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02.チュートリアル

この作品は第2話です

同じ時間に1話を投稿していますのでお間違えないよう

1話から来た方は引き続きよろしくお願いします

 俺は気が付いたら白い空間にいた。目の前には画用紙サイズのウィンドウ。


《名前》  《  》


 まずは名前を入力するところからのようだ。

 俺は空のテキストボックスをタッチして名前を入力した。


《名前》  《ブレイド》


 この名前は俺がよく使うものだ。

 剣持、ゆえの分かりやすい名前といえるだろう

 決定を押して主人公ネームを確定させる。

 ウィンドウに次の文字列が現れる。


《初期武器 を 決めて ください》

《    》


 ふむ。やっぱり勇者といえば剣だろう。


 これは選択肢を選ぶタイプのようで一口に剣といっても色々あるようだ。

 片手剣、両手剣、曲刀、太刀、打刀、槍、薙刀、短弓、弓、クロスボウ…。

 初期武器というだけあって、やる気になれば今後これらすべて装備できるようになるらしい。だが、やはり初期武器は一番長く使うものとなるだろう。


 俺は片手剣を選んだ。


《片手剣 でよろしいですか》


 俺は片手剣で確定させる。


《それでは 大冒険 を お楽しみ ください》


 一瞬、世界が白く包まれた。

 かと思うと、先ほどの白い空間ではなく一面の腹に立っていた。

 簡単な灰色のTシャツと動きやすいカーキ色のパンツ。腰にはベルトがまかれ、剣が鞘に収められ吊られていた。


 ふと見上げれば空はくすんだ青色が続いていた。

 もう一度顔を前に戻すと人が立っていた。


 全身鎧の兵士の格好の人だ。左手にはカイトシールド。細身の剣を吊っている。

 兵士は軽く手を上げ気さくに声をかけてきた。


「ようこそ、新・大冒険の書へ」

「あ、ども。こんにちは」


 俺はとっさに頭を下げた。

 顔を覆うヘルメットのせいで表情はわからないがとても好意的に感じる。


「ここでは君が冒険へ出る前の心得と振る舞いをお教えする」


 なるほど、チュートリアルってやつだな。


「まず、体の調子はどうかな。現実とは少し違うだろう」


 いわれて俺は手を握ったり開いたり、軽く飛び跳ねたりしてみる。

 なるほど確かに。なんとなく違和感があるが、気になるほどでもない。


「大丈夫です」

「そうか。よかった。ではまず、《メニューオープン》と言ってみてくれ」


 俺はうなずいて言われた通り《メニューオープン》と言った。

 フォン、という小さな音とともに胸の前にA3サイズほどのウィンドウが現れる。左半分がマップや道具、装備などの項目で、右半分が自分のステータスだ。


「無事に確認できたようだね。今のレベルはいくつかな」


 俺はステータスを見る。


名前 ブレイド

Lv. 1

HP 20/20

MP 10/10

STR 10 (+3) VIT 10 (+3)

INT 10 MGI 10

AGI 10 DEX 10


スキル

片手剣Lv.1


「レベルは1です」

「そうだね」


 兵士は俺の横に立ち画面をのぞき込むようにした。


「今のレベルではHP以外すべて能力値は10だけど、レベルが上がるにつれて君が望むように差異が出るようになっている。武器による攻撃を望めばSTRが、魔法攻撃を望めばINTが、守りを固くしたいと思えばVITやMGIが上がる。ま、それはおいおい見て行ってくれればいい」


「はあ」


「ああ、クエストを受けるとメニューのクエストの項目から何を受けているか分かるようになっているから。試しにやってみようか」


 兵士の頭にポンと緑色のビックリマークが出てきた。


「このマークが出ているNPCからクエストを受けることができる。試しに話しかけてみてくれないかい。ああ、普通に声をかければいい」


「はあ、えっともしもし?」


「せっかくだからこんなのはどうかな」


 ポン、という音とともに視界の右端に《チュートリアル1 を受けますか》というポップが出る。


「ポップをタッチするとクエストの詳細と受領するかどうかが出てくるので、受ける場合は《はい》をタッチだ」


 俺はポップをタッチする。


『チュートリアル1

 クエストを受けてみよう!


 このクエストを受けますか

  はい  いいえ    』


 俺は迷わず『はい』を押す。

 ピロン、という音とともにクエスト達成の少し豪華な電子音が鳴る。


「そうそう、クエストはこんな感じで受けられる」


 頭に青いビックリマークを浮かべた兵士は大仰にうなずいて見せた。


「基本的にクエストは発行者のところに報告に行くことで達成になるので報告するのを忘れないように。あ、これが達成報酬だ」


 兵士はどこからともなく蓋のされた試験管のようなものを取り出す。中には緑色の液体が入っている。

 これがポーションってやつか。俺は兵士からそいつを受け取った。


「どうも」


 と同時に兵士の頭の上に緑色のビックリマークが出る。


「次は何ですか」


 俺が訊ねると


「次は道具の出し入れについてだ」


 ポン、とまたポップが出る。なになに?《チュートリアル2》か。

 要は道具の出し入れをしてみようってことらしい。


「アイテムボックスにしまうときは《収納》。出すときは出したいアイテムを思い浮かべて《取り出し》って言えば出てくる」


 手に持つポーションを見ながら《収納》と言う。

 するとふっと手からポーションが消えた。


 先ほどしまったポーションを思い浮かべながら《取り出し》という。

 すると急に目の前にポーションが現れ、地面に落ちた。

 どうやら取り出すときは場所も一緒に考えないといけないらしい。


「アイテムボックス、と言えばウィンドウで中身の一覧が出てくる。もちろん、メニューからもできる」


 俺が落としたポーションを拾っている間に兵士の説明は続いていた。

 もう一度ポーションを《収納》してから俺は兵士を見る。


「これでいいんだろ」


 兵士のビックリマークが青く変わりまたうなずいて見せた。


「さて、これが達成報酬だ」


 次に差し出されたのは青いポーションだった。受け取って《収納》する。


「さて、次だが、一度戦闘も経験してもらう」


 兵士の頭にはまだ何も出ていない。


「君はこの世界の戦闘経験がないからね。まずは軽く剣を振ってみて、準備ができたと思ったら話しかけてくれ」


 分かった、とうなずいて俺は剣を抜いた。

 兵士を見れば頭に緑のビックリマークが出ている。

 話しかけたらすぐに次に行くのだろう。


 剣を片手で握りぶんぶんと振り回す。ずっしりと重みを感じるが剣に振り回されるほどではない。

 右手で振って、両手で振って、左手でも振ってみた。

 片手剣、と設定したはずだが両手で振っても問題ないらしい。

 なんとなくなじんだところで俺は兵士に声をかけた。


「おーい。準備完了―」


 兵士はこちらを向いてうなずいた。


「では簡単なモンスターを倒してもらう」


 右端ポップに《チュートリアル3》が出てくる。軽く確認して受注。

 ふと空間が揺らいだかと思うと5メートルくらい先に緑色の肌をした醜悪なモンスターが出てきた。VRだと結構きもいな。


「一応反撃はしてくるが、絶対に負けないようになっている。やってみろ」


 俺は軽くひじをまげて右手で剣を持ち構える。構えなんて適当だよ。切っ先がゴブリンのほうを向いているから中段ってやつなのかな。

 ゴブリンの頭の上には


 ゴブリン Lv.1


 という風にモンスター名とレベル。その下にHPバーが出ている。

 心づもりを決めて一気に地を蹴った。


「うおおりゃ」


 急激に距離を詰めて左から右へ一閃。ゴブリンが驚いたように身を引いたところで一撃だ。あっという間にHPバーが0になる。

 ガツ、という手ごたえとともにゴブリンが上下に分かれた。

 そのまま粒となって消えていく。


「ふむ。ちょっと弱すぎたな。もう一体やってもらう。次は一撃とはいかんぞ」


 兵士がそういうとまた空間が揺らぎゴブリンが現れた。

 次のゴブリンはなんだかぼろぼろの刃の剣を持っていた。Lv.2…か。

 こちらをうかがうようににらんでいる。


「もうやっていいのか」

「いいぞ」


 一応兵士に聞いてから再びとびかかる。


「おおおおりゃ」


 上から下へ打ち下ろすように剣を振る。

 ゴブリンは後ろに飛びのいてよけた。そのまま俺に突っ込んでくる。

 右側に飛びのいて迎え撃つように横一撃。

 ゴブリンは剣で防いだようで、鈍い金属音とともに軽く吹っ飛んだ。

 よろよろと立ち上がるゴブリンを見ながら俺は構えなおす。

 ゴブリンのHPバーはもうすでに半分ほど削ってある。

 俺はゴブリンに飛び込んでいく。二撃三撃と打ち込み、防がれたりよけたりしながらゴブリンのHPを減らしていく。


「ぃよっせい!」


 すきを見て下から救い上げるように切りかかると、うまくゴブリンの体に入り残っていたHPが0になった。

 ふらふらと倒れこみ粒となって消えた。


「お見事。これで戦闘の基本は大丈夫だな」


 兵士のほうを見ると盾を置いて拍手をしてくれていた。頭のビックリマークが青色になっている。


「ああ、なんだか思ったより本格的だったよ」

「さて、これが報酬だ。これからのためにうまく使ってくれ」


 兵士は先ほどの青いポーションと緑色のポーションを4本ずつくれた。

 すぐに《収納》する。


「さて、次はスキルについてだ。君は片手剣が初期装備のため片手剣スキルがある。スキルレベルが上がれば片手剣の威力が上がっていく。ほかの武器も持つことはできるがスキルが有るか無いか、スキルレベルが高いか低いかでは威力も使い勝手も変わってくる。スキルの取得には条件があるが、それはおいおい自分で見つけてほしい。さて…」


 兵士はそこで言いよどみ俺の後方を指さした。


「一応戦闘の基本までがチュートリアルだ。このまま君は冒険へと繰り出せる。あちらの扉をくぐればそこは冒険の世界だ」


 指さしたほうには先ほどまでなかった豪奢な木造りの扉があった。


「ただ、ここにもう少し残って剣技について話を聞いていくこともできる。剣技とはMPを使って放つ通常の攻撃よりも強い技だ。どちらにするかは君次第だ」


 別に急いでないし、VRゲームはこれが初めてだ。剣技について聞いてからでいいでしょ。


「剣技についてお願いします」


 兵士は嬉しそうに?うなずいて説明を開始した。


「剣技とはその名の通り、剣を用いて使う威力の高い技だ。お前の片手剣では初期剣技は《スラッシュ》だな。ちょっと見ていろ」


 兵士が剣を抜く。ふっと剣先の先にかかしが現れる。

 空から降ってきたぞあのかかし。すごいな。

 兵士は音もなく構え、一足飛びにかかしに近づき左から右へと剣を振りぬいた。


「《スラッシュ》」


 兵士の剣の刃を淡い光が包み、剣の軌跡に光が散る。

 剣を振りぬいた状態で男が制止する。

 数秒の沈黙の後、かかしが倒れこむように二つに分かれた。


「おお」


 思わずこぼす。


「これが初期剣技スラッシュだ。MP5を消費して使う。一番簡単なのは《スラッシュ》と唱えることだ。やってみろ」


 すっと兵士が剣で示した先にまたかかしが現れる。

 …今度は下から生えてきたぞ・

 気にせずに剣を構える。

 走り寄って唱える


「《スラッシュ》!」


 で、剣を振りぬく。

 刃は光を纏うことなく、普通の刃のままかかしに襲い掛かる。

 失敗した、と思うと同時に剣はかかしにぶつかって跳ね返される。


「それは《スラッシュ》が成功しないと切れないぞ」


 兵士が腕を組んでみていた。

 それを早く言ってくれ。

 俺はかかしの前に立って素振りを始める。

 横一直線に剣を振る。

 三回くらい振ってからもう一度チャレンジだ。


「《スラッシュ》!」


 ガイン。

 再び剣が弾かれた。


「剣を振るのと詠唱を別々にやるんじゃない。《スラッシュ》を撃とうと思いながら詠唱するんだ」


 兵士さんからのありがたいアドバイス。それができりゃ苦労しとらんのじゃい。

 ええいとりあえずスラッシュを出せりゃええんじゃい。


「《スラッシュ》!」


 ブンと振ったところ弾かれる手ごたえがなかった。

 ふえ?と前を確認するとかかしが斬られたかかしが後ろに倒れるところだった。


「よくやった。それが剣技だ」


 兵士さんは大仰にほめてくれる。

 えーっと、とりあえず、なんとなく、分かった?


「もう教えることはない。さあ、冒険へ旅立つといい」


 兵士さんは剣先であの扉を指す。


「あーお世話になりました」


 俺はぺこりと頭を下げ扉の前に立った。

 ようやく、本格的にゲームの世界に立つんだ。

 俺は扉を両手で押し開ける。


 隙間から白い光があふれ出して俺の視界は白く覆われた。


お読みいただきありがとうございました

ところで、キーワードって何入れときゃいいんですかね…

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