1章-22 裁判②-私刑
「動くな!」
サヤ「あ、あれは…」
ナオヤ「あいつかっ!」
タツの姿が、そこにあった。
タツ「いいか、誰一人動くな、動くとこの爆弾を爆発させる」
ロバート「…馬鹿な真似はよせ」
タツ「ぼくは本気だ!今すぐそいつを引き渡せ!
そいつは…ぼくが…この手で直接殺す!」
タツ「ぼくは…ぼくは…ずっと…ずっとこの日を待っていた…
こいつを、こいつを自らの手で直接殺す日をな」
タツは淡々と語る。
タツ「…この日のためだけに生きてきた。
ぼくは死んだって、こいつを殺せればそれで構わない」
ロバート「……」
村人「ひええええ、わしらまで巻き込まんでくれ!」
タツ「じゃあ動くな!この男を引き渡せば手荒な真似はしない!」
サヤ「ま、まずいよ、あの子頭に血が上っちゃってるよ」
ナオヤ「…やっぱり、おれのせいかなあ」
アヌビス「どーするんだ、この後始末」
ナオヤ「どーしようかな…」
ノルン「とりあえず様子を見ましょ」
ナオヤ「…だな」
ロバート「…よせ、やめろ。
どうして、こんなことをするんだ」
タツ「…ぼくはこいつに両親を殺された。
だからぼくはぼくの手でこいつを殺すと誓った。
それだけだ」
ロバート「…落ち着け、こんな真似は今すぐやめろ」
タツ「…こいつの身柄を引き渡せと言っているんだ!聞こえないのか!?」
村人「やめろ!そんなことをしたって何にもならないぞ!」
村人「お願いだ、引き取ってくれ!」
村人「こちらの話に耳を傾けてくれ!君がこいつを殺す必要なんてひとつもないだろう!」
ナオヤ「…」
さっきまで殺せ殺せ言っていたくせに。
掌を返したようにやめろの一辺倒。
ちょっと、イラっとした。
ロバート「復讐は、…復讐しか生まん。
こんなバカな真似はやめろ。…死んだ君の両親がそんなことを望むとはとても思えん」
タツ「うるせえ。人の両親の気持ちまで勝手に決めるな。渡せっつってんだろ!」
ロバート「…たとえ何があろうと、人が人を殺すということは、
重い罪だし、それで君は重い罰を背負うことになる。
…それで、君は本当にいいのか」
村人「そうよ!もうやめて!」
村人「おちつけ!」
タツ「…罰を受ける覚悟はしてる。だから早く引き渡せ。ほんとに爆発させるぞ!」
村人「無駄なことはやめるんだ!そんなことをして何になる!?」
ロバート「……わかった。
君が罪を犯す必要はない。
私が死刑を執行する」
タツ「ぼくがやるって言ってるのが分からないのか?
早くそこをどけろ!!」
ナオヤ「…はあ。なんだこれは」
サヤ「…どうするの」
ナオヤ「…不愉快だ。ひじょーに不愉快だ。
よってぶち壊してくる。
ノルン…」
ノルン「…ん?」
ナオヤ「…ちょっと貸してもらいたいものがある」




