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世界で一番君が嫌い  作者: びゅー
4章 芸術
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4章-05 交渉

エリック家

セバス「アヌビス様ではありませんか!お戻りになられたのですね!

いかがでしたか?八音の旋律の件は」

アヌビス「そのことで、親方と話がしたい」

セバス「親方は多忙ですが、アヌビスさまの頼みならば仕方ありません。掛け合って参ります」

サヤ「この町の町長さんみたいな人?」

アヌビス「いや。この町は誰か一人リーダーがいるってわけじゃない。あくまでボランティアの自治グループが自治を行ってる。でこのエリックさんもその自治グループに長いこと…それこそ初期から顔を出している一人なだけだ。

だから、それほど大きな権限は無い」

ナオヤ「ふーん。

随分、まとまりがなさそうな町だな」

アヌビス「…まあ、それはそうだな」


数分後、

屋敷という割には随分とみすぼらしい…テーブルもなければイスもない…そんな部屋の真ん中に一人の男が立っていた。

アヌビス「エリックさん、おひさしぶりです」

エリック「アヌビスか。よく戻ってきた。で、用件は何だ?」

アヌビス「その件なんですが…。

八音の旋律あるじゃないですか、どうかこいつらに譲ってやってくれませんか?

こいつらもそれを集めてて、もう3つも見つけたんです、

………」

…。

エリック「人類が滅亡するか否かの鍵、ね

俺はそんなおとぎ話は好かんな」

アヌビス「エリックさん、だけどこいつらは…

いや、俺たちはそのために今まで必死で頑張ってきたんです!

お願いします!どうかここにある八音の旋律の一つ、疾風のギターを譲ってください!」

エリック「ほう。

だが、お前は知ってるよな。俺も八音の旋律を集めているってことをな」

アヌビス「…」

エリック「だって、お前に八音の旋律の探索を依頼したのは、俺だからな」

サヤ「え、そうだったんですか!?」

エリック「そうなのよ、お嬢ちゃん。死ぬまでに一度でいいから八音の旋律がどんな物なのかお目にかかりたくてね」

ナオヤ「なんでこいつなんかに頼んだんだ?

…正直、信頼性のかけらもないと思うのだが」

アヌビス「な!?なんだと!?」

ナオヤ「あくまで、おまえを客観的に評価してやっただけだからな。

怒られたって困る」

アヌビス「こいつ…」

エリック「実はこいつの父親は世界的な大盗賊でね。

しかも俺の古い知り合いだったんだ。

…5年ほど前に亡くなったがな。

で、こいつは父親の後をついで、大泥棒になりたいって言い出したから、俺は無理難題を押し付けてやったのさ。

俺は、多分すぐにお前が諦めると思ってた。

でもおまえは1ヶ月ほど全然戻ってこなかった。

なかなか、大したもんだと思ってたところだ」

アヌビス「俺は、最初は隙を見てこいつらから奪い去るつもりだった。

でも、とてもじゃないが、できなかった、それどころか、協力してやりたいって気になってきたんです。

…俺は本気です。自分でも、よくわかんないんです」

エリック「ふーん。

自分でもよくわかんねえような中途半端な気持ちで、俺様に頼み事かい。

随分と、舐められたもんだな」

アヌビス「そんなつもりじゃ…ないんです…ただ…」

エリック「はっきりしろ!

依頼よりも私情を優先させたくなった、そういうことだな!?

俺様よりこいつらの方が大事、そういうことだな!?」

アヌビス「そ、そういうわけでは…」

ナオヤ「その通りだろ」

アヌビス「う、うるせえ、だまってろおまえは!」

エリック「俺様はな、嘘をつかれるのが一番嫌いだ」

アヌビス「う…

申し訳ありません!私は確かに私情を依頼よりも優先させようと考えていました!」

エリック「そうかい」

アヌビス「…」

エリック「分かった、この疾風のギターは渡そう」

アヌビス「…!?」

ナオヤ「いいんすか?」

エリック「その代わり条件がある。

もし、だ。お前らが八音の旋律を全部集めることに成功したなら…

その時は、どうか俺にその実物を見せてはもらえないか?」

サヤ「見るだけで、いいんですか?」

エリック「ああ、俺は現物を拝むのが目的なんだ。別に手元にはいらん」

アヌビス「エリックさん…ありがとう」

エリック「ほら、ギターだ。…持っていけ」

ギターを手渡された。えらく簡単だったが、4つ目が手に入った。

ナオヤ「じゃあ、ありがたく頂いていきます」

エリック「旅、がんばってくれよ」

サヤ「ありがとう!親切なおじさん!」

パギー「感謝」

レック「それでは、これで失礼します」

エリック「おっと、そうだ、アヌビス」

アヌビス「はい、何ですか」

エリック「おまえの親父さんはな、10回中8回は私情におぼれて依頼を失敗しやがった」

アヌビス「へ?」

エリック「そっくりじゃねえか、お前さんと」

アヌビス「は、はは…」

エリック「だけどよ、自惚れんじゃねえぞ」

エリック「おまえの親父さんはな、一度も嘘なんかつかなかった」

アヌビス「…」

ナオヤ「先出とくぞー」


サヤ「きつい事言われてたね」

アヌビス「俺のせいだから、仕方ない」

ナオヤ「私情のため10回に8回は失敗…か」

まぁ、こいつの言うことの方が、ずっときついのだが。

アヌビス「何だよ」

ナオヤ「そんなことじゃー信頼なんてちっともされないだろーなー」

アヌビス「てめえ!親父を侮辱すんのか!?」

ナオヤ「あんたの親父を侮辱してるつもりなんてないけどー。

あんたへの忠告なんですけどー」

サヤ「あ、人をおちょくるモードに入った…」

パギー「何それ?」

サヤ「最低は性格が腐ってるからね。機嫌が悪いときは人の癪に触ることばっか言ってくるの。

気をつけたほうがいいわよ」

パギー「ふーん。でもなんで機嫌悪いんだろ」

ナオヤ「俺は仕事に私情なんて挟まないけどねー」

アヌビス「それはどういう事だ!?え?

依頼されたなら何が何でも八音の旋律をあの人に渡せ、といいたいのか!?」

ナオヤ「あの人は見せてくれるだけでいいって言ってたじゃーん。

深い意味は無いから、気にすんな」

アヌビス「こっ…このヤロー…」


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