1章-21 裁判①
そして、いよいよ判決の日が来た。
ロバート「青龍よ!
汝に問う、お前は何をもくろんで支配統治や幾多の残虐な行為を行った!?」
青龍「…正義の国の勇者さんとやらは立派だねえ。
俺は何ももくろんでねえ。
本能だよ。はははははははははは」
ロバート「…。本能、とは」
青龍「生物の本能ってのは本来邪悪な物だ。
他を殺してでも生き残るのがこの自然の摂理だとは思わないか。
それをなぜ抑える必要があると言うんだ」
ロバート「それは動物の理屈だ。
我々はそうではない。人間だ」
青龍「はははははははははは。
笑いが止まらない。
人間だって動物じゃないか!!
他より上に立つことを求め!
他を蹴落とし、見下すことでしか
自らの価値を肯定できない
そんな見苦しい生き物じゃないか!!」
ロバート「もう少しマシな言い訳をしたらどうだ」
「言い訳というなら反論してみろよ。
勉強、スポーツ、選挙。この世に存在すること何もかも。
すべて他者に勝って弱者を踏みにじって生き残る生存競争じゃないか。
おれの統治もそれの延長線にすぎないんだよ」
ロバート「論理もむちゃくちゃなうえ、まるで反省の色もなしか」
青龍「笑わせる。何を反省しないといけないのか。
だいたいお前はどうなんだ?おれとは違うというのか?
他を蹴落とすことなどしていないというのか!?そんな特権階級のくせに!?」
ロバート「ふう…。私はおまえとは違う。
明確な信念の下に皆の前に立っている」
青龍「明確な信念?
笑わせる。正義とやらも同じじゃないか。
『より正義感があるから』と他人と差をつけるためのレッテルにすぎん!」
青龍「お前のやっていることと俺のやってきたことの何が違う?
ともに自分の名誉のために下の者を踏みにじって切り捨てていっただけのことだ。
そのお前がどうして俺のやっていることを責めれると言うのだ!答えてみろ!」
ロバート「ふん。私は貴様のように名誉など求めてはいない。
私はまさに、おまえのような悪を裁くために勇者になったのだ」
青龍「建前論にすぎん。
一筋の人間しかなれない勇者になれなくて
飯を食いっぱぐれた人間が何人いると思うんだ!」
「なんでお前らの虐殺は正当化され俺の虐殺は裁かれるんだ!
答えれるものなら答えてみろ!」
ロバート「お前は他人に被害を負わせている。私はそうではない」
青龍「誰にも被害を負わせない生物など存在するか!
いるなら連れてきてみろ、ほらここに!」
サヤ{むかつくなぁ…}
ナオヤ「もともと噛み合わない話し合いなんかいくらやったって無駄なんだよ…。
とっとと判決出して早く終わらせてくれ」
ロバート「分かった、聞く耳は持たんようだな。裁判を始める!
村の方、意見をどうぞ!」
ナオヤ{村の方?}
ノルン{村の人の多数決で判決を決めるんだってさ}
村人「死刑!」
村人「死刑!」
村人「死刑!死刑!」
村人「殺しちまえ、こんなやつ!」
村人「俺も死刑に一票!」
村人「いや、たとえ悪人といえども命まで奪ってしまうのは可哀相だ。
そんな権利は誰にもない」
村人「ふざけるな!こいつのせいで殺されたタツの父親の無念はどうなるんだ!」
ロバート「死刑が多いようだな。
しかし、私はそれが正しいとは思わない」
村人「勇者様!?」
ロバート「私は彼に改心してもらうことを願っている。
…長い時間をかけて彼に正しい道を指し示したい」
ナオヤ「いや、無理だろ」
サヤ「最低は黙っといて」
ナオヤ「はい」
どれだけ長い時間をかけても、こいつらが分かりあえるようには思えない。
村人「…勇者さんがそういうなら…」
村人「…ふざけるな!殺せ、殺せ!」
ナオヤ{…ふあーあ。いつまでかかるんだろ。
なんでもいいから早く終われ}
そのときだった。
裁判台の上に、一人の少年が乗り込んできたのだった。




