1章-19 死刑
道中、俺たちはタツに再開した。
タツ「…」
ナオヤ「どうだ」
ノルン「ざっとこんなものよ」
後ろから、女の子が顔を出した。
アヌビス「君は誰?」
女の子「私、タツの妹のアカネといいます」
サヤ「あなた、妹がいたんだ」
アカネ「…ありがとう」
タツ「…ありがとう」
ノルン「お礼なんていいのよ、私はバイオリンを取り返しただけなんだから」
タツ「…これで…これで…ようやく、全て、動き出します」
ナオヤ「お前ががんばるのはこれからだぞ。
くじけるなよ」
ナオヤはタツの手をきつく握った。
タツ「…うん
…あの…ごめん…
あの時は…気がたってて…」
ナオヤ「覚えてない」
タツ「でも、ぼくは君を殴って…」
ナオヤ「殴られるのは慣れてる。
どうでもいいよ」
タツ「…」
タツは黙り込む。そして少しして口を開く。
タツ「…すまない。
でも、正直…まだ、悔しいんだ」
ナオヤ「…」
タツ「…あいつを自分の手で直接殺してやらないと、気が済まないんだ!」
アカネ「その気持ちわかるよ。
だって、捕まえて裁判するとか言ったって、どうせ殺さないんだよ!
キャットフードの裁判の判例なんか、
今まで死刑判決は1000刑以上あるけど、
実際に死刑が執行されたのは10にも満たないのよ」
ノルン「まぁ、正義の国だからね」
サヤ「…仕方ないよ。
事件とは直接関係ない人が死刑を執行するんだから」
アヌビス「…でも、分からないではないよな。おかしいよな、そんなこと」
タツ「でももう手の出しようがないんだよ!!
どうしたらいいんだよ!!教えてくれ!!」
ナオヤ「そんなに復讐したいなら復讐してきなさい」
アカネ「どうやって!?」
ナオヤ「そんなのは人に頼らず自分で考えなさい」
タツ「…」
ナオヤ「おれはどっちでも別にいいと思うし、どっちを選んでも責めないよ」
サヤ「そういうのを責任放棄って言うのよ」
ナオヤ「その通りだよこのやろう」
ノルン「女の子にやろうだなんて言うのは紳士じゃないな」
ナオヤ「む」
いきなり鋭く突っ込まれておれは返答に困る。
ナオヤ「…べ、べつにおれ紳士じゃないし、
そんなこと言われても、無意識だったわけだし、
その、なんだ、おれの知ったこっちゃねえよ…うん」
ノルン「ふふ」
そんな困ったような最低の表情を見て、ノルンは少し楽しそうに笑う。
警官「判決は明日です。どうです、あなたも見ていっては」
ナオヤ「興味ない」
ロバート「そんな事をいわずに」
ナオヤ「…あんたは…」
サヤ「勇者さん!?」
ロバート「君達の協力、感謝するよ、ありがとう」
ナオヤ「…どういたしまして」
ノルン「私は単にバイオリン取り返すのが目的です」
ロバート「いや、すごいよ君たちは。
君たちのおかげで青龍を捕まえることができたんだ。
表彰させてもらおうかと思うんだけど、どうかな?」
ノルン「いらないです」
ナオヤ「俺もいらない」
ロバート「そっけないね…」
サヤ{なんで素直に表彰されないのよ…}
ナオヤ{いや、普通にはずいし…}
ノルン{なんか違う気がするしね}
サヤ{…ふーん}
ロバート「とにかく、君たちも参考人として立ち会ってくれたまえ」
ナオヤ「…めんどくさい」




