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世界で一番君が嫌い  作者: びゅー
2章 学問
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2章-08 あーげないっ!

アヌビス「…え?」

サヤ「…どうしてですか?」

ルーギー「正確に言うと、この楽器を再び世に返すことを、私はしたくない」

パギー「おとうさん」

ルーギー「…パギー、ちょっと黙ってなさい。

なぜなら、静寂のフルートは、常に人と人との争いと共に存在した楽器、だからです」

サヤ「…どういう意味?」


1650年前、このフルートをA国の兵士の一人が偶然戦場となっていたジャングルの奥地で発見する。当時兵士が発見した物は国宝として宮殿内に納められるしきたりとなっていた。そこはA国の属国であるB国の領地であり、B国は所有権が自分たちにあると主張、A国は発見者の所属国が宝を所持するのは当然と主張、お互いに譲らなかった。それに腹を立てたB国の一部の兵たちが反乱を起こし、A国はB国を制圧するも、その隙に戦争の相手国であったC国に攻め滅ぼされ、C国の独裁政治は以後170年にわたり続く。

その後世の中が変わり、C国崩壊後に新たに南部から侵入してきたD国がこの地を統治した。フルートはD国の博物館に飾られることになる。…がD国の国宝を狙って無法国家だったE国の盗賊団が博物館を襲撃、博物館は炎上、E国とD国の関係が悪化し、世界を巻き込む大戦争に発展。

戦争が終わった後、フルートは没収されるが、それをどこの国が持つかということでまた大論争になり、ついには当時の2大国だったF国とG国が対立…


ナオヤ「あーもう、長い!結論を述べろ、とっとと!」

その声に押され、パギーがびくっ、とする。

ルーギー「しかし、経緯は話さなきゃ、分からんのです」

ナオヤ「経緯なんて話されたってどーせわからん!」

サヤ「そんな言い方ないでしょ。

だから最低って呼ばれるのよ」

ナオヤ「かいつまんでくれよ。

あんたぐらいかしこい人ならそれぐらいできるだろ?」

サヤ「…そのフルートって、そんなに価値のあるものだったのですか?」

偉そうな奴は無視して、話を続ける。

ルーギー「…何しろ言い伝えでは8つ集まると全ての願いが叶うという言い伝えがあったから…誰もがこのフルートを欲しがっていました」

アヌビス「…そんなフルートをなぜ、どこで手に入れたんですか?」

ルーギー「…このフルートは現在うちの国が入手し、研究のために大学に預けられていました。それを当時の大学長だった私が持ち出した、というわけです」

サヤ「…なぜです?」

ルーギー「…このフルートは、いつの時代も権力者達の争いの火種となっていたのです。

…このフルートのせいで幾多の騒乱がおこり、何千万もの罪も亡き人がその命を失っているのです。

…これからもこんなことが起こる可能性は容易に想像がつきました。あるいはそれで、我々の国が滅びてしまう可能性もあるかもしれない、と、そう危惧した私は、フルートを誰も知らない、この森の奥深くに、隠しました。そして私が死ねば、フルートは永遠に闇に葬られる、とそういうわけです。これが私がわざわざこんな場所に家を構えている理由の一つです。他にも色々ありますけどね」

サヤ「…そんなことして怒られないんですか」

ルーギー「私がこのフルートを持っていることは、

君たちと、ノルンちゃんそして我々しか知らないんですよ」

ルーギー「そしてそれはことさら今話すことではない。この宝は結局の所人類にとって争いの元でしかなかった、ということです」

サヤ「…でも、それが今必要なんです、実際に世界は危機に陥っているんでしょう?

そしてそれを乗り切るための唯一の方法は…その八音の旋律なんです」

ルーギー「いいえ」

サヤ「…え?」

ルーギー「唯一の手段ではありません。私がこのウイルスに対抗する方法を編み出します」

サヤ「…できるんですか…?」

ルーギー「…はい。必ず出来ます」

サヤ「…そうなんですか?」

ルーギー「…はい」

サヤ「それなら、いいんだけど…」

アヌビス「…しかし…成功するかどうかも分からないのに…」

ルーギー「…それはそちらも同じでしょう」

アヌビス「…まあ、そうですけど…」

ルーギー「…科学というものは、本来、自然との戦いなのです。

自然の作った制約のなかで、いかにして早く移動するか。

いかにして宇宙へ行くか。

いかにしてエネルギーを得るか。

…そして、我々の祖先は、いつの時代も、それに勝利してきた。

自然と戦うべきは科学です。…昔も、そして今も」

サヤ「…」

ルーギー「…それに、あの楽器は争いをなくすために私が森の中、誰も知らないところへ隠しました。

…どんなことがあろうと、あれを再び世の中へ戻してはならないのです。

あれが世に出たらあるいはもしそれによって一時的な危機が救われたとしても、

その魔力によっていずれ国が滅びてしまうかもしれない。

お分かりいただけましたか」

ナオヤ「…さっぱり分からん」

サヤ「さ、最低…」

ナオヤ「戦争だのなんだのの火種になったと言ったけど、それいつの時代のことなんだよ?

1000何年も昔のこと引っ張り出してきて、何の参考になるんだよ」

ナオヤ「それに、フルートがなかったら、また別の物が争いの火種になるだけだろ」

ルーギー「…」

パギーはきょとんとしている。

ナオヤ「…なんだか今ひとつ繋がらないよ。中途半端。

このフルートがあったら戦争が起こるかもしれない。だから隠そう…ねえ。

フルート隠したぐらいで何が変わるんだ?

肝心なのは国の方針とか、人間の気持ちとか、そういうのじゃねえの?

どうもそれだけの理由であんたがフルートを隠すのには納得がいかない」

ルーギー「…」

ナオヤ「…ま、無理って言うんなら、無理には取っていきませんけど…」

空気が重苦しくなっていた、そんな中へ、

「あらあらあなた方3人がノルンちゃんのおともだち?うーん想像していたよりずっとかわいいわーあーもう食べちゃいたいぐらいあごめんなさいね私一人で突っ走っちゃって今すぐご馳走用意しますからねケセラあなたも手伝って頂戴」

いきなり場の空気を180度変える人が現れた。

ケセラ「承知しました、奥様」

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