2章-03 マシンガントーク
サヤ「…はぁ…でも、なんか落ち着いた」
ナオヤ「…何が?」
サヤ「さっきの手紙読んだときは、どうしよう、もうだめだって思ってたけどもう今は嘘みたいにそんな気持ちちっともないの。今、歩くだけで必死で」
ナオヤ「…そう」
サヤ「件名 お疲れさん
着いたみたいね~。おめでと。
連絡は入れといたから、遠慮なく入ってくつろいじゃいなさい¥(^_^)¥」
ナオヤ「…じゃ、お邪魔させていただくとするか」
こんな家でも、玄関にチャイムは付いていた。
ナオヤ「…ピンポンダッシュでもするか」
アヌビス「…あのなあ」
サヤ「…もう死にそう…早く入りたいよぉ…」
ナオヤ「…ちっ」
ぴんぽーん。
女性の声「はじめましてー話はノルンちゃんから聞かせてもらっているわーお待ちしてましたーもううちこんな森の中でしょ?だからお客さんなんてめったにこないのよだからこうしてずっと玄関のチャイムに張り付いて待ってましたーさあいらっしゃいご丁重におもてなししてあげるからねコーヒーがいいそれとも紅茶?砂糖は入れるほう?ミルクは?シロップは?」
ナオヤ「…あ、あの…」
あまりの一方的な喋りのスピードに、圧倒されてしまった。
女性の声「もしもし?カフィー、オア、ティー?ウイズ、シュガー?オアミルク?オアシロップ?」
何故か英語で聞き返された。
ナオヤ「コーヒー、ウイズノーシュガー、プリーズ」
どこの世界に玄関でコーヒーの注文を受け付ける民家があるのだろうか。
ナオヤ「…お前らは?」
サヤ「…わたし、紅茶。砂糖はちょっと多めに」
アヌビス「…俺はコーラで」
ナオヤ「…コーヒーか紅茶と聞かれているんだが…。
コーラを選ぶとは、さすがだな。お前大物になるぜ」
皮肉を言ってみたが、反応はない。
女性「コーラありますよーそれではご注文の確認をさせていただきますねコーヒーブラックが一つ紅茶砂糖多目が一つコーラが一つ以上でよろしいでしょうか?」
今更だが、なんとも早口な人だった。
聞き取った母音、子音を意味のある文字列に変える作業に頭がついていかない。
ナオヤ「は、はい」
女性「ありがとうございまーすそうだ玄関の鍵開いてるから勝手に入っていいわよそれで勝手に中のソファーのどれにでも好きに腰掛けてそれでね私達の子供パギーっていうんだけどちょっと遊んでやってくれない?人がやってくるって聞いて興味津々みたいだからさお願いしちゃうぞーじゃあ私おとうさん呼んでくるんでねーばいばーい」
ぷーっ。ぷーっ。
ナオヤ「…なんだ、この人」
どこまでテンションが高い人なのだろう。
別の声「お入りください」
声のしたほうを見ると、いつのまにかドアが開いていてそこにメイドさんと思しき人物が立っていた。
ナオヤ「あ、どうも…」
俺は、正直面食らっていた。
…どう見ても、さっきの女の人はこんな山の奥にひっそり住んでいるタイプの女性には思えなかった。




