3章-19 願い事
サヤ「でも、今回は心配したんだからね!」
ナオヤ「そうか、悪かったな。…じゃしょうがない。おまえら、何か頼みごとでもあったら一つだけ引き受けてやるぜ」
パギー「…じゃあ…
パパを、ゆるしてあげて」
…。
ナオヤ「………」
パギー「…おねがい」
ナオヤ「…何言ってんだよ。
…とっくに、あんなおっさんに対する恨みなんか、無くなってるぜ?」
パギー「…」
ナオヤ「なはははは」
サヤ「…」
私は知っている。
…ナオヤの、あの事件に対する執念を。
…母親を失った悲しみを。
…あの厄災に対する怒りを。
…それは、ナオヤと知り合ってから一年経っても、三年経っても、そしてついさっきも、ちっとも収まってはいなかった。
それほど、ナオヤにとっては重大なことなのだ。
…それなのに…
サヤ「…強いなあ、ナオヤって」
ナオヤ「ん?俺は…そんなにケンカ上手じゃないぞ?」
サヤ「…いや、こっちの話」
アヌビス「…そうか。…じゃあ俺の分は大切にとっとかせてもらうぞ」
サヤ「…わたしも、大切にとっとくよ♪」
ナオヤ「今言えよこいつら。あんまり人に貸しを作るのは好きじゃないんだ」
レック「…その願いは、俺も使う権利があるか?」
アヌビス「…わっ!?びっくりした!」
ナオヤ「なんでおまえにあると思ったんだ」
レック「正直死人が出ないかとひやひやしたからな」
ナオヤ「…しゃあない、何でも言ってみろ。出来る範囲で叶えてやる」
レック「じゃあ、俺がお前らについていくことを許可してくれ」
ナオヤ「…は?」
レック「…どうだ?」
ナオヤ「…ま、そんなのなら、別にいいけどさ…
なんでついてくるんだ、気色の悪い」
レック「…なに、俺も旅に出ることにしたのさ。…それで旅は道連れってな。…それにお前らには、礼を言わなきゃならねえ」
サヤ「…え?」
レック「…こんな町のために、こんなにボロボロになって戦ってくれたんだからな」
ナオヤ「…いや、町のために戦ったんじゃないし。
…このドラムが欲しかっただけだし」
サヤ「…最低って、ほんと素直じゃないよね」
ナオヤ「何をいう。俺ほど素直な人間がどこにいるんだよ」
レック「…今度、旅の途中でおまえらがチンピラに襲われでもしたら、俺が護ってやるよ」
ナオヤ「そうですか…まあ護ってくれるんなら無理に断る筋もない。
頼むぞ。囮になってくれよ。俺たちは逃げるからな」
サヤ「…にしてもほんと、疲れた…」
アヌビス「…だな」
レック「…おいおい、道端でぶっ倒れるな」
パギー「…どうしよ」
レック「…しゃぁない、俺の家に泊まれ」




