3章-04 公害
中に入る。救済立案会本部、受付に立っている男と話す。
ナオヤ「失礼します。鳳凰のドラムを見せていただきたいのですけど」
男「ならばあなたも是非、我ら『救済立案会』に入会ください!さあ!さあ!」
サヤ「???」
ナオヤ「…分かりました」
アヌビス{お、おいおい、そんな簡単に決めちゃっていいのか?}
ナオヤ{どうせこうでもしないと…入れないんだろ}
男「我々救済立案会は、社会的に貧しい弱者層、特に病気などで反論の弁を出すことも出来ない被害者層の救済をするべく結成された組織なのです。
実は1年前、この国の国営工場で公害病が発生しました。
工場側は、商品を生産した際に出るベトロシナミンという有毒物質の処分に困り、こっそり工業排水に混ぜて流していたのです。
有識者の見解によりこの事実は立証されました。
でもこの町はちっとも謝罪をしようとはしないのです!」
ナオヤ「はぁ」
男「被害者の方の一人を連れてきます。少々お待ちください」
少し間を開け、別の男が入って来る。
「…はじめまして、エゼルという者です」
そのエゼルという男の外見は、それはもう酷いものだった。
左腕は腐っていて、右足には包帯を巻いており、顔の左半分が焼け落ちている。
パギー「…」
サヤ「ひ、ひどい…」
アヌビス「…なんてこった…」
男「…この事件の重大さを認識していただけたでしょうか。
これはわが町の信頼にも関わる重大な問題なのです。
是非、是非共に我々と戦ってください。そして共に勝利を手にしましょう」
ナオヤ「…おれはそもそもこの町の人間じゃない。
…だけど、条件次第なら、手を貸してあげないこともない」
男「…条件とは…?」
ナオヤ「お願いします。
鳳凰のドラム、譲ってください!」
ナオヤはそう言って、頭を下げた。
男「…ど、ドラム?」
ナオヤ「大切なものなんです。お願いします!」
男「…わかりました、いいでしょう」
ナオヤ「ほ、ほんとか!?」
男「ただし、鳳凰のドラムを手に入れるためには、
目的を果たさないといけません」
アヌビス「目的?」
男「ええ。
鳳凰のドラムを管理しているのはこの町の最高司令官です。
したがって我々の関係者が最高司令官になることが必要になります。
そういう意味で、私たちとあなた方の利害は一致したことになる」
ナオヤ「そうなの!?
そんな気の遠くなりそうな話に付き合わなきゃいけないのか…」
おれたちは、会議室に案内された。
そこにはたくさんの人がいて、皆思い思いに熱い議論を交し合っているようだった。
男「とりあえず、空いているテーブルにお座りください」
舞台の隅の方のテーブルに陣取っておれたちはとりあえず成り行きを見守ることにした。
サヤ「エゼルさん…あれは…ひどいね」
アヌビス「…全くだ」
ナオヤ「…しかし、町に責任ねえ…そりゃあ並大抵のことじゃねえぞ…
さて、どうするか…」
しょせんは一市民、しかもこの町の住人ではないのでもっと発言力のない俺たち。
何が出来るというのだろう。
ナオヤ「とにかく、だ。こうしていても始まらない。
ちょっと上の人たちと相談してみるか」




