2章-02 森
サヤは一人メールをうっている。
ナオヤ「…そもそも、アヌビス、お前がカニクリームに来たのはなぜだ?」
アヌビス「あこに八音の旋律の一つがあるって言う情報を得たんだ」
ナオヤ「…誰から?」
アヌビス「伝言板だ」
ナオヤ「…はぁ?」
アヌビス「俺たちの街の隅には伝言板があって、そこで匿名で情報交換をしているんだ。そこで俺が八音の旋律がどこにあるか知らない?って書いたら、カニクリーム村の教会と書いてあった」
ナオヤ「……………………お前、さてはアホか?」
アヌビス「…何だとぉ!」
ナオヤ「匿名の人間の言うことなんか本気にすんじゃねえ」
アヌビス「…いや、他に手がかりがなかったから、ダメもとで行ってみたんだ」
ナオヤ「…はぁ…ますます胡散臭くなった」
ナオヤ「…で、そのノルンの知り合いの人についての情報は得られたか?」
サヤ「…うん、一応」
ナオヤ「話してくれ」
サヤ「名前はパギー。女の子で、私達より一つ下。お父さんが科学者。なんでも静かな所へ行きたいって事で森の奥に屋敷を建てて、そこで妻と娘とともに暮らしているんだって。その人が学者時代に手に入れたのが静寂のフルートっていう、八音の旋律の一つだって」
ナオヤ「…ふーん。次」
サヤ「ノルンがいろんなハイテクマシン持ってたでしょ?あれはノルンとパギーのお父さんとの共同開発なんだって。なんでもノルンが昔「森探索」みたいなことをして、それで森の中の屋敷を発見して、それ以来知り合っちゃったんだってさ」
ナオヤ「…ほうー。科学者。科学者ねえ。
で、そこまでの道は分かるのか?」
サヤ「ノルンはお母さんに捕まっちゃって出られないんだってさ。だからメールで道順は教えるって」
アヌビス「…しかし、こんな森の奥に屋敷を構えるって、どんな人なんだよ」
サヤ「そんなことは書いてなかったけどな…」
アヌビス「じゃあ、パギーって子は、どんな子なんだ?」
サヤ「おもしろい子、だって」
アヌビス「…おもしろい子、ね」
で、バイオレットの森に来た。
ナオヤ「うわ…広いな。思わず帰りたくなるぜ」
サヤ「…不気味だよ…」
ナオヤ「怖いなら、帰ってもいいぞ」
サヤ「…やだよ」
アヌビス「しっかしほんとに道分かるのか?」
サヤ「なんでもパギーのお父さんが、外への道を忘れないように印をつけてるんだって」
アヌビス「…印、ねえ」
ナオヤ「まずは何を手がかりにすればいいんだ?」
サヤ「まっすぐ進んだら、1と言う字の彫られた大木が見つかる、だって」
ナオヤ「…よし、行くか」
なるほど。大きな木を曲がる場所の目印にしているのだ。数字から数字までのルートは全部直線で、これなら確かに迷う心配もないだろう。…が。
アヌビス「…次、何番目だ…?」
サヤ「右に曲がって少し歩いたところに、119がある、って」
ナオヤ「…一体、いくらあるんだよ!」
サヤ「…全部で370、だって」
まだ全体の1/3にも達していなかった。
ナオヤ「あほちゃうか、もっと近くに作れよ…」
どれだけ愚痴が出たか分からない。
アヌビス「はーっ、はーっ、しんど」
サヤ「…もうダメ…歩けない」
ナオヤ「…ここ、か」
目の前には、これまたとんでもなくでかいお屋敷が広がっていた。
辺りの木にも負けないぐらいの高さ。
あたり一体のどんな木にも負けない大きさ。
…どんな金持ちなんだよ。




