3章-21 評
レック(こいつはいったい…)
気になった。
そう、例えばあのサヤとかいう女の子のように●●こそ正義と
悟りきっている少年少女はこのご時世そう珍しくはない。
だが、こいつの場合は別だ。
『正義ってのは多数派が自分たちに従わない少数派を殺すのを
正当化するために用いられる言葉』
こいつにとっての正義など、個人の主張と意味は何も変わらない。
いや、個人だけの正義の問題ですらない。
こいつは社会正義ですら、社会の主張としか認識していない。
いやそもそも、社会というものを認識しているかすら怪しい。
人間は普通、これこれこうしてはいけませんよという、他者との共通の約束の下に
行動原理を作り、行動基盤を作る。
だが、この最低には、それがない。
自分一人で勝手に行動原理を作り、行動基盤を作っている。
どうしてそんな人間が生まれてくるのか。
そんな存在が普通どうなるだろう?
考えるまでもない。
どこかでその自分勝手な行動原理が社会と反発し、
刑事罰かなにかを受けることになる。最悪、死刑になる。
そうやって排除されるはずだ。
もっといえば、欠陥品として、処分されるはずだ。
だが処分されていない。
なぜか。
例えるならば型検査の段階において、
するりと適合するように形を変えるスライムみたいな部品だ。
そんなもの、工場には存在しない。
だが、人間にはそれが存在する。
こいつのように。
そう、こんなやつは本来、どこかで切られて、死んでいてもおかしくない存在なのだ。
存在していること自体がキセキ。
いや、でも、そんなやつだって、まぁ、
少ないだろうが、いる。いることにはいる。
問題なのは、こんなやつが堂々と表を出歩いて、
堂々と自分の意見を言っているところだ。
さすがにそんなものは生まれてこの方、見たことがなかった。
もちろん。
意見を言う自由は誰にでもある。
しかし。
こいつの意見はかたっぱしから周りの意見という意見を
ぐちゃぐちゃに切り裂いてしまうだろう。
学校に通っていないというが、 ・・・・
そういう問題ではない。これでは通えないのだ。
直観的・本能的に理解せざるを得ない。
現に自分の意見は、一言で引き裂かれた。
この町のありとあらゆる意思は、一刹那で引き裂かれた。
だから畏れられ、あるいは迫害される。
その結果が、『最低』という呼び名なのだろう。
そして、こいつは、その結果さえも確信犯的に楽しんでいる…。
14歳ほどのガキが。
大人どころかありとあらゆるものを見通して、嗤っている。
恐ろしいと感じた。不思議だった。そして語弊を恐れず言えば、魅力的だった。
なんでこんな人間が存在しているのか。
どこをどう間違えたら、こうなってしまうのか。
パギー「どうしたの?」
レック「いや、なんでもない」




