうすでにこちらの事を気づいている様子だった。

 グランドは首を振って俺に許可を出した。


 俺は剣を抜いてフォレストウルフに躍りかかる。

 一撃ずつ、確実に決めて倒す。

 ここ二日のレベル上げでフォレストウルフくらい複数出かかってきてもどうとでもなる。初日のように囲まれても何とかなるだろう、夜でなければ。


 短時間で決めて戻ってきた俺をグランドは真剣な顔で見ていた。

 キースは口笛を吹いて出迎え、エイルは音のしないように気を付けながら拍手をしてくれた。


「おめえ、意外とできるじゃねえか。成人したてのガキかと思ったがそうでもねえな」

「一刀のもとに切り捨てるなんて、すごいですねブレイドさん」


 キースとエイルは褒めて?くれた。

 ランツは腕を組んでむっとしている。


「心強いが、無理はするなよ」


 グランドさんが頭ポンポンってしてくれる。

 俺はガキか。


 まあ、ある程度戦えるという信頼が勝ち得たので良しとしよう。

 そのまま森へ入り、洞窟まで案内を続ける。

 道中、いつもよりもゴブリンが多く戦闘回数がぐっと増えた。

 しかもなぜか戦うよりも逃げようとする連中が多く打ち漏らしがないようにするのが大変だった。


「しかし、よく気づくよなあ、魔物の位置」


 キースが周囲を警戒しつつつぶやく。

 現在、先頭が俺とキース、その後ろにエイルとランツ、殿がグランドとなっている。


「斥候職としてキースより上なんじゃないの、ブレイド君」


 エイルさんが冗談めかして言うが、その発言にキースの目つきがギラつく。


「いや俺、索敵が得意なだけで、罠発見とか、解除とかできないですから、専門職の人にはかないませんよ」


 一応、持ち上げとかないと。変な人間関係のこじれは後々厄介ごとを引き起こすからな。


「お前絶対《遠見》とかのスキル持ってんだろ。そうでなきゃ説明できねえ」


 キースも納得しつつぼやく。

 俺は愛想笑いでごまかした。


 ようやく洞窟が近くなってきたころ。

 マップに表示されるモンスターの様子がおかしい。


 そろそろ洞窟であることを考えてもモンスターが密集しているところがある。

 しかもコの字を書くように配置され、その封鎖されていないところにも数匹モンスターがいる。

 これは囮かな。

 グランドさんたちに相談してみた。


「まず間違いなく罠だな」


 これは数匹のコの字の入り口にいると思われるモンスターの話だ。


「ゴブリンはその見かけによらず狡猾だ。特に上位種になればなるほど、な。今回は外で待ち伏せをしているのだろう」


 と、グランドさんの言だ。


「で、どうします?このまま集団を迂回して反対側から洞窟に近づくこともできますけど」

「いや、洞窟に入ってから後ろを責められてかなわん。洞窟にゴブリンが残っていることも考えられる。洞窟から遠い集団から攻めるのがよいだろう」

「あ、ほら。キースが戻ってきましたよ」


 キースは俺の報告が確かかどうか確認に行っていた。


「そこの坊主がいったことは間違いねえな。不自然なまでにゴブリンが数匹、いやがったぜ。その奥のほうも何か隠れているのは間違いねえ」


 あの感じではリーダー、もしくはメイジがいるだろうな、と続く。

 リーダー、メイジはゴブリンの上位種だ。どちらも通常のゴブリンより一回り以上大きく、リーダーは体格に優れ、メイジは魔法を使う。


「では、集団を後ろから奇襲する。ランツ、範囲魔法を頼むぞ。だが火は使うな」


 グランドさんの言葉にランツがうなずく。

 俺たちは後ろに回り込むべく歩き出した。

 ゴブリンの集団の後ろに出た俺たちは隠れて最終確認をしていた。


「キース、アレは準備してきたか」

「いつでも投げられるぜ」

「よし、エイル。俺のそばを離れるなよ」

「はい」

「ブレイド、無理はしなくていい。危ないと思ったらすぐに下がれ」

「はい」

「よし、ランツ、詠唱を始めろ。…いくぞ」


 グランツさんの指示で全員が動き出す。

 木の陰からでたランツがゴブリンの集団に魔法を放つ。詠唱はぼそぼそ言っていて聞き取れなかったが、最後の魔法名ははっきり聞き取れた。


「《ウィンドストーム》」


 竜巻だ。いや、風の刃といったところか。

 円を描くように中心に向かって風が舞う。その風に撫でられたゴブリンの部位が斬り飛ばされていく。


 風が収まるとキースが飛び出していく。

 俺も負けじと木の陰から躍り出た。


 ほとんど雑魚ゴブリンだ。一撃のもと斬り捨てて次の奴に向かう。

 たまにレベルの高いのが混じっているがそういうやつから率先して狙っていく。

 俺の周囲をあらかた片付けると、奥から普通のゴブリンより一回りでかいのが走ってくる。


 よだれを垂れ流し、狂気に血走った目で俺を叩き殺すことしか考えていないのだろう。その手に握った棍棒を振り回しながら一直線で向かってくる。

 レベルは…8、ゴブリンリーダーだ。この集団の頭か、このゴブリンの巣の頭か、どうでもいいことだ。


 ギギャギャギャガガギィィイイイ!


 振り上げた棍棒を俺めがけて振り下ろす。

 俺はそれを下からの剣で迎え撃った。

 バキィという音がする。

 ゴブリンの棍棒は勢い半ばで俺の剣に迎え撃たれ上に弾かれる。

 そこで手を離さず棍棒に引っ張られてゴブリンリーダーの体勢が崩れたのを俺は見逃さない。


「《V・スラッシュ》!」


 上に振り上げた剣の持つ手を返してもと来た軌道で振り下ろす。

 そしてそのまま左上へと振りぬく。

 《V・スラッシュ》はゴブリンの腹部を斜めに切り裂き、斬り上げられた軌道で右腕を吹き飛ばす。

 ゴブリンリーダーのHPは0となり、灰と消えた。


 俺は周囲を確認し、周りにこちらに向かってくる敵がいないのを見て、マップを広げた。

 集団の動きがどうなっているかを確認するためだ。


 こちらの奇襲が効いたのかゴブリンの集団はもはやただの有象無象とかしているようだ。

 最初のような統率の取れた動きはもはや見えず、敵を粉砕するべく突っ込んでくるだけのようだ。

 まあ、数の暴力というのは馬鹿にできないのだが。


 俺のいる位置はコの字の開いた口のほうだったらしく、一番敵が手薄のところだったようだ。一番集まる線と線のぶつかる位置にはブランドさんがいるらしい。

 まあ、後ろには広範囲魔法を使うランツが控えているので一気に押し掛けるとむしろ一網打尽にできるという面もある。

 キースもそちら側だった。

 俺にだいぶ配慮されているらしい。


 ゴブリンもグランドさんのいる方へ雪崩かかっていっているようだし、俺も加勢に向かおう。

 そうやってマップを閉じようと思った時だった。

 洞窟付近に緑色の丸が見える。こんなところに誰が…と思いつつそちらに目をやる。


 木が邪魔で見えないだろうとか、どうせ遠くて見えないだろうと思っていたのだが、俺にはその背中が誰だか、なぜかはっきり分かった。


「あのバカ!」


 俺はその背中を追うべく、洞窟のほうへと走り出した。


* * * 


 ミクニは布団の上で目を覚ました。

 まどろみの中、昨日あったことを何気なしに思い出していた。

 ブレイドとモンスターの狩りをして、冒険者の人が来て…。


 ガバッとミクニは布団から身を起こした。

 急いで身支度を整える。

 食堂に行くとすでに父はご飯を終えていた。


「おや、ミクニ。いつも早いね」

「お父さん、ブレイドは?」


 そう訊ねると、父親は複雑そうな顔をした後、肩をすくめた。


「さあね。ご飯が終わったら見に行くといい」


 父親に勧められるまま、食卓に着く。

 パンとスープを食べ始めた。

 なんとなく気がはやるが、急いでも手元のスープはなくならない。


 なんだかいつもよりも多い気がする朝食を終え、ミクニは家を飛び出した。

 ブレイドのいるはずの小屋の戸を勢いよく開ける。


「ブレイドいるー?」


 声は家主に届かず、虚空に響くだけだった。

 いないのを目で確認すると、そのまま外に出て裏へ回る。

 昨日はそこで剣を振っていたが、今日はもぬけの殻だった。


「む」


 ミクニの口がへの字に曲がる。

 昨日、同行を拒否されたことを思い出した。

 では冒険者たちのところへ行ったのだろうと気を持ち直す。

 だが、どこへ行けば会える?

 その時、ちょうど農具を抱えたおじさんが畑へ向かうところに遭遇した。


「おじさん、冒険者の人たち、どこに泊まったか聞いてない?」

「ああ、あの武装した人たちかい。あの人たちならあっちの村はずれで野営したらしいよ。冒険者ってのはどこでも寝れるんだねえ」


 ミクニはおじさんに礼を言ってそちらに歩き出した。

 まだ間に合う。そう自分に言い聞かせて。


 村はずれについたはいいが、そこにはいつも通り何もなかった。

 よくよく見れば焚火の跡だったり、テントの杭を刺した跡があるのだが、彼女はそこまで気が付くことはなかった。

 そんなまっさら大地を見て彼女は叫んだ。


「置いて行かれた!」


 ここで村に帰ればブレイドの予想通りだったのだが、彼は彼女の性格をまだきちんと把握しきれていなかった。


 置いて行かれたのなら、追いつけばいいのだ。


 村では彼女の父親が事実を知った彼女が戻ってくるのをお茶を飲みながら待っている。

 先の森の入り口では彼女のことなどすっかり忘れたブレイドが先行して森に入っていったころだった。

 彼女は置いて行かれたという事実と謀られたという怒りを推進力に変え、昨日見つけた洞窟へと歩き出した。


 その時彼女は忘れていたのだ。森にはモンスターが出ることを。

 だが彼女が懸念すべきだった事項は案外簡単に解消されたりするのだ。


 ミクニが向かう場所と、ブレイドが向かう場所は同じで、その場所までの付近のモンスターは先行したブレイドたちによって一掃されていた。

 運がいいのか悪いのか、彼女は森まで一切のモンスターに遭わずに進めたのだ。


 ここで彼女が幸運だったのはモンスターに遭わないことによってその足が遅くなることがなかったこと。また、巣の安定性から数が増え、森の席捲を始めていてゴブリンが巣の襲撃に備えて集められたことによって、ミクニが遭遇することがなかったことだろう。ブレイドたちとゴブリンたちの戦闘が始まったことによって、巣、付近のモンスターがまったくいなくなってしまったことも幸運だったといえるだろう。


 不幸なことはモンスターに遭わず、危機感を抱かずに巣まで来れてしまったことだ。

 洞窟までたどり着いたミクニは入り口の見張りがいないのをいいことに、ひょっこりと洞窟の穴をのぞいていた。


 奥のほうまで真っ暗で見えない洞窟は、なんでも飲み込んでしまう化け物のようだった。

 ここまで来て戻ることはできないと、中に進む決意をするミクニ。ポケットから小さな魔石を出してコトバを唱える。


「《ライト》」 


 バレーボールほどの大きさの明かりが現れ、暗闇を照らした。

 生活魔法と呼ばれる一般に普及する魔石の魔力を糧に発動させる魔法。その中でも最も一般的な灯火の魔法。


 それでも一般的には数十秒照らしつづければ明かりが消えてしまう。そんな灯火も回復魔法を練習したミクニが使えば自分のMPが続く限り照らすことができる。

 MPという概念は一般には存在しておらず、使える限度がなんとなくあるのを感覚で感じているというのがこの世界の普通の魔法である。


 少し明るくなった洞窟を進むミクニ。

 コツンコツンという自分の足音だけが妙に大きく木霊して聞こえた。


「ブレイド~。どこ~」


 だいぶ進んでもまだ続く洞窟の中で、情けなくも頼りにしている者を呼んでしまう。そんな声を聴いているものがいるとも知らずに。


 洞窟は意外と広かった。

 横の広さは大の大人が手を広げていても三人は余裕で入るくらいはある。高さは大人二人分くらいだろうか。

 奥はどれだけ続いているのかわからない。


 少し、ここまで来てしまったことを後悔し始めたころだった。

 後ろからバタバタと地を蹴る音が聞こえてきた。ゴブリンが戻ってきたのだろうか。


 ミクニは不安を覚えた。

 その不安を煽るかのように後ろからの音は近づいてくる。また、前からも音がする。


 コツ、コツと何かで地面をたたく音だ。

 逃げ場のない両側からの迫りくるものにミクニは恐怖した。


 実はこの洞窟、いたるところに横穴があり、前後以外にも逃げ場はある。ミクニの灯火ではその横穴に気づくほどの光量はなく、ただミクニが知らないだけだ。

 迫りくる恐怖に足がすくんで動けないでいると、前のほうからの音に変化が生じた。

 いや、近づいてくるコツ、コツという音は変わらない。気づかずにいた音が聞こえるようになった音だ。


 裸足で地面を歩くようなひたひたという音。

 それは、もうすぐそこにやってきていた。


 ミクニは灯火を前方に向かわせる。


 最初に見えたのは目だった。

 暗闇に浮かび上がる一対の細い目。こちらをうかがい、その恐怖する様子を知って細められた目だ。

 次に浮かんだのは顔だった。

 弱者を(なぶ)る、虐待者の顔。厭らしい笑みを浮かべ、これからの惨劇に心躍らせる残虐な面持。

 その姿は一般のゴブリンよりも大きく、それでも卑しさにあふれた体つき。その手には不格好な杖を持ち、石や鉱石のかけらなどで作られたネックレスのようなものを巻つけられている。

 ミクニは普通のゴブリンでないと一目で分かる相好に、一歩後ずさる。


 聞いてことがある。


 ゴブリンの上位種の一種だ。

 ゴブリンであるにもかかわらず、知恵を身に着けたか、悪知恵に特化したのか、魔法を使えるようになったモノであると。


「ゴブリンメイジ…」


 だめだ、通常のゴブリンでさえ倒せる気がしないのに、その上位種なんて。

 自分の存在が相手にとって恐怖と見るや、ゴブリンメイジはその顔をさらにゆがめる。狡猾さがより一層表面に現れる。


 耳が聞こえない。足が動かない。頭がふらふらする。

 恐怖のあまりミクニの体は変調をきたしていた。


 引いたはずの後ろ脚から力が抜け、その場に尻もちをつく。

 それでも引き下がろうと足で地を押すが、表面を滑るばかりで一向に体が下がってくれない。

 こちらが動かないのをいいことにゴブリンメイジは舌なめずりをしながらゆっくりと近づいてくる。

 ミクニは思わず目を閉じて叫んだ。


「やめて、やめてやめてこないで!こないで!《ホーリーバリア》!」


 ゴブリンメイジは足を止めた。いや、止めざるを得なかった。

 目の前に光の障壁が現れたからだ。試さなくても解かる、これは自分を阻むものだ。そして自分が触れば痛いものだ。


 洞窟にエサが現れたときは驚いた。

 連中は侵入者を排除しに出してしまったし、退屈だった。

 無力で非力なエサが自分から飛び込んでくるなんて思いもよらない幸運だ。


 なのに…。


 ゴブリンメイジは邪魔な障壁を杖で殴りつけた。力いっぱい殴りつけた。

 パリン、という乾いた音ともに光の障壁が消える。

 これでエサと自分を阻むものはなくなった.ゴブリンメイジはほくそ笑んだ。


 ミクニは目を薄く開けた。

 ゴブリンメイジはもうすぐそこまで来ているはずだ。

 それでも、自分に触れられるような感触はない。恐る恐る目を開けた。

 視界に入ってきたのは上から何が黒いものが飛び込んできた瞬間だった。


「《スラッシュ》!」


 ゴブリンメイジは驚いて杖を顔の前に上げた。

 せっかく餌にありつけると思ったら、目の前に人間が現れた。しかも武器を振って。

 ゴブリンメイジは不快感とともにそいつの剣を杖で受け、耐え切れずに体が宙に浮くのを感じた。


「ミクニ!大丈夫か!」


 飛び込んできたのがブレイドだとミクニが認識できたの、はゴブリンメイジが吹き飛び、地面にたたきつけられた音を聞いた後だった。


お読みいただきありがとうございます

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