1章-10 夢
夢を見た。
父親の夢だ。
それは、あの地獄のような災害が過ぎ去り、夜が明けてから最初の日。
避難所で、ぼくがお父さんと再会したときの記憶だった。
「おかあさん、おかあさん!!どこ?どこなの!?」
「…」
「おとうさん!おかあさんはどこ?どこなの!?」
「…」
「ねえ、どうしたの?なにかいってよ、おとうさん!」
「…」
「おとうさん!おとうさん!?」
あの日以来、おとうさんが、ぼくに向かって喋ることは、一度たりとてなかった。
お父さんの友達で、ぼくの仕事場の親方の話によると、
お父さんは、お母さんを助けにも行かず、自分ひとりのうのうとあの火の中から逃げ出したそうだ。
その日から、ぼくはお父さんが、大大大大大嫌いになった
殺してやりたいとさえ思った
それほど憎かった
ただひたすら憎かった
こんなやつと 血が繋がっているなんて
…考えただけで 吐き気がする
ナオヤ「………!!………」
真夜中だというのに、飛び起きてしまった。
他のみんなは寝ていて、なんだか居心地が悪くなる。
ナオヤ{…くそ…嫌な夢だ…}
なんで、また。
…。
もっとも、こんなこと、今まで数え切れないぐらいあった。
今更これしきのことを気にしてもいられない。
しばらくぼんやりしているうちに、意識は闇へ落ちていった。
今度は、何の夢を見たか、思い出せなかった。




