3章-05 独裁
おれたちは、さっきの受付の男の人を探して建物内部を少し探索し、一つの部屋を見つけた。
中には、また一人別の若い男がいた。
男「君たちか、
わざわざこの町のために、一緒に戦ってくれるっていうのは」
その男は頭を下げた。
ナオヤ「まぁ、不本意なんだけどな」
サヤ「こら、最低」
男「最低?」
ナオヤ「ああ、おれは最低って呼ばれてるんだ」
サヤ「わたし、サヤです」
パギー「はじめまして。パギーです」
アヌビス「アヌビスです」
男「そうだな。自己紹介がまだだった。
おれはレックだ。
この救済立案会において、次の最高司令官候補を務めている」
サヤ「本当ですか!?
こんな若いのに」
レック「この町の最高司令官になるのに、年齢は関係ない。
むしろ、若い方がなりやすい」
アヌビス「どういうこと?」
レック「分かった。説明しよう。
さっそくだが、
この町で発言権を得るためには、
強くないといけない。それがここのルールだ」
サヤ「へ?」
パギー「そうなの。
この町では年に一回格闘技の大会が行われて、
そこで勝利した人が最高司令官になるルールなの」
レック「そう、そして最高司令官が
各役職のポストを任命する権利を持つ」
ナオヤ「そんなんで、大丈夫なのか?」
レック「もちろん、大丈夫なはずがない。
現にここ6年、
ずっと一人の男による、一強独裁体制が続いているんだ」
パギー「それが、ディアスって人だよね」
レック「そうだ。
ディアスはとにかく強い。
しかし、政治的な面ではからっきし弱い。
結局、あいつに媚を売っている取り巻き達がのさばってしまっている」
アヌビス「そんな統治方法にしているからだろ。
強者がよき政治家であるなんて、そんなことが同時に成り立つはずがないじゃないか」
レック「しかしルールはルールだ。
強者のみが勝ち残るこの町で、
要求を聞き入れさせるには、ただ一つ!勝つしかない。
だから私は打倒ディアスを掲げ、ひたすらに修行をしている」
ナオヤ「なるほど。そいつさえ倒せばいいのか。
で、おれらはどうすればいい?
そいつに毒でも仕込めばいい?」
思ったより簡単そうだった。
レック「そんな卑怯な手段で勝って何の意味があるんだ!」
が、レックというその男が一括する。
サヤ「最低」
ナオヤ「お、おいおい。
ちょっと分からないなぁ。
手段を選んでる場合なのか?
被害者は一刻を争う状態なんだろう?」
レック「その被害者のため道を踏み外すのを良しとするのか?そんなものは違う。
正々堂々とした手段で手に入れた勝利でない限り
何の意味もない!」
ナオヤ「意味があるかないかは俺たちが決めることじゃない、
被害者が決めることだ。
そしてこの場合あんたのプライドは何の意味もなさない。違うか?」
サヤ「さ、最低」
パギー「みんながみんな最低みたいな考え方じゃないんだよ」
ナオヤ「だから言ってるんだよ。
そもそもバカ正直にやってるから負けてるんじゃないのか。
勝たなければ何の意味もないんじゃないのか」
まぁ、こんなところで言い争っていても仕方ないが…。
レック「考え方が合わないようだな」
ナオヤ「だいたいあの政府批判には何の意味がある?」
レック「ああすれば、新しい挑戦者がこちらに来てくれるだろうという運びだ」
ナオヤ「…そうですか」
ナオヤは半分呆れた感じで、そう呟いた。




