3章-10 正義②-間違い
(わたしは、
何が正義で何が悪なのか、
考えることすらしてこなかった…)
すでに決められていた正義にたた従うだけで。
『誰かにとって正義でも、それは別の誰かにとっては悪だ』
パギーにとってその言葉は、形容しがたいほどのボディーブローだった。
考えすぎるのはいけない。
そう思うけど、答えが出ない問題があると、苦しくなる。
人間なんてみんな正しいことと悪いことを半々ぐらいの割合でやっていて。
それでも正しく振る舞わないといけなくて。
『正義の定義なんて人それぞれだよ』
じゃあ、わたしにとって正義って、なんだ?
なんだ??
『正義なんてものは悪があって初めて成り立つ概念じゃないか』
じゃあなんで最低は、
あんなにまっすぐに核心だけをつくような言葉が言えるの?
胸が痛い。
サヤ「パギー、あんまり真剣に考えちゃだめだよ。
どうせ、答えなんてないんだから」
パギー「でも、でもわたしは考えたい。
自分なりの答えを出したい」
ナオヤ「勇者さんに聞いてみたらどうだ。
正義ってなんですか、って」
サヤ「こら!余計なこと言わない!」
そんなこといきなり聞かれても、困るだけじゃないか。
パギー「…わかんないよ。
何が正しくて何が間違ってるのか」
ナオヤ「言ってるだろ。
誰にだってその人なりの正義があるんだ。
答えがあるとすれば、それだよ」
パギー「…」
ナオヤ「それが相対する状態になったとき、
どうするのか。
それはそれぞれの場合場合で考えないといけないことだ」
それこそ、あの少年の復讐心と、勇者さんの場合のように。
パギー「わからないよ。
そんな何が正義で何が悪かも分からないような状況で
どうして、そんなまっすぐに言葉を紡げるのさ」
ナオヤ「おまえは自分が正しくないと何も言えないのか?」
パギー「……。言えないよ」
ナオヤ「そんなに間違いたくないんだね」
パギー「…」
ナオヤ「間違えたら、間違えましたごめんなさい。それでいいじゃん。
何をそんなにためらうの?わからない」
パギー「これしちゃダメ、これはいけない、
間違ったことしちゃいけない、そういう風に教えられてきたんだよ。だから…」
ナオヤ「他人のせいにしちゃいけません」
パギー「…ごめんなさい」
サヤ「…あのねぇ」
ナオヤ「わかんない。
思ったことを口にすることがそんなに難しいことなのか?」
サヤ「あんたは最低だからそれでいいのかもしれないけど、
他の人はそうもいかないの!
みんなのことを考えながら、
ここでこの言葉は言っていいのか、悪いのかなんて
考えながら、言葉をえらびながら生活してるの!」
ナオヤ「めんどうなことだね」
サヤ「他人事みたいに」
ナオヤ「あいにく、おれは最低だから、
そんなこと気にもしない」
サヤ「分かった?
相手にするだけ無駄よ、こんなやつ」
パギー「…」




