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世界で一番君が嫌い  作者: びゅー
プロローグ
7/120

序章⑦ 泥棒

ぱりん。

物が壊れる音がして、教会内に一瞬動揺のムードが流れる。

…何が起こったんだ?

皆横の者と顔を見合わせ、そして教会中に視線をめぐらす。

不審な箇所は、すぐに分かった。

窓ガラスが砕け、破片が飛び散ったのだ。

…なぜ?

…誰が、割った?

そんな疑問の答えもすぐに出た。

まだ若い…17ぐらいの男が一人その窓から教会の中に侵入してきたのだ。


{わ、なになに!?}

{うわー、不法侵入だ}


その男は…10代後半ぐらいの若い男で、服装はラフなTシャツと動きやすそうなズボン。

髪の毛は赤く染まっており、いかにも、成人式やらに乱入してくる血の気の多い若者そのものだった。

なんでわざわざこんな教会に、しかもこんな時間に侵入してきたのか。

…まあ、こんな村の教会、警備員などいないので、そういう意味では襲撃しやすいのだが、

はっきり言ってこんな教会にたいした金があるはずもない。

金目当ての強盗だとしたら、なぜあまりにも効率の悪いこんな場所を選ぶのかは謎だった。

「な、何者だ!」

神父様は驚きながらも、しかしさほど動揺せずに相手の名を問う。

…神父が動揺しないのも当然だ。

…この強盗(?)、堂々と人目に付く所から忍び込んできた上に、たいして強そうにも見えなかった。

おまけに、仲間も特にいない。一人なのだ。

その上、丸腰ときていた。

{…バカか、こいつは?}

「…俺は、怪盗アヌビス。この教会に八音の旋律の一つがあると聞き、それを頂きに参上した。とっとと渡してもらおうか。そうすれば手荒な真似はしない」

…その男は、自らを怪盗と名乗り、さらには自分の目的までぺらぺらと喋ってしまった。

…なんとも間抜けである。

しかし、本人はその事実に全く気づいていないようで、神父様もそんなことまで突っ込んでいる余裕はとてもないみたいだった。

「…八音の、旋律だと?」


挿絵(By みてみん)


…八音の旋律。

…それは、なんだったっけ?

記憶の中から懸命にその単語を掘り当てる。

…あ、そうだ。

昔、誰かから聞いた覚えがある。

この世界に広く伝わる神話の中に出てくる、八つの楽器のことだ。

あんまり詳しくないので、はしょって説明するが、

その神話の中で、英雄たちが、とてつもなく大きな敵と対峙し、

力ではその敵を倒せないことに気付いてしまうシーンがある。

そこで英雄たちは、八つの楽器を八人で奏でることによって悪を封じ込めるのだ。

その時に用いられた楽器は八音の旋律という名前で、世界の各地に散らばっているという言い伝えが、今でも残っている。

そしていつしか人々の間で、八音の旋律は、八つ全て集めた者の願いをなんでも叶える物に変わってしまった。

それゆえ、たくさんの人たちが全てを集めようと試みたのだが、

全て失敗に終わったという。

簡潔に説明すると、だいたいそんな感じだ。

たぶん、そうだったと思う。うん。


{確かさあ、八音の旋律ってあの8つ全て集めると一つの巨大な力となって所持者の願いを一つだけ叶えるとか言う…}

…最も、いまだかつて一人として8つ全部集めた者はおらず、

本当に8個あるかすら疑わしいような代物なのだが。

{…八つの楽器のことだな。そんなものがこの村にあったのか?}

…そんなまさか。

…そんなのがこの村に本当にあるとしたら、とっくに村の者はみんな知っているはずだ。

そう、俺だって、俺の母親だって、知っているはずだ。

…それとも、大人の間での隠し事なのだろうか?

「そう、八音の旋律だ。とっとと出してくれたまえ。そうすれば手荒な真似はしない」

男は内ポケットからナイフを取り出し、神父めがけて突き出した。

「…そんなものは、ここにはないぞ?」

神父はとぼけた返事をする。

「とぼけるな。ここにあることは分かっているんだよ!もうネタはあがってるんだ!とっととはいたらどうだ!」

男の方も折れようとしない。

「ないといっとるだろうが!」

「嘘をつけ!」

「ない!」


…。

前で子供の喧嘩が行われていた。

お互いに一歩として譲ろうとしない。

{どうする?}

サヤがこっそり耳打ちをしてきた。

ここでの「どうする?」とは今のうちに逃げない?とかそんなつもりだと思う。

{いいじゃん、おもしろそうだ}

こんな泥試合、見逃すほうがもったいない。

「ないわけがないんだよ!どこまで隠し通すつもりだ!?本当にやるぞ!?」

「いくらあるある言おうがなあ、ないものはないんじゃアホんたら!」

いくら言っても聞かない相手に苛立っているのか、神父様もだんだん地が出てきている。

「…こうなりゃ力ずくではかせるしかねえ様だな…」

くだらない言い合いを終わらせるべく、ついに男は実力行使に出ようとした。

「ま、待て。聖職者たる私は人を殴ることができない。と言うわけで誰か助けてくれ!

うん、今日遅れてきた最低、おまえだ」

…え。

…いきなり俺の名前が挙がった。

「は?やだよ」

当然のことながら拒否する。

おれを巻き込むな。

…。

応答なし。

「…いかなきゃ、最低」

横からサヤまでもが俺に人助けを促す。

…楽しんでるな、こいつ。

「…ふざけんな、バカバカしい。

なんでおれが人助けなどせにゃならんのだ」

…こんな物で折れるような俺ではない。

「空気を読め」

神父がおれの嫌いな一言をつぶやく。

サヤ「…そうだ、空気を読め」

野次馬「空気読め!空気読め!」

…。

なんとギャラリーどもまで騒ぎ立て始めた。

自分たちに周ってこないようにしているのか、それともただの暇つぶしか。

ナオヤ「…な、なにこのまるで俺がいかないといけないみたいな雰囲気!?」

なんで、俺が集中砲火されているのだ。

まあ確かにもともと嫌われているというのはあるだろうが、

それにしてもこれはないだろう。

サヤ「見苦しいぞ最低!諦めて行くんだな」

サヤは半笑いでそう言った。

サヤめ…少々憎しみがこみ上げてきた。

盗賊「…あの~、なんでもいいんで早くしてくれませんか?」

…。

なんでもいいならとっとと帰れ。

「…おぼえてろ」

…結局折れてしまった。


「…で、こんなガキンチョが俺様に喧嘩を売ろうってか」

ドロボウさんはいかにもバカにしているかのようなセリフを吐いた。

「…成り行きだからな。責任は問わないぞ。

あと、ガキンチョじゃない。

おれは最低だ。そこのところははっきりさせてもらう」

「…は?

最低?」

どろぼうさんが不思議な目をする。

神父「そうだ。このガキは最低だ」

とてもしんぷさまとはおぼえないせりふをはくひとだなぁとおもう。

でもべつにいいかえしたりしない。じじつだもの。

「そう、最低だ。

おれのことを呼ぶときはそう呼べ」

後ろからブーイングが起こる。

負けろ、最低!

死ね、最低!

こいつらは自分たちで選んでおいて、そんな応援をするのだから理不尽だ。

「どうだ、おれの嫌われっぷりがわかったか」

前でドロボウさんは不思議な表情を浮かべている。

そりゃそうだろう。

なんでみんなの代表として選ばれたおれが、みんなから集中砲火されないといけないのか。

そもそもこの場でアウエーのはずのドロボウさんが、なぜ応援されているのか。

つきつめるとおれが最低でみんながおれのことを嫌いという、

その事実のみなのだが、

そんな事情、初めてここに来たこのドロボウにわかるわけもない。

「…。

まあいい、おれは相手が子供だからって容赦はしないぞ」


挿絵(By みてみん)


…。

…。


数分後

ナオヤ「…ふぅ…」

アヌビス「…」

真正面から飛び掛ってくるだけだったから、ちょっと動いただけで簡単によけられた。

その上、こちらが何もせずとも勝手にやって来てくれるので、数分もすれば相手はへとへとになっていた。

サヤ「最低、大丈夫?」

…今更、大丈夫も糞もないだろう。

ナオヤ「コイツめちゃくちゃに弱いぞ」

…正直、あまりにも情けない相手でよかった。

こっちもそれなりのダメージを食らうかと踏んでいたが、全くの気鬱に終わった。

アヌビスと名乗ったドロボウを縛り上げて、終了。

アヌビス「違う、お前が強すぎるだけだ!お前、一体…」

自分の弱さを認めたくないらしく、泥棒は必死に主張をする。

…が、無視しておく。

神父「ありがとう、最低くん」

神父様がありがたいお礼の言葉をくださった。

さっきの態度とはえらい違いである。

ちなみに一応神父様だから名前で呼ばないの?といった突っ込みはオレには野暮だ。

…にしても。

お礼の言葉。お礼の言葉。お礼の言葉。

そんなものは、いらん。

ナオヤ「…言葉はいりません。是非とも形あるものでお願いします」

神父「最低にはいずれ神のご加護があるでしょう」

スルーされる。

ナオヤ「そんな加護なんて漠然としたものはいりません。

てめえがお払いになってくださったらどうでしょうかと思うのですが」

神父「さて、邪魔が入りましたがお祈りを続けようかと…」

…無視される。

…はなから、こいつらに報酬なんて期待はしていないが。

…と、そこに

???「はいはい、お取り込み中申し訳ないですねえ」

入り口からまたも知らない二人組が入ってきた。



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